2019年6月

中途採用者の定着率は?~エン・ジャパン調査

 

◆人手不足の状況が続く中……

人手不足の状況が続く中、求人募集しても、「良い人からの応募がない」、「そもそも応募が全然来ない」という企業も多いようです。一方で、たとえ良い人材を採用できたとしても、離職率が高ければ、なかなか企業の人手不足の問題は改善されません。

その中でも、中途採用者については、企業に定着してもらうまでに一定程度の時間や労力もかかりますので、その定着率については気になるところです。

◆約4割が「中途入社者の定着率が低い」と回答

エン・ジャパン株式会社が運営する人事向け総合情報サイト『人事のミカタ』上で、直近3年間で中途入社者(正社員)がいる企業を対象に実施した「中途入社者の定着」についてのアンケート調査(回答:693社)によると、約4割が「中途入社者の定着率が低い」と回答しているそうです。業種別に見ると「流通・小売関連」(51%)、企業規模別では「1,000名以上」(48%)がそれぞれ最も高い割合となっています。なお、同調査では、中途入社者が退職に繋がりやすい期間を聞いていますが、37%が「1カ月未満~6カ月」と回答しているそうです。3社に1社の割合で、入社者が早期に退職の選択をしていることがわかります。

 

◆定着率向上に寄与する企業の取組み

同調査では、企業が中途入社者の定着率向上のために行っている取組みとしては、「定期で行う上司との面談」(53%)、「歓迎会での交流」(50%)との2つの回答が、特に多くなっています。取組みによる定着率の寄与度に関する調査では、定着率に好影響だったものとして「定期で行う人事との面談」、「定期で行う上司との面談」が挙がっています。また、実際に実施している企業は1割と少なかったものの、効果があるものとして、「メンター・ブラザー・シスター制度によるフォロー」が挙がっています。ちなみに、注目すべきところとして、定着率向上のための取組みとして「中途入社者コミュニティへの参加」、「社内見学」はむしろマイナスの影響につながるという結果が出ています。

 

◆定着率向上のための企業も取組み

人手不足の中、何の検討もなしに「何となく」採用活動をして、人を採るということは、社員の離職率の面からはリスクがあります。また、会社側が良かれと思って取り組んでいた定着率向上のための取組みも、実際には効果がないどころか、上記の結果のように、むしろ退職者を増やしている可能性もあります。

実際に効果のある取組みは何なのか、実際の効果を検討しながら、企業としても取り組んでいくべきでしょう。

【エン・ジャパン「人事のミカタ」~中途入社者の定着について】https://partners.en-japan.com/enquetereport/144

 

「有給休暇の取得義務化」企業の反応は?~エン・ジャパン調査

 

4月1日から、10日以上の有給休暇が付与されるすべての労働者に対して「年5日の有給休暇の取得義務化」が始まりました。エン・ジャパン株式会社は、同社の人事向け総合情報サイト「人事のミカタ」上で、2月から3月にかけて、「有給休暇の取得義務化」についてアンケート調査を行いました。その概要は以下のとおりです。

 

◆有給休暇の取得義務化の認知度は9割以上。4社に1社が義務化に否定的

有給休暇の取得義務化の認知度を伺うと、96%が「知っている」(内容も含めて知っている:63%、概要を知っている:33%)と回答しました。

有給休暇の取得義務化についての印象を伺うと、「良いと思う」が73%(非常に良いと思う:23%、まあ良いと思う:50%)、「良くないと思う」が26%(あまり良いと思わない:21%、良くないと思う:5%)と、4社に1社が否定的に感じていることがわかりました。

◆7割が「有給休暇の取得を促進している」と回答。業種は「金融」「商社」「IT」。一方、促進していないのは「広告」「流通」「不動産」。

「現在、有給取得を促進していますか?」と伺うと、「促進している」が70%でした。取得を促進している業種トップ3は「金融・コンサル関連」(100%)、「商社」(79%)、「IT・情報処理・インターネット関連」(77%)でした。一方、取得を促進していないのは「広告・出版・マスコミ関連」(36%)、「流通・小売関連」(34%)、「不動産・建設関連」(27%)でした。また、企業規模別では他に比べ、「100~299名」(28%)が目立ちました。

有給取得を促進する理由を伺うと、「社員の満足度向上のため」(67%)が最多。「有給取得の義務化の法に準拠するため」(42%)は第3位でした。

◆有給休暇の取得義務化への課題は、「人手不足」「業務の偏り」

有給の取得義務化にあたり、難しい点や課題を伺うと、「人員不足」(65%)、「業務量が人に偏っている」(60%)が多く回答されました。人手不足や業務過多の状況にある企業は、義務化への対応を不安視しているようです。

また「有給休暇の取得義務化に、どう対応しますか?」と伺うと、多くが「有給休暇の計画的取得」(83%)、「有給休暇取得のための周知・啓発」(81%)と回答しました。

 

会社によっては人員に余裕がなく、もともと有給休暇を取りづらい場合があるでしょう。今回の有給休暇の取得義務化は画期的ですが、そのためにサービス残業や仕事の持ち帰りが増えては意味がありません。会社ごとに業務の見直しを行ったり、各人が労働生産性を意識した行動をとったりすることが大事ではないでしょうか。

【エン・ジャパン「有給休暇の取得義務化」実態調査】

https://corp.en-japan.com/newsrelease/2019/17179.html

 

電話対応を軽んじるなかれ~エン・ジャパン調査

 

◆電話対応でイメージダウン

エン・ジャパン株式会社が実施した「アルバイト応募先の対応」に関するアンケート調査によると、「アルバイト応募先の対応によってイメージが変わった」との回答が6割を超えたそうです。

応募先企業のイメージアップにつながった対応場面としては「電話」「面接」「メール」の順となっています。具体的な対応としては、「連絡が早かった」「気持ちの良い挨拶があった」「正しい言葉や文章をつかっていた」「不安や疑問を聞いてくれた」といった項目が挙がっています。一方、イメージダウンにつながった対応場面としては「面接」と「電話」で回答の8割近くを占めています。具体的に対応としては、「話をちゃんと聞いてくれなかった」「タメ口など丁寧な言葉遣いではなかった」「不安や疑問を話しても、回答がえられなかった」という項目があります。いずれも電話対応が重要となっています。

 

◆クレームにもつながる怖さ

電話対応には、通常の問合せでもクレームに変身させてしまう怖さがあります。そうした事態を予防するには、どのような電話でも、まずは「相手の話をじっくり聞く」ことが重要でしょう。相手の話している途中の「あー、はいはいはい」と遮るような返事や、「なるほどですねー」といった軽すぎる返事などは、「軽んじられた。バカにされた」と、相手は不快に感じやすいものです。

社員同士では「そういう話し方の人なんだな」程度の話で気にもされない場合でも、外部からみると不快に感じ、企業イメージの低下につながります。

 

◆部下の対応を指導する難しさ

人手不足の中、電話対応により、採用の機会を逃してしまう実態がわかります。電話に対応した社員の言動に、明らかに間違いがある場合は言うまでもありませんが、「積極的に非があるとまでは言えないけれども企業活動にとっては機会の損失につながる」というようなケースは、なかなか悩ましいものです。OJTによる指導も重要ですが、その場限り・その人限りの指導となりがちです。また、自信をもって「これが正しい対応だ」と言い切れる上司はどれだけいるでしょうか? そもそも上司が指導の時間も取れないほど忙しいかもしれません。

「いまさら電話マナーなんて…」という軽視は、ボディブローのように企業の経営に響いてきます。電話対応を「対外的なイメージ戦略」の一つとして真剣に考え、会社として統一的な対応のレベルアップを図るには、やはり外部の専門家に依頼するのがやりやすいでしょう。

【エン・ジャパン『エンバイト』ユーザーアンケート】

https://corp.en-japan.com/newsrelease/2019/16663.html

 

新卒採用者の3年以内の離職率、平成30年は31.8%
◆ゴールデンウィーク明けは早期離職の時期?

例年、5月の大型連休後は、新社会人など若手が新しい環境に適応できずうつ病のようになってしまう、いわゆる「5月病」の時期とされています。特に今年は、10日間もの連休となったため、「早期離職を考える人」「大型連休中に転職活動をした人」が例年よりも多い傾向にあったとする一部報道も見られました。

ここでは、新卒入社3年以内の早期離職についてとりあげます。

 

◆平成30年間の「3年以内の離職率」推移

厚生労働省が毎年公表している「新規学卒者の離職状況」によると、新規学卒就職者(本稿では大卒のみ。以下「新卒採用者」)の3年以内の離職率は、平成30年で31.8%でした。離職率を平成の30年間で比較すると、最も低い年で23.7%(平成4年)、最も高い年で36.6%(平成16年)となっており、年によって多少の変動はあるものの、昨年の31.8%という結果は平均値に近いものとなっています。いつの時代も、おおむね3~4人に1人の新卒採用者が、3年以内に辞めてしまうと言えます。

ちなみに、業種別では、離職率が高い順に、宿泊業・飲食サービス業(49.7%)、教育・学習支援業(46.2%)、生活関連サービス業(45.0%)という結果でした。

 

◆「3年以内の離職」の理由1位とは?

では、新卒採用者は、具体的にどのような理由で早期離職しているのでしょうか。

内閣府「平成30年版 子供・若者白書」によれば、初職の離職理由(複数選択可)として最も多く挙げられたのは「仕事が自分に合わなかったため」(43.4%)で、2位以下の「人間関係がよくなかったため」(23.7%)、「労働時間、休日、休暇の条件がよくなかったため」(23.4%)を大きく引き離す結果となりました。新卒採用者の場合、人間関係のトラブルや労働条件よりも、「仕事(業務)のミスマッチ」が原因で辞めてしまうケースが多いようです。

この時期、自社の新卒採用者においても「仕事が自分に合わない」と感じている者がいないかどうか目を配ってみると、離職の予防につながるかもしれません。

【厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(平成27年3月卒業者の状況)」】

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00001.html

【内閣府「平成30年版 子供・若者白書」】

https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h30honpen/pdf_index.html