「自動車運転死傷行為処罰法」が5月20日より施行されます
◆飲酒や薬物の影響で事故を起こした場合の罰則強化
「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(以下、「自動車運転死傷行為処罰法」という)は、昨年11月に成立し、「通行禁止道路の高速走行」やアルコールや薬物の摂取、特定の病気の影響で「正常な運転に支障が出るおそれのある状態」で運転し人を死亡させた場合に懲役15年以下、人を負傷させた場合に懲役12年以下とする規定が盛り込まれています。
現行刑法の「危険運転致死傷罪」の適用範囲が狭すぎるとして批判があったことを受け、刑法から自動車事故に関連する規定を分離して成立しました。
◆重罰化されるケースとは?
本法制定のきっかけは、栃木県鹿沼市の運転手がてんかん発作を起こし、登校中の小学生6人を死亡させた事故(2011年)や、京都府亀岡市の無免許運転により小学生等計10人がはねられて3人が死亡、7人が重軽傷を負った事故(2012年)です。
本法における「特定の病気」には統合失調症や双極性障害(躁うつ病)、てんかん、低血糖症、重度の眠気の症状を呈する睡眠障害等が含まれ、運転に必要な能力を欠いている場合や意識障害、運動障害を再発するおそれがある場合に適用されることとなっています。
また、「通行禁止道路の高速走行」としては、車両通行止め道路、歩行者専用道路、自転車および歩行者専用道路、一方通行道路の逆走、高速道路の逆走等が対象です。
さらに、アルコールや薬物の摂取により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で運転したケース、アルコールや薬物の影響で死傷事故を起こした場合にその影響をごまかすために事後にアルコールや薬物をさらに摂取したり現場を離れてアルコール濃度などを減少させたりしたケースも処罰の対象となります。
◆企業における対応
企業においては、従業員に対し新法の施行について周知するだけでなく、特定の病気に罹患している従業員の有無の確認や、該当者がいた場合の対応のほか、就業規則、自動車通勤や社用車運転に関する社内規程等の見直しを検討する必要があります。
従業員のメンタルヘルスと企業業績との関係
◆メンタルヘルスの状況は?
「企業における従業員のメンタルヘルスの状況と企業業績-企業パネルデータを用いた検証-」という調査研究の結果が、経済産業研究所から公表されました。
この調査研究は、従業員のメンタルヘルスの状況を明らかにするとともに、メンタル不調を理由に休職する従業員がどのような要因で増加しやすいのか、また、従業員のメンタル不調によって企業業績が悪化することはあるのか、といった点を検証しています。
分析結果からは、「従業員数300~999人規模の企業」、「情報通信業」、「週労働時間が長い企業」でメンタルヘルス不調が多く見られることがわかりました。
また、メンタル休職者比率の平均は0.4%程度で、年齢層別では20~30歳代の若年層で目立っています。メンタル退職者比率では、規模の小さい企業でその比率が高くなっています。これは企業における病気休暇制度の普及度合いが密接に関係しているのでしょう。
◆どのような要因で増加しやすいのか?
労働時間が短いほど退職者比率が高いようです。これは、企業が把握している労働時間と、労働者の実労働時間との間に乖離がある可能性を示しています。
一般的に、企業規模が小さくなるほど総労働時間は長く、さらにサービス残業も多い傾向にある一方で、病気休暇制度は十分に整っていないと考えられます。このため、企業が把握する労働時間は短いが、サービス残業のために実労働時間は長くなっている労働者が多いと予想される中小企業では、メンタルヘルス不全に陥ると退職につながる割合が高い可能性があるということです。
◆メンタル不調によって企業業績が悪化する
メンタルの不調が企業業績に与える影響では、メンタル休職者比率は2年程度のラグを伴って、売上高利益率に負の影響を与える可能性が示されました。
休職者比率が労働慣行や職場管理の悪さを測る指標になっていると解釈すれば、メンタルヘルスの問題が企業経営にとって無視できないものとなっていると言えるでしょう。
◆何が有効な対策なのか?
メンタルヘルスの悪化要因や、職場の対策として何が有効であるのか、悪化の程度と企業業績への影響の関係など、職場のメンタルヘルスについては、まだ明らかになっていない部分も多いと言われています。企業が経営戦略としてメンタルヘルス対策に乗り出すのは、まだまだ暗中模索の状況なのかもしれません。しかし、長時間労働の問題などは、後々の労使紛争の種ともなる問題ですので、企業は対策を検討する必要があります。
「休職後~職場復帰後の退職」に関する調査結果
◆休職者の42.3%が退職
うつ病などのメンタルヘルス不調により会社を休職した社員の42.3%が、休職制度の利用中や職場復帰後に退職しているとの調査結果が公表されました。
この調査は、独立行政法人労働政策研究・研修機構まとめたもので(2012年11月実施、5,904社が回答)、メンタルヘルスやがん、脳疾患、糖尿病等について、休職制度の有無や期間、退職・復職の状況などを調べる内容です。
◆退職率が高いのは30代以下
この調査結果によれば、過去3年間にメンタル不調を理由に休職制度を利用した社員の退職率は、全疾病平均(37.8%)を4.5ポイント上回っています。
最も退職率が高いのはがんの42.7%ですが、その中心は50代以上で、定年など病気以外の理由による退職も多数含まれているようです。
◆上限期間が短い企業ほど高い退職率
また、メンタル不調者の退職率は休職制度の上限期間が短い企業ほど高い傾向があり、上限が3カ月までの場合、59.3%が離職という結果になっています。2年6カ月超3年までの企業では29.8%となっており、約2倍の差があります。
復職後に短時間勤務などの試し出勤や、産業医による面談などのフォローアップを行っていない企業の退職率も、それらを実施している企業より高くなっています。
◆企業の対策は?
企業が最も対策を重視している疾病として挙げた割合が高いのは、メンタルヘルスが21.9%で、生活習慣病(8.9%)やがん(5.4%)を大きく上回っています。
次のような対策を実施することで、メンタル不調の発生を防いだり、復職に関する対策をとったりすることが主流となっていますので、検討してみてはいかがでしょうか。
・相談対応窓口の開設
・管理監督者および労働者への教育研修・情報提供
・衛生委員会等でのメンタル対策審議
・メンタルヘルスケア実務担当者の選任
・職場復帰における支援
・医療機関や他の外部機関等の活用
・産業保健スタッフの雇用や情報提供
・職場環境等の評価および改善
「介護」と「仕事」を両立させるために企業ができることは?
◆職場環境の整備が重要な課題に
近年、親や家族などの介護を理由として仕事を辞める「介護離職」が増加し、大きな問題となっています。総務省の平成25年発表によると、介護離職する方は年間10万人以上。この中には、企業内で中核的な人材として活躍する方も少なくなく、こうした人材の離職を防止するために、労働者が「介護」と「仕事」を両立できる職場環境の整備が、企業にとって重要な課題となっています。
◆政府の対応
団塊世代が70歳代に突入する2017年前後からは介護離職者のさらなる増加が予測されるため、厚生労働省では、介護と仕事を両立できる職場モデルの普及に着手し、労働者の継続就業を促進しています。具体的には、民間企業100社に報奨金を出し、同省が委託するコンサルティング会社が両立支援の制度化に向けた助言を行ってその結果を普及・啓発に活かすこと、また、介護離職防止のシンボルマークを制定して取組みの普及・推進を図ることなどが進められています。
◆企業ができること
このような動きの中、企業側も、介護と仕事の両立への支援を始めています。例えば、介護情報をまとめたハンドブックの作成・配布、セミナーの開催、両立のモデルケースの情報発信……。
介護は、いつ誰が直面するかわからないからこそ、企業側から早めに働きかけ、情報を提供し、社員との間で問題意識の共有を図ることが重要な取組みとなると言えます。社員にいざ介護の問題が発生した場合に慌てずに適切な対応をとることができるよう、取組みを始めるべき時期にきていると言えるでしょう。