正社員とパート社員の諸手当の格差はどのぐらい?
◆企業はどんな手当を設けている?
厚生労働省の「平成22年就労条件総合踏査」の結果によると、支給企業数が多い順に通勤手当、役付手当、家族手当、技能・技術(資格)手当、住宅手当となっています。規模に応じて設ける手当の傾向が分かれており、小規模企業では精皆勤手当・出勤手当が多く、大規模企業では住宅手当、調整手当、特殊勤務手当、単身赴任手当、別居手当、地域(勤務地)手当、特殊作業手当を設けるところが多くなっています。
◆正社員とパート社員では付く手当が異なる
独立行政法人労働政策研究・研修機構の「企業の諸手当等の人事処遇制度に関する調査」の結果によると、正社員とパート社員では付ける手当に違いが見られます。どちらも通勤手当と役付手当が上位2つですが、正社員では次いで家族手当、技能手当・技術(資格)手当、住宅手当が多いのに対し、パート社員では業績手当(個人、部門、グループ等)、技能手当・技術(資格)手当、精皆勤手当・出勤手当が多くなっています。
◆通勤手当の額はどのぐらいか?
上記の調査結果によれば、通勤手当の1人当たり支給額(月単位)は、正社員12,477円、パート社員7,710円となっています。支給額について、39.3%の企業が上限額を設けており、その平均額は34,260円ですが、上限額に関する規定は大規模企業ほど設けているところが多いという特徴が見られます。なお、正社員に通勤手当を支給する企業の割合が89.8%なのに対し、パート社員では76.4%と差が見られますが、この理由については、(1)交通費がかからない者を採用している(30.2%)、(2)交通費は基本給に含めて支給している(25.8%)、(3)自転車通勤のため算定困難(14.3%)となっています。来春施行の改正パート労働法では、短時間労働者であることを理由とする不合理な差別的取扱いが禁止されることとなり、通勤手当についても違いを設ける場合には合理的な理由が必要となります。自社の規定がどうなっているか、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
従業員の「デング熱感染」に備えて知っておきたいこと
◆「デング熱」ってどんな病気?
現在感染者が拡大しているデング熱は、ヒトスジシマカという蚊によってウイルスが媒介される感染症で、ヒトからヒトへと感染することはありません。ヒトスジシマカは、秋田県および岩手県以南に生息しているため、日本のほとんどの地域で感染するおそれがあると言えますが、感染しても発症しないこともあります。
◆デング熱にかかるとどんな症状が出る?
感染すると、3~7日後に突然38度以上の高熱が出て、頭痛のほか、目の奥の痛み・筋肉痛・関節痛を伴うことが多くあります。また、発熱後3~4日で胸やお腹に赤い痛みを伴う発疹が出て、次第に手足や顔面に広がります。通常は1週間ほどで熱が下がり回復へと向かいますが、まれに出血症状が起こり、重症化することがあります。この場合、適切な治療を受けないと死亡に至る可能性もあります。現在、デングウイルス特有の治療薬はなく、対症療法が基本となりますが、解熱剤としてはアセトアミノフェンを用いるのが一般的であり、出血傾向を増強するおそれがあるアスピリンの使用は避けます。
◆従業員が感染したら?
デング熱は、インフルエンザのようなヒトからヒトへの感染はなく、デングウイルスに感染したヒトスジシマカを介して感染します。そのため、社内で感染者が出たからと言って職場封鎖のような対策をとる必要はありませんが、感染者が蚊に刺されると他の人へと感染が拡大するおそれがありますので、蚊に刺されないようにする必要があります。予防に取り組む場合は、肌の露出を避けた服装をしたり虫よけスプレーなどを用いたりして刺されないようにするとともに、不要な水たまりをなくしてボウフラの発生そのものを抑え込むことが有効です。
中小企業における賃上げ等の取組み状況
◆6割強の企業が何らかの賃上げを実施
経済産業省が中小企業の雇用状況に関する調査、地域の中核を担う中堅・中小企業等における賃上げ等の取組みに関する調査の結果を発表しました。平成26年度にベースアップや賞与・一時金の増額等、何らかの賃上げ(正社員1人当たり平均賃金の引上げ)を行った企業の割合は64.5%(前年度比7.7ポイント増)でした。ベースアップに相当する賃上げを行った企業の割合は36.2%で、賞与・一時金の増額を行った企業の割合は48.0%でした。
◆賃上げを行った理由は?
賃上げを行った理由としては、「従業員の定着・確保」と回答した企業が最も多く75.7%、「業績回復の還元」が28.9%、「消費税率の引上げ」が21.3%で続いています。ちなみに、賃上げを行わなかった企業にその理由を聞いてみると、「業績の低迷」が71.7%で最も多く、次いで「賃金より従業員の雇用維持を優先」が33.1%、「原油・原材料価格の高騰」が33.0%となりました。上記の結果から、人手不足により賃上げせざるを得ない状況や、業績の低迷が賃上げを妨げていること、雇用維持への努力やコストアップの影響が見てとれます。また、地域別で見ると、賃上げを行った企業は、昨年度に比べ全国的に増加し、地域間の格差も少なくなっており、地方へ「経済の好循環」が着実に波及しつつある状況も見られたようです。
◆非正規社員の処遇改善の取組み例
同調査では、企業収益の改善を、ベースアップや初任給の引上げ等の賃金改善によって従業員に還元している事例はもとより、非正規社員の正規社員への転換や、子育て支援等の福利厚生の充実等、全国各地で各社が工夫して従業員の処遇改善に取り組んでいる事例も紹介されています。非正規社員の処遇改善への取組例として、賃金改善(パート社員を今以上に戦力化するため時給を約10%引上げ、優秀な人材の確保を目的にパート社員について3~10%程度賃上げ、他社の賃金動向を勘案し正社員を上回る1,500円のベースアップを実施)や、正規雇用への転換(会社側から積極的に働きかけて非正規社員を正規雇用へ転換)が挙げられています。賃金以外の処遇改善の取組み例としては、働きやすい職場づくり(介護が必要な家族がいる社員のために介護休業や介護休暇を法定の期間より大幅に拡充、女性を積極的に登用するため短時間勤務制度を導入、出産祝い金を2万円から10万円に増額)や、社員への慰労(売上好調等による労をねぎらうため、4泊6日のハワイ旅行を実施)が挙げられています。
改正安衛法で義務付けられた「ストレスチェック」に関するQ&A
◆84の「Q&A」
先の通常国会で成立した改正法の1つに「改正労働安全衛生法」(6/25公布)がありますが、これに関連して、厚生労働省から「改正労働安全衛生法Q&A集」が公開されました。改正項目のうち最も影響の大きいものは「ストレスチェック制度の創設」だと言われており、上記「Q&A集」でも84のうちの36(約43%)を占めています。
◆ストレスチェックに関するQ&A
以下では、Q&A(抜粋)をいくつか見てみましょう。
【全ての事業場が対象となるのでしょうか?】
→ストレスチェックの実施が義務とされるのは、従業員数 50 人以上の事業場とされており、50 人未満の事業場については、当分の間、実施が努力義務とされています。
【全ての労働者が対象となるのでしょうか?】
→ストレスチェックの対象労働者は、一般健康診断の対象労働者と同じく、常時使用する労働者とする予定です。なお、派遣労働者については、派遣元事業主において実施していただくことになります。
【どれくらいの頻度で実施すれば良いのでしょうか?】
→今後、労使や専門家のご意見を聴きつつ省令で定めていくことにしていますが、健康診断と同様に、1年以内ごとに1回以上実施していただくことを想定しています。
【健康診断のように、実施を外部機関に委託しても問題ありませんか?】
→問題ありません。委託により実施する際には、ストレチェックの結果を実施者から直接労働者に通知する必要があり、労働者の同意なく事業者に通知してはならないことなどの点に注意してください。
【ストレスチェックは面談形式で行うものですか?】
→労働者の心理的な負担の程度を把握するため、労働者自身が該当する項目を選択するチェックシート方式で行う検査です。面談形式に限ることは想定していません。
【健康診断のように、ストレチェックを実施した旨の報告を監督署に行う必要があるのでしょか?】
→ストレチェックの 実施状況を把握するため、事業者には、労働基準監督署にその実施状況について報告していただく仕組みを設けること考えています。
◆施行予定は来年12月?
今後は、平成27年2月~3月頃に省令・指針等が策定され、平成27年12月までに改正法(ストレスチェックの部分)が施行される予定です。