2017年9月

最低賃金引上げ額は「平均25円」で過去最大の上げ幅に!
◆引上げ額は全国平均で25円

7月27日に開催された厚生労働省の第49回中央最低賃金審議会において、今年度(平成29年度)の地域別最低賃金額改定の目安が公表されました。今年度の引上げ額の全国加重平均は25円(昨年度24円)、改定額の全国加重平均額は823円(同798円)となっています。

◆全都道府県で20円を超える目安額に

各都道府県に適用される目安のランクは以下のようになっています(都道府県の経済実態の応じ、全都道府県をABCDの4ランクに分けて、引上げ額の目安を示しています)。
【各都道府県に適用される目安】
Aランク(引上げ額26円)…埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪の6都府県
Bランク(引上げ額25円)…茨城、富山、長野、静岡、京都、広島など11府県
Cランク(引上げ額24円)…北海道、宮城、群馬、新潟、岐阜、山口など14道
Dランク(引上げ額22円)…青森、岩手、福島、鳥取、長﨑、鹿児島、沖縄など16県
全都道府県で20円を超える目安額となっており、引上げ率は昨年度と同じ3.0%です。

◆改定は10月から

今後、各地方最低賃金審議会において上記の目安を参考にしつつ、それぞれの地域における賃金実態調査などを踏まえて、各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定します(10月1日から10月中旬までの間に順次発効される予定です)。上記の目安額通りに最低賃金が決定されると、最低賃金が時給で決まるようになった平成14年以降、過去最高額となる引上げとなります(昨年度は18円)。

来年4月から本格化する「無期転換ルール」に関する調査結果 
◆改正労契法で定められたルール

2013年に「改正労働契約法」が施行され、同法18条により、同じ事業主の下で契約更新が繰り返されて通算5年を超えた有期契約労働者は、本人の申出により「無期雇用」として働くことができるようになりました(いわゆる『無期転換ルール』)。施行から5年が経過する来年(2018年)4月1日から本格的に、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる権利を有する労働者が生じることとなりますが、そんな中、連合から『有期契約労働者に関する調査報告』が発表されました。

◆ルールの認知度は?

この調査は、本格的に無期労働契約への転換が始まる前に、有期契約労働者の改正労働契約法についての認知状況や考えを把握するため、今年4月に実施されたものです(有効回答者数:1,000名)。まず、『無期転換ルール』について、「ルールの内容まで知っていた」は15.9%にとどまっており、「ルールができたことは知っているが、内容までは知らなかった」が32.9%、「ルールができたことを知らなかった」が51.2%で、この2つを合計した『内容を知らなかった』は84.1%となっています。ルールの対象者となる労働者の中ではまだまだ認知度が低いようです。

◆ルールに対する考え方

また、『無期転換ルール』についての考えを尋ねたところ、「契約期間が無期になるだけで待遇が正社員と同等になるわけではないから意味が無い」が54.5%で最も割合が高く、次いで「無期契約に転換できる可能性があるのでモチベーションアップにつながる」が37.1%、「契約更新して働き続ける可能性が狭まる」が31.3%となっています。

◆会社としての対応は?

いずれにしても来年4月からこの『無期転換ルール』の適用が本格化するわけですから、「まだ何も対応していない」という会社では、まずは対象となる従業員に対して制度(ルール)を説明し、あわせて無期転換となる労働者の待遇の決定、規定の整備等を行う必要があります。

中小企業の「健康経営」への関心度と関係省庁の取組み
◆中小企業に浸透していない?

東京商工会議所は、東京都内の中小企業を対象とした「健康経営」に関する取組みについての調査をまとめました。その結果、約6割の企業は「健康経営」について認知しており、約2割の企業はすでに「実践している」と回答しました。一方、健康経営の言葉自体を「聞いたことがない」企業は約4割もあり、認知度がいまだ低いことが浮き彫りとなりました。

◆関心はあるが、その効果は未知数

また、健康経営を進めるうえでの課題(複数回答)として、「どのようなことをしたらよいか分からない」が38.1%と最も多く、「ノウハウがない」「社内の人員がいない」(ともに22.7%)、「予算がない」(12.5%)と続いています。中小企業は、健康経営に関心があるにもかかわらずその効果がわからず、また、実践するための予算や人員が確保できないため、取組みをためらっているようです。健康経営は、企業が従業員の健康管理をすることで組織全体が活性化し、長時間労働の是正や生産性の向上の効果にもつながるとされています。

◆「健康経営」に関する主な取組み

関係省庁の主な取組みとして、経済産業省は、東京証券取引所と共同で毎年「健康経営銘柄」を選定して公表することで、企業の健康経営の取組みが株式市場等において評価される仕組みづくりに取り組んでいます。また、厚生労働省は今年7月に「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」を公表しました。このガイドラインは、事業主と健保組合等が連携(コラボヘルス)して健康増進に向けた取組みを行うためのものです。また、健保加入者の健康情報の分析を行うことで、個人の状況に応じた保健指導や効果的な予防・健康づくりのアドバイス等が期待されます。

従業員の睡眠不足問題と「勤務間インターバル制度」の活用
◆睡眠ブーム到来中!

「睡眠」が静かなブームとなっています。ビジネスマン向けの「睡眠」関連書が次々と出版されたり、深夜業務が多い企業などを対象とした「従業員の睡眠改善」セミナーが話題となったりするなどしています。「平成27年国民健康・栄養調査」(厚生労働省)によれば、1日の平均睡眠時間が「6時間未満」という人は平成27年で39.5%です。この割合は、平成19年以降、増加し続けています。睡眠ブームも、このように睡眠不足に悩む人が増えていることの裏返しと言えます。ここでは、企業にとっての「従業員の睡眠不足」について、考えてみましょう。

◆睡眠負債の恐怖

「睡眠負債」という言葉をご存知でしょうか。スタンフォード大学により提唱された概念で、日々の僅かな睡眠不足が負債(借金)のように積み重なっている状態を指します。短期的な睡眠不足であれば、しっかり休養すれば改善しますが、睡眠負債の場合、本人は睡眠不足の自覚がないまま心身にダメージが蓄積し、脳のパフォーマンスの低下や、がん、生活習慣病、鬱、認知症などの発症をも引き起こすとされています。一例として、東北大学の調査によれば、睡眠時間が6時間以下で睡眠負債がたまった状態の人においては、男性の前立腺がんの発症率が1.38倍、女性の乳がん発症率が1.67倍に悪化したとのことです。

◆睡眠負債で高まる労災リスク

睡眠負債は、慢性的な長時間労働と表裏一体の関係にあります。企業にとっては、従業員の疾病発症率が高まるということは、自社の労災発生リスクが高まることを意味しています。万が一、自社の従業員が脳・心臓疾患や精神疾患を発症し、これが長時間労働によるものと主張されることになれば、企業はこの疾患の「業務起因性」や、そもそもの「安全配慮義務」を問われる事態ともなりかねません。

◆労働者と企業を守る「勤務間インターバル制度」

労働者の睡眠負債への特効薬として、今、期待されているのが「勤務間インターバル制度」(退社から出社まで一定時間を空け、労働者の休息時間を確保する制度)です。終業が遅くなった際、始業を後ろ倒しすることで、睡眠を含む休息時間の確保につながります。厚生労働省の有識者会議における資料によれば、この「勤務間インターバル制度」をすでに導入している企業および導入検討中の企業はわずか10%程度であり、普及はまだまだこれからですが、企業にとって要注目の制度と言えるのではないでしょうか。