2014年9月号

「労働災害のない職場づくり」に向けた緊急対策
◆増加する労災死亡事故

厚生労働省が「平成26年上半期の労働災害発生状況」を発表し、死亡者数が437人(対前年比71人、19.4%増)、休業4日以上の死傷者数が4万7,288人(同1,625人、3.6%増)となり、昨年から大幅に増加したことが明らかになりました。
同省では死亡者の大幅増加を受け、「労働災害のない職場づくりに向けた緊急対策」を実施するようです。

 ◆「緊急対策」の内容

緊急対策の柱としては、以下の2点となります。
(1)業界団体などに対する労災防止に向けた緊急要請
・産業界全体に対する企業の安全衛生活動の総点検の要請
経済活動の一層の活発化が見込まれる中で労災の増加が懸念されることから、産業界全体(約250団体)に対し、企業の安全衛生活動の総点検と労使・関係者が一体となった労災防止活動の実施を要請。

・労災が増加傾向にある業種に対する具体的な取組みの要請
特に労災が増加している業種(製造業、建設業、陸上貨物運送事業、小売業、社会福祉施設、飲食店)に対しては、労災防止のための具体的な取組内容を示し、その確実な実施を要請。

(2)都道府県労働局、労働基準監督署による指導の内容
都道府県労働局と労働基準監督署において、労働災害防止団体などと連携した安全パトロールを実施するほか、事業場が自ら実施した安全点検の結果などを踏まえた指導などを実施。

 ◆ 労災発生状況のポイント

全産業における死亡者数(437人)を業種別に見ると、建設業(159人)、第三次産業(92人)、製造業(82人)、陸上貨物運送事業(55人)の順で災害が多発していたそうです。
建設業では、屋根、足場、はしご・脚立などからの「墜落・転落」と、建設機械などに「はさまれ・巻き込まれ」による死亡者が大幅に増加し、陸上貨物運送事業では、荷積み、荷下ろし時のトラックからの墜落をはじめとした「墜落・転落」の死傷災害が増加、第三次産業(小売業、社会福祉施設、飲食店)では、転倒や無理な動作による腰痛などが増加していたようです。
これらの増加要因として、同省は「景気回復で企業活動が活発になる中、人手不足で現場に経験の浅い労働者が増え、事故につながっている」としています。
今後、対象の業種には、自主点検票の送付や研修会の開催などの取組みの強化がなされていくようです。

人手不足の影響? 変わりつつある転職の常識
 ◆転職成功者の平均年齢が過去最高に

株式会社インテリジェンスが運営する転職サービス「DODA(デューダ)」が、同社のサービスを利用したビジネスパーソン約7万人に対し、「転職をした年齢」について行った調査によると、2014年上期の転職成功者の平均年齢は31.7歳(前期比0.6歳増)で、調査を開始した2007年以来、過去最高を更新したとのことです。
また、転職成功者の年齢割合では、「35~40歳」(13.9%)、「40歳以上」(11.2%)がそれぞれ上昇傾向にあり、35歳以上の転職成功者の割合は初めて25%を超えたようです。

 ◆転職経験の多い人の成功者が増加

また、同社が2013年度に「DODA(デューダ)」を通じて転職をした人の転職回数を調べた調査結果によると、「初めて」の人が53.0%で最多となり、次いで「2回目」(24.3%)、「3回目」(12.7%)の順になったようです。
年齢別に転職した人の割合を見ると、34歳以下では、転職経験が「初めて」で転職に成功した人が最多となっていますが、35歳以上では、2007年から2012年までは「2回目」が最多となり、2013年には「4回以上」が最多となったようです。
30歳以上で「3回目」「4回目以上」の割合が大きく増加しており、かつての「転職回数が多いと不利」という転職の常識が変わりつつあるようです。

 ◆転職回数の多さ、年齢の高さは厭わない

上記の調査結果を受け同社は、転職市場の活性化に伴い、企業は必要な人材の確保に頭を痛めており、経験や実績が合致していれば転職回数を問わないというケースが多くなっている、としています。
また、業績の好調を受け、事業課題を解決できる人材を採用したいと考える企業では、即戦力として期待される35歳以上の採用ニーズが高まりを見せているようで、これまでは転職回数が多い人の採用を敬遠する企業もありましたが、転職回数が多くとも、その在籍企業で出した成果がわかれば、「変化に柔軟で環境が変わっても成果が出せる」「自社でも同様に成果をあげてくれるのでは」という期待に繋がり採用に至っている、としています。

 

厚生年金未加入企業への指導が強化されます!
 ◆「加入逃れ」の防止

政府は、厚生年金保険の加入逃れを防ぐため、国税庁が持つ企業の納付情報から未加入企業を割り出し、指導を強化することを決めました。来春にも着手するとしています。
もし、加入指導されたにもかかわらず、これに応じない場合は、法的措置により強制的に加入となることもあるようです。

 ◆厚生年金の未加入問題とは?

厚生年金は、正社員や一定以上の労働時間(正社員の労働時間の概ね4分の3以上)があるパート従業員やアルバイトが強制加入となり、事業主は加入を義務付けられています。
しかし、従業員と折半となる保険料の負担を逃れようと届出をしない企業があり、問題となっているのです。
特に、パート・アルバイトを多く使用している企業の場合は、ルール通りに加入させると保険料負担が過大なものとなり、企業経営を圧迫するという事情があります。
ただ、企業が厚生年金に未加入の場合、従業員は保険料が全額自己負担の国民年金に加入するほかなく、厚生年金と比べ将来もらえる年金額も減ってしまいます。

 ◆これまでの調査と何が違うの?

“国税庁が保有するデータを使って、未加入企業を割り出す”ということです。これまで、厚生労働省は法人登記されている約449万社の中から未加入企業の調査をすすめていましたが、中には倒産していたり、休眠状態だったりする例も多くあることから、特定作業はスムーズにいきませんでした。
しかし、国税庁が保有するデータは「税金を納めている=実際に企業活動をしている」ということになり、特定作業が容易になるのです。

 

人手不足の業界には光明?外国人労働者活用
 ◆外国人労働者活用への期待が高まる

労働力人口の減少を補うため、現在、外国人労働者活用への期待が高まっています。
外国人活用をめぐっては、これまで研究者や経営者など、高度人材を中心に受入れ体制が整えられてきましたが、比較的単純な労働分野でも外国人の就労を進めていく方向で議論が進んでおり、建設、農業・製造業、家事支援、介護など人材不足が進む分野での外国人の活用が期待されています。また、技能実習制度の拡大も検討されています。

 ◆受入れの際の留意点

今後、多くの企業で外国人労働者を活用することが考えられますが、外国人の雇用には難しさもあります。
外国人を雇用する目的・必要性を十分に検討し、担当させる業務を決めていく必要がありますが、これらは、経営戦略・事業運営方針にも大きく関わる部分です。また、外国人特有の制度や諸官庁への手続き等もあり、遺漏のない取扱いのために注意が必要です。

 ◆トラブル防止に必要な知識

トラブルを防ぐためには、次のような知識も得ておくとよいでしょう。
(1)入管法(出入国管理及び難民認定法)
(2)労働関係法
(3)日常の労務管理
・文化、宗教
・生活様式、生活慣習
(4)コミュニケーション
・語学
・ビジネス慣習