2024年7月

令和5年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」から

 

厚生労働省が5月31日、令和5年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)の取りまとめを公表しました。

 

◆全体の約4割が建設業と製造業で発生

令和5年の職場での熱中症による死傷者(死亡・休業4日以上)は、1,106人(前年比279人・34%増)であり、全体の約4割が建設業と製造業で発生していました。死亡者数は31人(前年比1人・3.3%増)で、業種別では、建設業で12人と最多になりました。

 

◆熱中症の死傷者数の約8割は7月または8月

2019 年以降の月別の熱中症の死傷者数をみると、7月または8月に約8割が発生していました。時間帯別にみると15時台が最も多く、次いで11時台が多くなっていました。このほか、日中の作業終了後に帰宅してから体調が悪化して病院へ搬送されるケースも見られました。

また、年齢別にみると、全体の約5割が50歳以上でした。

 

◆厚生労働省の対策キャンペーンと現場の対策

熱中症とは、高温多湿な環境下において、体内の水分と塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻したりするなどして発症する障害の総称です。

厚生労働省では、「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を5月1日から9月30日まで実施しています。

それぞれの現場では、①暑さ指数(WBGT)の把握とその値に応じた熱中症予防対策を適切に実施すること、②作業を管理する者および労働者に対してあらかじめ労働衛生教育を行うこと、③糖尿病、高血圧症など熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病を有する者に対して医師等の意見を踏まえた配慮を行うこと、について重点的に取り組むようにしましょう。

【厚生労働省「令和5年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)を公表します」】

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40473.html

 

中小企業の賃上げ率3.62%~日商調査より

 

日本商工会議所から、2024年4月時点の中小企業の賃上げ状況に関する調査が発表されました。ポイントは次のとおりです。

 

◆2024年度の賃上げ

・2024年度に「賃上げを実施予定」とする企業は74.3%と7割を超え、1月調査から13.0ポイント増。うち「防衛的な賃上げ」は59.1%と依然6割近く。

・従業員数20人以下の企業では、「賃上げを実施予定」は63.3%。うち「防衛的な賃上げ」は64.1%。規模の小さな事業所では賃上げの動きがやや鈍く、厳しい状況。

・「賃上げを実施予定」とする企業は、卸売業、製造業で8割超え。 最も低い医療・介護・看護業で5割強(52.5%)と全業種で半数以上が賃上げ。

・情報通信業、宿泊・飲食業、金融・保険・不動産業で「前向きな賃上げ」が5割超に達する一方、運輸業では「防衛的な賃上げ」が7割超(72.2%)と業種により差。

 

◆正社員の賃上げ

・正社員の賃上げは、【全体】賃上げ額(月給)9,662円、賃上げ率3.62%(加重平均)。【20人以下】賃上げ額(月給)8,801円、賃上げ率3.34%(加重平均)。

・業種別では、その他サービス業、小売業で4%台と高く、運輸業、医療・介護・看護業は2%台にとどまる。

 

◆パート・アルバイト等の賃上げ

・パート・アルバイト等の賃上げは、【全体】賃上げ額(時給)37.6円、賃上げ率3.43%(加重平均)。【20人以下】賃上げ額(時給)43.3円、賃上げ率3.88%(加重平均)。

・業種別では、医療・介護・看護業、運輸業で4%台後半と高い賃上げ率。

 

正社員の賃上げ率3.62%は高い数字であり、日本商工会議所は中小企業に賃上げの動きが広がっていると分析していますが、報道では大企業との差はなお大きいとの声もあります。

【日本商工会議所「中小企業の賃金改定に関する調査」の集計結果について】

https://www.jcci.or.jp/news/research/2024/0605110001.html


 

改正育児・介護休業法、改正次世代育成支援法が成立しました

 

男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにするため、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充、育児休業の取得状況の公表義務の対象拡大や次世代育成支援対策の推進・強化、介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等の措置を目的とした改正法が成立しました。

 

◆育児・介護休業法の改正ポイントと施行日

① 3歳以上、小学校入学前の子を養育する労働者に柔軟な働き方を実現するための措置等が事業主の義務になります。【施行日:公布後1年6か月以内の政令で定める日】

② 小学校入学前の子を養育する労働者は、請求すれば所定外労働の制限(残業免除)を受けることが可能となります。【施行日:令和7年4月1日】

③ 3歳に満たない子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主に努力義務化されます。【施行日:令和7年4月1日】

④ 子の看護休暇が見直されます。【施行日:令和7年4月1日】

⑤ 妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が事業主に義務づけられます。【施行日:公布後1年6か月以内の政令で定める日】

⑥ 育児休業取得状況の公表義務が従業員数300人超の企業に拡大されます。【施行日:令和7年4月1日】

⑦ 介護離職防止のための個別の周知・意向確認、 雇用環境整備等の措置が事業主の義務になります。【施行日:令和7年4月1日】

 

◆次世代育成支援対策推進法の改正ポイントと施行日

① 法律の有効期限が、令和17(2035)年3月31日までに延長されました。【施行日:公布の日(令和6年5月31日)

② 育児休業取得等に関する状況把握・数値目標設定が従業員数100人超の企業に義務付けられます。【施行日:令和7年4月1日】

詳細は今後政省令で定められますので、注視しておく必要があるでしょう。

【厚生労働省「育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法 改正ポイントのご案内】

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf

 

 

「令和5年 労働災害発生状況」~転倒、高齢者等の災害が増加

 

 

 

◆死亡者数は過去最少、休業4日以上の死傷者数は3年連続で増加

 

厚生労働省は令和5年の労働災害発生状況を公表しています。これによると、令和5年1月から12月までの新型コロナウイルス感染症へのり患によるものを除いた労働災害による死亡者数は755人(前年比19人減)と過去最少となり、休業4日以上の死傷者数は135,371人(前年比3,016人増)と3年連続で増加しています。

 

 

 

◆休業4日以上の死傷者数の事故の型別では「転倒」が最多

 

休業4日以上の死傷者数の事故の型別では、件数の多い順に「転倒」が36,058人(前年比763人・2.2%増)、腰痛等の「動作の反動・無理な動作」が22,053人(同1,174人・5.6%増)、「墜落・転落」が20,758人(同138人・0.7%増)となっています。

 

 

 

◆「第14次労働災害防止計画」と高齢者等の災害

 

労働災害を減少させるために重点的に取り組む事項を定めた中期計画である「第14次労働災害防止計画」(令和5年度~令和9年度)では、「転倒による平均休業見込日数を令和9年までに40日以下とする」、「増加が見込まれる60歳代以上の死傷年千人率を令和9年までに男女ともその増加に歯止めをかける」などの項目が挙げられていますが、このアウトカム指標に関する状況としては、転倒災害の死傷年千人率は0.628(対前年比0.009ポイント・1.5%増)、転倒による平均休業見込日数は48.5日(同1.0日・2.1%増)、60歳代以上の死傷年千人率は4.022(同0.061ポイント・1.5%増)と増加の状況がみられます。

 

 

 

◆今後必須となる高齢者の労働災害防止

 

「令和5年 高年齢労働者の労働災害発生状況」によれば、雇用者全体に占める60歳以上の高齢者の割合は18.7%、労働災害による休業4日以上の死傷者数に占める60歳以上の高齢者の割合は29.3%となっています。高齢者の事故の型別では、「墜落・転落」、「転倒による骨折等」が目立っています。企業としては、今後の高齢化の状況を踏まえて、転倒災害などの高齢者による事故への備えは必須となってくるでしょう。

 

【厚生労働省「令和5年の労働災害発生状況を公表」】

 

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40395.html