2017年4月

男女間、正規・非正規間の賃金格差が過去最小に!
◆女性の平均賃金が過去最高に

厚生労働省が発表した平成28年の「賃金構造基本統計調査」によると、フルタイムで働く女性の平均賃金は月額24万4,600円(前年比1.1%増)となり、過去最高を記録したそうです。一方、全体の平均賃金は30万4,000円、男性の平均賃金は33万5,200円で共に前年と横ばいでした。また、男性の賃金を100%とした場合に女性は73%となり、男女間賃金格差は過去最小を更新しています。これは20年前(平成9年)よりも約10%縮まったことになります。同省は、賃金格差の縮小は「管理職に占める女性の割合が過去最高の9.3%だったことにより、平均賃金を押し上げた」と分析しています。昨年から女性活躍推進法が施行され、今後、企業は女性の採用や管理職への登用を積極的に進め、その格差はさらに縮まっていくことが予想されます。

◆雇用形態間賃金格差も過去最小

雇用形態別に平均賃金を見ると、正社員は32万1,700円(前年比0.2%増)、非正規社員は21万1,800円(同3.3%増)でした。正社員を100%とした場合に非正規社員は65.8%となり、平成17年の調査開始以来賃金の格差は最小となりましが、これは人手不足などを背景とする女性の非正規社員の給与アップや最低賃金の上昇などにより格差が縮まったのが要因とされています。また、短時間労働者の1時間当たり賃金は、男女計1,075円(前年比1.5%増)、男性1,134円(同0.1%増)、女性1,054円(同2.1%増)となっており、いずれも過去最高となっています。

◆「同一労働同一賃金」で賃金はどう変わるか?

賃金の男女間の格差、正規・非正規間の格差は年々小さくなっています。その中でも男性の賃金の伸び止まりや女性の活躍推進が大きな問題となりそうです。また、現在、政府で議論されている「同一労働同一賃金」の実現に向けた非正規社員の処遇改善についての動向にも注目しておく必要があります。

申請受付が始まった「勤務間インターバル」導入助成金
◆最大50万円支給

2月15日より、中小企業事業主を対象とした「職場意識改善助成金(勤務間インターバル導入コース)」の申請受付がスタートしました。本助成金は、過重労働の防止および長時間労働の抑制に向け、勤務間インターバル(休息時間数を問わず就業規則等において終業から次の始業までの休息時間を確保することを定めているもの)の導入に取り組んだ際に、その実施に要した費用の一部(最大で50万円)を助成するものです。

◆支給対象事業主は?

支給対象事業主は次の通りです(その他、資本・出資額や労働者数に関する要件があります)。
(1)次のアからウのいずれかに該当する事業場を有する事業主であること
ア 勤務間インターバルを導入していない事業場
イ すでに休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下である事業場
ウ すでに休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場
(2)労働時間等の設定の改善を目的とした労働時間の上限設定に積極的に取り組む意欲があり、かつ成果が期待できる事業主であること

◆支給対象となる取組み

以下の取組みのうち、いずれか1つ以上を実施する必要があります(原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません)。
(1)労務管理担当者に対する研修
(2)労働者に対する研修、周知・啓発
(3)外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
(4)就業規則・労使協定等の作成・変更(時間外・休日労働に関する規定の整備など)
(5)労務管理用ソフトウェアの導入・更新
(6)労務管理用機器の導入・更新
(7)その他の勤務間インターバル導入のための機器等の導入・更新
なお、支給対象となる取組みは、「成果目標」として、事業実施計画において指定したすべての事業場において、休息時間数が「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」の勤務間インターバルを導入することを目指して実施することが求められています。

◆申請受付期限は?

都道府県労働局への申請受付は12月15日が締切日となっていますが、支給対象事業主数は国の予算額に制約されるため、それ以前に受付が締め切られる場合があります。

厚労省公表の「受動喫煙対策強化案」のポイント
◆違反した喫煙者・事業者に過料

厚生労働省が3月1日、東京五輪・パラリンピックに向けて、受動喫煙対策の新たな規制強化案を公表しました。飲食店は原則禁煙とし、例外として喫煙できるのは小規模なスナックやバーなどに限定するなどが骨子で、違反した喫煙者が行政指導に従わない場合には30万円以下、事業者が従わなかった場合には50万円以下の過料を科すとしています。同省は強化案を踏まえた健康増進法の改正案を今国会に提出する予定で、2019年秋に日本で開催されるラグビーワールドカップまでの施行を目指します。

◆「努力義務」から「義務化」へ

日本の受動喫煙対策はこれまで努力義務にとどまり、世界保健機関(WHO)からは「世界でも最低レベル」と厳しく批判されてきました。このため、新たな規制強化案では受動喫煙対策を義務化します。禁煙の範囲は、小中高校や医療機関は最も厳しい敷地内禁煙とし、官公庁や福祉施設などは建物内禁煙とします。運動施設も建物内禁煙としますが、コンサートが行われるなど興行目的でも利用される場合は喫煙室の設置を認めます。

◆小規模なバーなどは一定の条件下で例外に

飲食店は屋外のテラス席も含め禁煙としますが、喫煙室の設置は認めます。居酒屋や焼鳥屋などについても、家族連れや外国人観光客の利用を想定し、対策を徹底することとしました。一方、例外として小規模なバーやスナックなどでは、「受動喫煙が生じうる」との掲示や換気を条件に喫煙を認めます。面積が約30平方メートル以下の店が候補で、法案成立後に政令で定める予定です。なお、ホテルの客室や老人福祉施設の個室なども喫煙は可能です。

◆5年間の経過措置

また、今回の規制強化案では、既存の喫煙室については施行後5年間、排気装置などで一定の基準を満たせばそのまま使用を認める規定を盛り込みました。飲食店など喫煙室の設置が認められている施設だけでなく、医療機関や官公庁なども対象にしています。ただし、禁煙ではなく分煙を推進すべきだとの意見は根強く、調整は難航する可能性があります。

改正道路交通法が施行!再確認しておきたいポイント 
◆改正道路交通法の改正点

3月12日、改正道路交通法が施行されました。主な改正点は、(1)準中型運転免許の新設、(2)75歳以上の高齢運転対策推進(臨時適正検査制度の見直しと、臨時認知機能検査・臨時高齢者講習制度の新設)の2点です。今回は、多くの企業で注意が求められることになる、「準中型運転免許の新設」について、改めてチェックしておきたい点をご案内します。

◆「準中型免許」とは?

準中型免許は、満18歳以上から取得できる免許です。普通免許と中型免許の間に新設され、車両総重量7.5トン未満、最大積載量4.5トン未満までの自動車(いわゆる「2トントラック」まで)を運転することができます。準中型免許で運転できるトラックは、例えば宅配便やコンビニの配送、建設や土木などの資材運送など、利用の範囲が幅広いのが特徴です。特に運送業界は人手不足が深刻な状況ですが、準中型免許は18歳以上であればそれ以前の運転経験を問わずに取得することができますので、高校を卒業してすぐに就職しようとする人や、大学生・専門学校生のアルバイト等、準中型免許の取得により人材の活用の幅が広がることが期待できます。

◆事業場の留意点

一方で、普通免許で運転できる車両の範囲が狭くなる(車両総重量5トン未満だったものが、改正後は同3.5トン未満となる)ことに注意が必要です。平成19年に「中型免許」の導入により運転免許の区分が変更された際には、運転免許証とトラックの自動車検査証の照合を怠った結果、普通免許では運転できないトラックを運転して無資格・無免許運転で検挙され、行政処分を受けるケースが多発しました。違反自体は単なる「ミス」「勘違い」が原因であったとしても、そこから事故や違反項目が芋づる式に出てくることで、処分が予想以上に厳しくなるケースも決して少なくありません。トラックを運転させる事業場では、各人が運転することができる車両の範囲について、しっかり確認することが求められます。