2017年度から年金額等が変わります!
◆支給額は3年ぶりの減額
2017年度の年金額が「前年度比0.1%引下げ」と発表されました。総務省が発表した「平成28 年平均の全国消費者物価指数」が前年から0.1%下落したことが年金額に反映されたものであり、3年ぶりの改定です。なお、「マクロ経済スライド」はデフレ時には見送るという規定があり、2016度に引き続き適用されません。2017年度の国民年金の支給額は、満額で月6万4,941円(前年度比67円減)、厚生年金の支給額は、会社員だった夫と専業主婦のモデル世帯(40 年間就業し、妻がその期間すべて専業主婦であった世帯が年金を受け取り始める場合)で月22万1,277円(同227円減)となります。
◆国民年金保険料、在職老齢年金は?
2017年度の国民年金保険料(月額)は16,490円(前年度比230円引上げ)です。2004年(平成16年)の改正で保険料を毎年280円ずつ引き上げることが定められ、2017年度はその上限(16, 900円)の年度となり、同年度以降は16,900円で固定されるはずですが、前年の物価変動率や実質賃金変動率によって増減されます。在職老齢年金は、60 歳台前半(60 ~64 歳)の支給停止調整変更額と60 歳台後半(65 ~69 歳)と70 歳以降の支給停止調整額については46 万円(前年度比1万円減)に改定となります。また、60 歳台前半(60~64歳)の支給停止調整開始額(28 万円)は前年度と同額です。
◆「年金額の改定ルール」の見直し
昨年12月の臨時国会で成立した「年金制度改革関連法」には、年金支給額を賃金に合わせて引き下げる新しいルールが盛り込まれました。この新ルールでは、現役世代の負担を重視し、物価が上がった場合でも現役世代の賃金が下がれば年金支給額を減らす仕組みで、2021年度からの実施となります。
人材・人手不足の状況下で「若手社員の定着」にどう取り組むか?
◆人材不足・人手不足が顕著な業種は?
先日、産業能率大学から、中小企業(従業員数6~300 人)の経営者を対象に昨年11月に行ったインターネット調査(2017年 中小企業の経営施策)の結果が発表されましたが、「現在の従業員数の充足状況」について尋ねたところ、次の通りの回答結果となりました。
・不足している:48.6%
・適性である:48.0%
・過剰である:3.5%
業種別に見ると、建設業(61.6%)、情報通信業(62.8%)、飲食店・宿泊業(61.1%)、医療・福祉(69.0%)において不足感が高いようです。また、「2017年の経営活動に影響を与えそうな要因」として「人材の不足」(36.0%)がトップとなっており、中小企業における人材不足問題はますます深刻な状況となっているようです。
◆若手社員の定着には何が有効か?
人手不足・人材不足への対応として、政府は女性や高齢者等の活用を推進していますが、まずは「若手社員の定着」に向けた取組みが重要だと言えるでしょう。経団連が昨年7~8月に実施した「2016年 人事・労務に関するトップ・マネジメント調査」で会員企業の労務担当役員以上(477名)が回答したところによると、若手社員の定着状況の改善に向けた取組みについて「必要であると感じている」企業は73.6%に上っています。また、定着状況の改善に向けて有効と考える取組み(3つまで回答)の上位5つは以下の結果となりました。
(1)職場での良好な人間関係の構築(60.7%)
(2)能力や適性に合った配置、納得性の高い評価制度の整備・運用(54.4%)(3)労働時間の削減、年次有給休暇の取得促進(33.9%)
(4)キャリアパスや企業ビジョン・企業理念の見える化(31.8%)
(5)能力開発の強化(27.9%)
◆採用活動以外にも重要な課題が
人手不足・人材不足に向けた取組みとして、まずは「採用活動」に力を入れるのは当然のことですが、「入社後の社員定着」に向けてどのような施策を行っていくかも重要な課題だと言えるでしょう。
厚労省が策定した「労働時間適正把握ガイドライン」のポイント!
◆1月20日に公表
近年、労働時間削減は多くの企業において喫緊の課題となっており、政府の「働き方改革実現会議」でも長時間労働の是正について様々な議論がなされています。昨年12月には厚生労働省から『「過労死等ゼロ」緊急対策』が公表され、“違法な長時間労働を許さない取組の強化策”として以下の項目が挙げられていました。
(1)新ガイドラインによる労働時間の適正把握の徹底
(2)長時間労働等に係る企業本社に対する指導
(3)是正指導段階での企業名公表制度の強化
(4)36協定未締結事業場に対する監督指導の徹底
このうち上記(1)に対応するものとして、厚生労働省から1月20日に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が策定・公表されました。
◆本ガイドラインの位置付け
従来、事業場における労働時間の管理方法については、平成13年に発出された通達「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(いわゆる「46 通達」)が1つの目安となっていましたが、今回のガイドラインはこの通達を修正するかたちで策定されました。
◆本ガイドラインで注目すべき点
従来の通達と今回のガイドラインを比較してみると、「労働時間の考え方」という項目が新たに追加されました。この項目では、労働時間とは「使用者の指揮命令下に置かれている時間のこと」であり、使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は「労働時間に当たる」とされ、業務の準備や後始末の時間、手待時間、研修等の時間であっても労働時間に該当する例も示されています。また、「使用者が講ずべき措置」の内容が従来の通達よりもかなり具体的に示されました。特に自己申告制により始業・就業時間の確認等を行う場合の措置について、労働時間の管理者に対して「本ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと」を使用者に求めており、労働者の自己申告により把握した時間とPCの使用時間の記録等により判明した時間に“著しい乖離”が生じている場合には実態調査を行って労働時間を補正すること等を求めています。
◆その他の注意点
その他、「三六協定の延長」や「賃金台帳の調製」についての注意点も記載されていますので、本ガイドラインに一度目を通しておき、今後の労働時間管理に活用することをお勧めいたします。
対策はお済みですか?「従業員による介護」をとりまく最新事情
◆施行から1カ月!「改正育児・介護休業法」
先月、育児・介護休業法の改正法が施行されました。報道などでは「育児」のほうがクローズアップされがちですが、もう一方の「介護」も要注目の改正となっています。
◆1月から変わった「介護休業」
従業員の介護休業に関する今年1月からの改正点は次の通りです。
(1)介護休業の分割取得が可能に(3回を上限に通算93日まで)
(2)介護休暇の取得単位が柔軟化(半日単位も可能に)
(3)介護のための所定労働時間の短縮措置の回数増(介護休業とは別に3年間で2回以上)
(4)介護のための所定外労働の制限の新設(介護終了まで所定外労働を制限)
この他にも、介護の対象となる家族の範囲が拡大されたり、有期契約労働者の介護休業取得要件が緩和されたりと、全体的に従業員の「就業と介護の両立」をより柔軟に支援する方向性での改正と言えます。今後、介護のために休業を希望する従業員が増えることが予想されます。改正法はすでに施行されていますので、介護休業の運用体制がまだ整っていないという企業は、今すぐ就業規則や社内規程を見直さなければなりません。
◆マタハラ防止は当たり前。ケアハラ防止も忘れずに
さらに、今回の改正では、介護を理由とする従業員への不利益な取扱い(介護ハラスメント。通称「ケアハラ」)の防止措置が新たに義務付けられました。介護休業を取得しようとする従業員に対し、休業を拒否したり、復帰後に閑職へ追いやったり、心無い言葉をかけるような行為が発生したりした場合、その企業は法的責任を追及されるおそれがあります。防止措置とは、例えば社内報・研修・パンフレットなどで企業としての方針を周知・啓発することや、苦情を含む相談の窓口を設けることなどです。これらはマタハラの防止と共通する措置でもあります。
◆企業もダブルケア対策の時代
「ダブルケア」という言葉をご存知でしょうか? 横浜国立大学の相馬准教授とブリストル大学の山下上級講師による造語であり、「子育てと介護が同時期に発生する状態」を指します。近年は晩婚化の影響で、子育て期間と親の介護期間が重複しやすい傾向にあり、ダブルケアに直面する人が増えています。内閣府の推計によれば、ダブルケアを行っている人は男性8万5,000人、女性16万8,000人で、この数字は今後、年々増加することでしょう。企業にとっても、「育児休業やマタハラへの対応」と「介護休業やケアハラへの対応」の両立が必要です。今回の法改正をきっかけに、従業員のダブルケア対策を急ぎましょう。