2025年2月号

SNS等に労働者の募集に関する情報を載せる際の注意点

◆労働者の募集広告には、募集主の氏名等の表示が必要

職業安定法では、インターネットやX等のSNSを含む広告等により、労働者の募集に関する情報等を提供するときは、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならないこととされています(第5条の4)。

昨今、インターネットで犯罪実行者の募集が行われる事案(闇バイト)が見られ、その中には、通常の労働者募集と誤解を生じさせるような広告等も見受けられることから、厚生労働省は、SNS等を通じて直接労働者を募集する際には、①募集主の氏名(または名称)、②住所、③連絡先(電話番号等)、④業務内容、⑤就業場所、⑥賃金の6情報は必ず表示するよう、事業者に呼びかけています。

○「住所(所在地)」はどこまで記載すればよいか?

ビル名、階数、部屋番号まで記載する必要があります。

○「連絡先」として何を記載すればよいか?

電話番号、メールアドレスまたは、自社ウェブサイト上に備え付けられた専用の問合せフォームへのリンクのいずれかを記載する必要があります。

○氏名等の情報自体を記載せず、氏名等の情報が記載されている会社ウェブサイトの募集要項等のリンクを記載することでも問題ないか?

会社ウェブサイトの募集要項等のリンクのみでは、そもそも求人であるかどうかも含め、誤解を招く可能性があるため、募集情報を提供する広告等自体に上記6情報を記載する必要があります。

○業務内容、就業場所および賃金については、職業安定法第5条の3や労働基準法第15条で求められるのと同じように詳細を記載する必要があるか?

必ずしも同じである必要はないが、求職者が誤解を生じないよう、業務内容や就業場所、賃金について記載する必要があるとしています。例えば、就業場所について、「就業場所の変更の範囲」は記載せず「雇入れ直後の就業場所」のみを示す形や、複数の候補を示し、「応相談」とする形、賃金について、「時給1,500円~」とする形でも、記載があれば、直ちに職業安定法第5条の4違反とはならないと考えられるとしています。

【厚生労働省「労働者の募集広告には、「募集主の氏名(又は名称)・住所・連絡先(電話番号等)・業務内容・就業場所・賃金」の表示が必要です」】

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/r0604anteisokukaisei1_00006.html

 

東京都がカスハラ防止指針を公表しました

◆東京都のカスハラ防止指針

カスタマー・ハラスメント(以下、「カスハラ」という)の防止を目的に、昨年10月に東京都が全国で初の条例を公布したのは記憶に新しいところです。今般、この条例に基づき、カスハラ防止のために必要な事項を定める「カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)」が公表されました。東京都では遵守が求められますし、そのほかの地域においても参考となる内容です。指針では、①カスハラの定義と禁止、②顧客等、就業者及び事業者の責務、③都の施策、④事業者の取組み等について詳しく解説しています。

◆自社での対応の参考に

条例では、カスハラの定義を❶顧客等から就業者に対し、❷その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、❸就業環境を害するものとしており、指針ではそれぞれの考え方を具体的に示しています。代表的な行為類型にも触れ、例えば「就業者への土下座の要求」や「就業者を拘束する行動」などの行為は刑法にも触れる可能性があると説明しています。

また、事業者に求められる取組みとして、①カスハラ対策の基本方針・基本姿勢の明確化と周知、②カスハラを行ってはならない旨の方針の明確化と周知、③相談窓口の設置、④適切な相談対応の実施、⑤相談者のプライバシー保護に必要な措置を講じて就業者に周知、⑥相談を理由とした不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め周知、⑦現場での初期対応の方法や手順の作成、⑧内部手続(報告・相談、指示・助言)の方法や手順の作成、⑨事実関係の正確な確認と事案への対応、⑩就業者の安全の確保、⑪就業者の精神面及び身体面への配慮、⑫就業者への教育・研修等、⑬再発防止に向けた取組みを挙げて、それぞれ対応のポイントを示しています。

自社での対応を検討する際に参考となるでしょう。

【東京都「カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)」】

https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/plan/kasuharashishin/index.html

 

令和7年介護職員等処遇改善加算における特例措置について

◆介護職員の賃上げ・定着が急務

令和6年の介護事業者の倒産件数は全国で172件と、介護保険制度発足以降最多となりました。介護報酬改定による影響なども指摘され、政府は「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」(令和6年11月22日閣議決定)にて、人手不足の解消や職員の定着を図るための包括的な取組みとして、令和6年度補正予算に補助金の支給を盛り込みました。また、令和7年介護職員等処遇改善加算の申請において特例措置も講じられます。

◆さらなる賃上げ等を支援するための補助金

補助金は、「介護職員等処遇改善加算」を取得している事業所を対象に交付されます。交付の条件は、生産性向上や職場環境改善に向けた具体的な取組みのための計画を策定し、都道府県に提出することです。補助金の交付を受けた場合の実績報告書の提出も必要となります。

◆さらなる処遇改善加算の取得促進のための要件弾力化

もう1つの特例措置は、さらなる処遇改善加算の取得促進のための要件弾力化です。介護職員等処遇改善加算の取得要件のうち、キャリアアップ要件と職場環境等要件について弾力化がなされます。さらに申請様式の簡素化として、要件を満たしているかをチェックリスト形式で確認する方法が導入されます。

◆2月の申請受付分から適用開始

第243回社会保障審議会介護給付費分科会(令和6年12月23日)にて、これらの特例措置が示されて以降、詳細はまだ明らかにされていません。

令和7年度介護職員等処遇改善加算の申請に向けて、最新情報をチェックしておきましょう。

【厚生労働省「第243回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料」】

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_47059.html

 

 

令和7年年金改正のゆくえ~社会保障審議会年金部会における議論の整理

◆5年に一度の年金財政検証

令和6年は、5年に一度の年金財政検証を行う年で、同年12月25日に社会保障審議会年金部会における報告書が公表されました。令和7年の年金制度改正は、主に下記課題への対応を大きな柱に議論されてきました。

・平均寿命・健康寿命の延伸や家族構成・ライフスタイルの多様化、女性・高齢者の就業拡大、今後見込まれる最低賃金の上昇・持続的な賃上げという社会経済の変化に対応する観点から取り組むべき課題

・年金制度が有する所得保障機能の強化の観点から取り組むべき課題

◆令和7年年金制度改正の具体的内容(目次)

1 被用者保険の適用拡大

2 いわゆる「年収の壁」と第3号被保険者制度

① いわゆる「106 万円の壁」への制度的対応

② 第3号被保険者制度

3 在職老齢年金制度の見直し

4 標準報酬月額上限の見直し

5 基礎年金のマクロ経済スライドによる給付調整の早期終了

6 高齢期より前の遺族厚生年金の見直し等

① 20代から50代の子のない配偶者の遺族厚生年金

② 20代から50代の子のある配偶者の遺族厚生年金

③ 遺族基礎年金(国民年金)

7 年金制度における子に係る加算等

8 その他の制度改正事項

9 今後検討すべき残された課題

① 基礎年金の拠出期間の延長(45年化)

② 障害年金

国民年金の基礎年金制度が導入されてから40年、社会や経済の状況が大きく変化してきていることに伴い、今回の改正は、被用者保険の適用拡大や在職老齢年金制度の見直しといった従来からの検討項目に加え、遺族年金や基礎年金マクロ調整の早期終了など、大きな見直しとなっています。今通常国会で審議され改正内容は固まりますが、これまでの年金制度改革の経緯なども押さえておくとよいでしょう。

【厚生労働省 社会保障審議会年金部会「社会保障審議会年金部会における議論の整理」】

https://www.mhlw.go.jp/content/12501000/001364986.pdf