求職者とのミスマッチ解消につながる職場情報提供の手引きが策定されます
◆ミスマッチ解消のカギは情報提供
働き方のニーズが多様化し、求職者が求める情報を提供してミスマッチ解消につなげることが重要になっています。
一方で、厚生労働省はヒアリング等の結果、一度に提示される情報量が多いと求職者が煩雑に感じること等が確認されたことから、情報は求職者等の求めに応じて柔軟に提供していくことが適切として、求職者への職場情報提供に当たっての手引きの策定が進められています。
◆関心は所属予定部署に関する情報
案では、求職者等が求める情報として「職場環境に関する情報」ではテレワーク、女性活躍、男性育休取得率、育児休業、短時間勤務の状況等、「労働条件・勤務条件」では賃金(昇給等の中長期的な見通し含む)、所定外労働時間(残業時間)、有給休暇取得率等、が挙げられています。
またヒアリング結果を踏まえ、企業単位の情報に加えて、所属予定部署に係る情報等も示すことが望ましいとされています。
◆掲載方法の工夫で読みやすく
掲載する情報量については、採用サイトや求人票には募集に当たって必要十分な情報のみを開示し、人的資本に関する情報は求職者等が自身の関心に応じて閲覧できるようリンクを設置して別のページに掲載する、といった工夫の仕方が示されています。
◆中小企業に適した方法
ウェブサイトの整備や掲載する情報更新に係る負担が懸念される中小企業向けの方法として「しょくばらぼ」の活用が示され、ハローワークインターネットサービスと連携していて無料で情報を閲覧できる、といったメリットが挙げられています。
【厚生労働省「第205回労働政策審議会職業安定分科会資料」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_030127159_001_00070.html
短い期間での工事契約を禁止する建設業法などの改正案が閣議決定
「2024年問題」を抱える建設業界の深刻な人手不足に対応するため、現場で働く人の賃上げや働き方改革を促すことなどを盛り込んだ「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。以下、その概要です。
◆労働者の処遇改善
① 建設業者に対して労働者の処遇確保を努力義務化するとともに、国は当該処遇確保に係る取組状況を調査・公表
② 労務費等の確保と行き渡りのため、中央建設業審議会が「労務費の基準」を作成・勧告することとし、受注者および注文者の双方に対して著しく低い労務費等による見積り書の作成や変更依頼を禁止(違反発注者には国土交通大臣等が勧告)
③ 併せて、受注者における不当に低い請負代金による契約締結を禁止
賃上げ予定の中小企業の6割が業績改善の伴わない「防衛的」賃上げ
~日本商工会議所・東京商工会議所の調査より
日本商工会議所・東京商工会議所は2月14日、「中小企業の人手不足、賃金・最低賃金に関する調査」集計結果を発表しました。全国の中小企業6,013社を対象に調査したもので、2024年1月4日~26日に実施し、2,988社から回答を得ています。
2024年度に賃上げを予定する企業は、前年度比3.1ポイント増の61.3%に上ったものの、うち6割が業績改善を伴わない人材確保のための「防衛的な賃上げ」を迫られている状況です。
◆人手が「不足している」と回答した企業は65.6%
「人手不足の状況および対応」では、人手が「不足している」と答えた企業は前年比1.3ポイント増の65.6%に上り、3社に2社が人手不足という深刻な状況が依然続いています。
業種別にみると、「2024年問題」への対応が求められる建設業(78.9%)や運輸業(77.3%)、労働集約型の介護・看護業(76.9%)で「不足している」とする企業の割合が高く、8割近くに及んでいます。
また、最も低い製造業(57.8%)でも約6割が「不足している」と回答していて、あらゆる業種で人手不足の状況にあります。
◆2024年度に「賃上げを実施予定」の企業は6割超
こうした中で、2024年度に「賃上げを実施予定」と回答した企業の割合は、昨年度(58.2%)から3.1ポイント増加の61.3%と6割を超え、賃上げに取り組む企業は着実に増加しています。ただ、そのうち、「業績の改善がみられないが賃上げを実施予定」は60.3%で、依然6割が「防衛的賃上げ」となっています。
従業員規模別では、従業員5人以下の企業では、「賃上げ実施予定」は32.7%にとどまり、「賃上げを見送る予定(引下げ予定を含む)」が16.8%に上っています。
◆「最低賃金を下回ったため、賃金を引上げた」企業は38.4%
2023年10月の最低賃金引上げを受け、「最低賃金を下回ったため、賃金を引上げた」企業(直接的な影響を受けた企業)は38.4%と、昨年度から0.4ポイント低下したものの引き続き高い水準です。
一方、人手不足や物価上昇が進む中、「最低賃金を上回っていたが、賃金を引上げた」企業は29.8%と、昨年度から5.2ポイント増え、2017年の調査開始以降で最も高い割合となっています。
【日本商工会議所・東京商工会議所「中小企業の人手不足、賃金・最低賃金に関する調査」集計結果】
https://www.jcci.or.jp/20240214_survey_release.pdf
◆資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止
① 資材高騰など、請負代金や工期に影響を及ぼす事象(リスク)がある場合、請負契約の締結までに受注者から注文者に通知するよう義務化する。また、資材価格変動時における請負代金等の「変更方法」を契約書の記載事項として明確化
② 注文者に対し、当該リスク発生時は誠実に協議に応ずることを努力義務化
◆働き方改革と生産性向上
① 長時間労働を抑制するため、受注者における著しく短い工期による契約締結を禁止
② ICT活用等を要件に、現場技術者に係る専任規制や、公共工事における施工体制台帳提出義務を合理化
③ ICT活用による現場管理の「指針」を国が作成し、特定建設業者や公共工事受注者に対し、効率的な現場管理を努力義務化
【国土交通省「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定~建設業の担い手を確保するため、契約取引に係るルールを整備~】
https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo13_hh_000001_00221.html
採用活動におけるインターンシップ利用の増加
◆インターンシップ利用の増加
採用活動において、インターンシップの実施は現在、欠かせないものになっています。令和4年6月には、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の合意による「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」(3省合意)が改正され、一定の基準を満たしたインターンシップで企業が得た学生情報を、広報活動や採用選考活動に使用できるよう見直しがなされるなど、国としてもインターンシップの活用を推進しているところです。
◆学生のインターンシップ等の参加率は85.7%
マイナビが、マイナビ2025会員のうち2025年3月卒業見込みの全国の大学3年生、大学院1年生(有効回答数2,633名)を対象に実施した調査によれば、インターンシップ・仕事体験の参加率は85.7%となったそうです。これは14年卒の調査開始以来で最高値となっており、現在の新卒採用においてはインターンシップが広く活用されている実態がわかります。
◆インターンシップ等の内容
同調査によれば、インターンシップ・仕事体験の内容としては、「グループワーク(企画立案、課題解決、プレゼンなど)」が75.1%で最多となっており、「若手社員との交流会」(58.7%)、「人事や社員からの講義・レクチャー」(50.2%)、「会社見学・工場見学・職場見学」(49.9%)と続いています。また、「実際の現場での仕事体験」(33.2%)は前年より6.8ポイント増加しており、より実際の仕事への理解を促すための内容にシフトしていることがわかります。
◆効果的なインターンシップの実施を
インターンシップに参加した学生は、その企業の選考に進みたいという意向を持つ割合が高いという調査結果もあります(株式会社ベネッセ i-キャリア「2025年卒大学生 夏のインターンシップ」に関する調査)。売り手市場の現況において、企業理解を促進し、自社のアピールのため、採用後のミスマッチを防ぐためにも、効果的なインターンシップの実施を検討したいところです。
【マイナビ 2025年卒 大学生広報活動開始前の活動調査】
https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2024/02/s-internship-25-02.pdf