【「ブラック企業」に対する厚労省重点監督の結果】
厚生労働省では、昨年9月を「過重労働重点監督月間」と定め、いわゆる“ブラック企業”(若者の使い捨てが疑われる企業等)に対して「過重労働重点監督」が集中的に実施されましたが、その結果が昨年12月中旬に発表されました。
監督対象となった5,111事業場のうち、82%の事業場(4,189事業場)において、何らかの労働基準関係法令違反が見られ、是正勧告書が交付されたとのことです。
主な法違反の内容は、次の通りでした。
(1)違法な時間外労働があった:43.8%(2,241事業場)
(2)賃金不払残業があった:23.9%(1,221事業場)
(3)過重労働による健康障害防止措置が実施されていなかった:1.4%(71事業場)
なお、法違反の事例として、下記のものが挙げられています。
・長時間労働等により精神障害を発症したとする労災請求があった事業場で、その後も、月80時間を超える時間外労働が認められた。
・社員の7割に及ぶ係長職以上の者を管理監督者として取り扱い、割増賃金を支払っていなかった。
・月100時間を超える時間外労働が行われていたにもかかわらず、健康確保措置が講じられていなかった。
・無料電話相談を契機とする監督指導時に、三六協定で定めた上限時間を超え、月100時間を超える時間外労働が行われていた。
・労働時間が適正に把握できておらず、また、算入すべき手当を算入せずに割増賃金の単価を低く設定していた。
・賃金が、約1年にわたり支払われていなかったことについて指導したが、是正されなかった。
ブラック企業対策としては、今年度から求人票に「過去3年間の採用者数と離職者数」の記入欄が設けられるなども決定しており、企業の採用活動に影響が出るものと考えられます。
今後も、ますます企業における人事労務管理が重要性を増していくことは間違いないでしょう。
【企業の「退職給付制度」に関する最新調査結果】
昨年11月発表(厚生労働省)の「就労条件総合調査」は、常用労働者数30人以上の企業を対象に調査を行い、4,211社から有効回答を得てまとめられています。
同調査では、前回調査以来5年ぶりに退職金の支給状況に関する調査が行われましたが、それによれば、2008年当時は83.9%の企業が退職給付制度ありと回答していたところ、今回は75.5%まで減少しています。
制度の形態別にみると、2008年当時は31.9%あった「退職一時金・退職年金を併用」する企業が22.6%へと大きく減少し、「退職一時金制度のみ」とする企業が55.3%から65.8%と、大きく増えました。
支払準備形態については、退職一時金制度がある企業では「社内準備」とする企業が64.5%で最も多く、次いで「中小企業退職金共済制度(中退共)」が46.5%でした。
一方、退職年金制度がある企業では「厚生年金基金」(44.8%)が最も多く、確定拠出年金(企業型)の35.9%と確定給付企業年金の35.6%は僅差でしたが、今後は、厚生年金基金制度の見直しが進むにつれ、状況が変化する可能性があります。
勤続35年以上の定年退職者の退職給付額は、大卒者が2,156万円(前回比335万円減)、高卒者(管理・事務・技術職)が1,965万円(同273万円減)、高卒者(現業職)が1,484万円(同537万円減)で、いずれにおいても支給額が大きく減少しました。
一時は「確定拠出年金の6割が元本割れ」との報道もなされましたが、2013年9月時点にいて、株価上昇等により、98%の加入者が元本割れの状況を脱し、通算の運用利回りの平均は年率で3%台に回復しました。
2014年度の税制改正においては拠出限度額の引上げについて検討が進められていますが、税制上の優遇措置もあることから、今後、厚生年金基金制度の見直しにより、確定拠出年金へと移行するケースが増加する可能性もあります。
退職給付制度のある企業においては、メリット・デメリット双方に関する情報収集が必要となるでしょう。
【押さえておきたい「労働契約法改正」の最新動向】
昨年4月1日より改正労働契約法が施行され、いわゆる「無期転換ルール」が導入されました。
これにより、同一の使用者の下、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合に、労働者に「無期転換申込権」が発生することとなりましたが、パートタイマー等の有期契約労働者を無期雇用へと転換する動きもみられるなど、改正への対応が企業において進められていました。
ところが、昨年12月6日の参議院本会議で「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律案」が可決・成立し、すでに一部は施行されています。
この特例法は、大学の教員等で、5年を超えるようなプロジェクトに関わる有期契約労働者についても、5年経過時点で無期転換申込権が発生してしまうと、5年を超える前に契約を打ち切らざるを得ず、雇い続けることができないという現場からの声に対応して立案されたものです。
特例法により、一定の要件を満たす大学の教員等については、無期転換申込権にかかる年数要件が「10年」とされました。
現在、厚生労働省の労働政策審議会(労働条件分科会有期雇用特別部会)において、高度な専門職に就く高収入の有期労働契約者で一定の期間内に終了すると見込まれる事業(オリンピックの開催準備等)に従事する者等について、5年経過時点で無期転換申込権が発生しないこととする「有期雇用の特例」作りが検討されています。
同省では、この結果を今年3月上旬までに労働契約法の改正案としてまとめ、1月24日に召集される通常国会に提出する方針です。
特例の対象には高年齢者も含まれる見通しですので、企業にとってはさらなる就業規則等の見直しが必要となる可能性もあることから、今後も動向を注視する必要があるでしょう。
【「仕事への意識」に対する企業と若者の間にあるズレ】
日本生命保険相互会社が発表した、従業員数1,000人以上の企業などを対象とした「企業調査」と、全国の20代以上の社会人および就職が内定している大学4年生などを対象とした「若者調査」によると、仕事に対する意識において企業と若者の間にズレが生じていることがわかりました。
就職先の検討時に最重要視しているポイントについて聞いたところ、企業は「自分のやりたいことをできるか」と想像していたようですが、実際には若者は「業種」「勤務地」を重要視していました。
最近、「若者の使い捨てが疑われる企業等」(いわゆるブラック企業)への取組みが話題になっていますが、やはり若者の労働環境や早期退職率等に対しての関心が高まっており、チェック方法として、過半数が候補企業名と「ブラック企業」のキーワードで、インターネット検索をしているようです。
また、若者(社会人)の4割弱が、入社時と比較して仕事に対する意欲を低下させており、「給与水準」「人事制度」「退職金水準」については、期待外れだったとする割合が高かったようです。
現在の職場を退職しようと思った経験がある若者は6割強にも上り、その要因を「職場内の人間関係への不満」としていますが、企業は「仕事内容への不満」と想像しているようです。
さらに、退職しようと思った若者(社会人)の5割強は、退職について誰にも相談しておらず、企業が若者の退職リスクを把握できていない懸念があることもわかりました。
女性が管理職になるうえでの課題について聞いたところ、企業の回答は、「家庭に支障がない範囲で、仕事をしたいという意識の女性が多い」や「モデルとなる女性がいないため、管理職になることを不安に思う女性が多い」、「会社として、女性の育成や活用の方針が明確になっていない」が上位を占めましたが、若者(社会人)は、「長時間労働を前提とした働き方の見直しが十分に進んでいない」が最も多く、ここにも両者の認識に違いが見られました。