男性の育児参加で注目される「ペア休」って何だ?
◆「ワンオペ育児」に対する問題意識の高まり
令和元年度の厚生労働省の調査では、女性の育児休業取得率83%に対し男性は7.48%と、大きな差があります。こうした差が、女性が出産・育児を理由に退職したりする原因になったり、母親に家事・育児の負担が偏る、いわゆる「ワンオペ育児」を発生させたりしているといわれます。
◆育児参加を望む男性の割合は?
一方、ゼネラルリサーチ株式会社が2019年3月に20~40代男女を対象に実施したアンケート調査では、男性の育休取得について57.4%が「許されるなら取得したい」と回答しています。
さらに、コロナ禍により共働きの夫婦がともに自宅でテレワークを行う機会が増えたこともあり、以前にもまして育児に参加したいと考える男性が増えています。
◆「ペア休」とは
このような変化を受け、共働きの父親と母親が一緒に育児休業を取る「ペア休」が、最近注目されています。
これは、「パパ・ママ育休プラス」という制度により、父親と母親で時期をずらして育児休業を取得し、子どもが1歳2カ月になるまで休業期間を延長するというものです。
ペア休経験者によれば、育児休業に入る前から職場で仕事を分担し、互いに支え合う雰囲気が生まれ、育児休業中の家事・育児の負担を分担できたことで気持ちに余裕が持てた、などの効果を実感できたという声があります。
◆改正育児・介護休業法では男性育休制度も創設
今国会で成立した改正育児・介護休業法では、男性の育児休業取得促進のため、子の出生直後に取得できる、新しい育児休業制度も設けられました。
新制度は、2回までの分割取得が可能で、労使協定を締結し、労働者と事業主が個別に同意している場合には休業中の就業も一定程度可能とするなど、柔軟な制度となっています。
詳細は今後省令等において明らかにされ、令和3年6月9日から1年6月を超えない範囲内で政令で定める日より施行されます。企業において改正対応を検討するタイミングはまだ少し先となりますが、昨今の変化を踏まえると、今から育児休業を取得しやすい環境を整備しておくことは、若手人材の募集や定着を促す意味でも、効果が期待できそうです。
新型コロナワクチンの職域接種と労働時間の取扱い
新型コロナワクチンの接種を加速化するため、企業や大学での「職域接種」が6月21日から可能とされ、6月8日から申請の受付が開始されています。一部の企業や大学では職域接種を実施するとの報道もされています。
◆職域接種の概要
職域接種は自治体からの接種券が届く前でも可能ですが、会場や人員は企業等が自ら確保しなければなりません。実施形態としては、企業単独実施のほか、中小企業が商工会議所等を通じての共同実施、下請け企業、取引先を対象に含めての実施などがあります。
企業や大学に求められる主な実施要件は、以下のとおりです。
(1) 医師・看護師等の医療職のほか、会場運営のスタッフ等、必要な人員を企業や大学等が自ら確保すること。また、副反応報告などの必要な対応を行うことができること。
(2) 接種場所・動線等の確保についても企業や大学等が自ら確保すること。
(3) 社内連絡体制・対外調整役を確保すること(事務局を設置すること)。
(4) 同一の接種会場で2回接種を完了すること、最低2,000回(1,000人×2回接種)程度の接種を行うことを基本とする。
(5) ワクチンの納品先の事業所でワクチンを保管の上、接種すること。
◆ワクチン接種に関する休暇や労働時間の取扱い
ワクチン接種自体は業務ではありませんが、接種に費やす時間や副反応が出た場合の労働時間や休暇の取扱いが気になるところです。厚生労働省の見解は以下のとおりです。
「職場における感染防止対策の観点からも、労働者の方が安心して新型コロナワクチンの接種を受けられるよう、ワクチンの接種や、接種後に労働者が体調を崩した場合などに活用できる休暇制度等を設けていただくなどの対応は望ましいものです。
また、①ワクチン接種や、接種後に副反応が発生した場合の療養などの場面に活用できる休暇制度を新設することや、既存の病気休暇や失効年休積立制度(失効した年次有給休暇を積み立てて、病気で療養する場合等に使えるようにする制度)等をこれらの場面にも活用できるよう見直すこと、②特段のペナルティなく労働者の中抜け(ワクチン接種の時間につき、労務から離れることを認め、その分終業時刻の繰り下げを行うことなど)や出勤みなし(ワクチン接種の時間につき、労務から離れることを認めた上で、その時間は通常どおり労働したものとして取り扱うこと)を認めることなどは、労働者が任意に利用できるものである限り、ワクチン接種を受けやすい環境の整備に適うものであり、一般的には、労働者にとって不利益なものではなく、合理的であると考えられることから、就業規則の変更を伴う場合であっても、変更後の就業規則を周知することで効力が発生するものと考えられます(※)。
こうした対応に当たっては、新型コロナワクチンの接種を希望する労働者にとって活用しやすいものになるよう、労働者の希望や意向も踏まえて御検討いただくことが重要です。
※常時10人以上の労働者を使用する事業場の場合、就業規則の変更手続も必要です。」
【厚生労働省「職域接種に関するお知らせ」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_shokuiki.html
【厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html
夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定に新基準
◆厚生労働省から新基準が公表されました
厚生労働省から、「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について(令和3年4月30日保保発0430第2号・保国発0430第1号)」という通知が出されました(5月12日)。これにより、夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について、これまでの通達(昭和 60 年6月13日付保険発第66号・庁保険発第22号通知)が廃止され、新たな基準が適用されます(令和3年8月1日より)。
◆背景
令和元年に成立した健康保険法等の一部を改正する法律(令和元年法律第9号)の附帯決議で、「年収がほぼ同じ夫婦の子について、保険者間でいずれの被扶養者とするかを調整する間、その子が無保険状態となって償還払いを強いられることのないよう、被扶養認定の具体的かつ明確な基準を策定すること」とされ、これを踏まえたものです。
◆夫婦とも被用者保険の被保険者の場合の取扱い(新基準)
基準には、「夫婦の一方が国民健康保険の被保険者の場合の取扱い」、「主として生計を維持する者が健康保険法第 43 条の2に定める育児休業等を取得した場合の取扱い」などが定められています。ここでは、「夫婦とも被用者保険の被保険者の場合の取扱い」の新基準をみてみます。
(1) 被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする。以下同じ。)が多い方の被扶養者とする。
(2) 夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。
(3) 夫婦の双方又はいずれか一方が共済組合の組合員であって、その者に被扶養者とすべき者に係る扶養手当又はこれに相当する手当の支給が認定されている場合には、その認定を受けている者の被扶養者として差し支えない。なお、扶養手当等の支給が認定されていないことのみを理由に被扶養者として認定しないことはできない。
(4) 被扶養者として認定しない保険者等は、当該決定に係る通知を発出する。当該通知には、認定しなかった理由(年間収入の見込み額等)、加入者の標準報酬月額、届出日及び決定日を記載することが望ましい。被保険者は当該通知を届出に添えて次に届出を行う保険者等に提出する。
(5) (4)により他保険者等が発出した不認定に係る通知とともに届出を受けた保険者等は、当該通知に基づいて届出を審査することとし、他保険者等の決定につき疑義がある場合には、届出を受理した日より5日以内(書類不備の是正を求める期間及び土日祝日を除く。)に、不認定に係る通知を発出した他保険者等と、いずれの者の被扶養者とすべきか年間収入の算出根拠を明らかにした上で協議する。この協議が整わない場合には、初めに届出を受理した保険者等に届出が提出された日の属する月の標準報酬月額が高い方の被扶養者とする。
標準報酬月額が同額の場合は、被保険者の届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。なお、標準報酬月額に遡及訂正があった結果、上記決定が覆る場合は、遡及が判明した時点から将来に向かって決定を改める。
(6) 夫婦の年間収入比較に係る添付書類は、保険者判断として差し支えない。
【厚生労働省「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」PDF】
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210512S0010.pdf