2014年4月号

【要チェック! 平成26年度の厚生労働省方針】
◆ 労務管理見直しの契機に

厚生労働省の来年度方針が続々と明らかになっています。自社の労務管理の方向性を見直すうえで参考にしてみはいかがでしょうか。

◆ 高齢者の雇用等

65歳までの雇用が原則義務化され、高齢者の賃金設計とそれに伴う全体的な賃金制度の見直しを実施・検討する企業が増えています。また、中高年層社員に関する課題として、「介護休職・離職」があります。親の介護による休職・離職が最も多い年代層は50代ですが、40代から65歳までのすべての年代でも直面する可能性の高い課題です。厚生労働省は、65歳までの雇用義務化等を背景に、基礎年金の保険料納付期間を延長する考えを示しています。来年の通常国会での法改正を検討しているようです。

◆ 多様な正社員

「限定正社員」という呼ばれ方もしますが、職種、勤務地、労働時間等が限定的な「多様な形態による正社員」が注目されています。多様な形態の正社員の賃金・昇進等については、すでに実践している企業の例と今後の制度整備の動向等を見ながら、就業規則等の整備を検討していく必要があるでしょう。

◆ 行政指導の方向性

労働基準監督官の増員が計画されており、また、従来通り、サービス残業是正を始めとする割増賃金の適正な支払いや違法な時間外労働の是正等を実施していくとしています。

部下の長時間労働や年次有給休暇取得の状況を上司の人事評価に反映させるといった会社での取組みも必要でしょう。「働き方・休み方改善指標」や「働き方・休み方改善ハンドブック」などが作成されますので、これらも参考になるかもしれません。

◆ 障害者雇用の進展

平成25年度は、身体障害者、知的障害者、精神障害者のいずれも雇用者が増加しています。特に精神障害者が大きく増加し、大手企業では4年後の障害者雇用率に関する改正等をにらみ、発達障害を持つ方を採用したいというニーズが高まっています。

【「ブラック企業」は社員を採用できない!?】
◆ 世間を賑わすキーワードに

昨年末、「新語・流行語大賞トップテン」(ユーキャン)に『ブラック企業』が選ばれましたが、それに続き、日本の政治・経済・社会・文化・国際関係等をめぐる優れた論考を顕彰する「大佛次郎論壇賞」(朝日新聞社)に、『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(今野晴貴著/文春新書)が選ばれました。

◆ 学生から見た「ブラック企業」

株式会社日経HRと株式会社ディスコが今年1月に共同で実施した「2015年度 日経就職ナビ 学生モニター調査」(調査対象:来年3月卒業予定の大学3年生)では、「ブラック企業だと思う条件」を尋ねたところ、次のような結果となりました。

(1)残業代が支払われない(75.0%)

(2)労働条件が過酷である(65.0%)

(3)離職率が高い(58.0%)

(4)成果を出さないと精神的に追い込まれる(55.7%)

(5)募集条件と実働が著しく異なる(53.9%)

(6)セクハラ、パワハラがある(50.6%)

(7)給与金額が低すぎる(48.3%)

なお、この調査で「ブラック企業の就職試験は受けない」と回答した学生は62.5%に上りました。

◆ 学生が気になる「離職率」「平均勤続年数」

また、別の調査(2015年卒マイナビ学生就職モニター調査)では、学生が就職活動を進めるにあたって企業に公開してほしいデータして、「離職率」(59.4%)、「平均勤続年数」(51.6%)が上位にランクインしており、「ブラック企業」を念頭に置いていることがうかがえます。

◆ 労働条件などの見直しが必要

仕事は楽なことばかりではありませんし、実績のない新入社員を初めから好待遇で迎える企業ばかりではありませんが、労働条件が著しく劣悪な企業や、社員を使い捨てるような発想のある企業には、今後、人が集まらなくなる傾向が強まるでしょう。

厚生労働省も、若者を積極的に雇用・育成する企業については「非ブラック企業」のお墨付きを与えたり(若者応援企業宣言事業)、ハローワークを通じて大学生を採用する企業に対し離職率の公表を求めたりといった対策を講じています。

社員を採用するにあたり、今一度、自社の労働条件や労務管理体制について見つめ直してみてはいかがでしょうか。

【「育たない若手」問題をどのように解決するか?】
◆ 「若手社員の育成」に悩む企業は多い

団塊の世代の大量離職等により、「若手社員の早期育成」を課題に掲げる企業が多くありますが、思うように育たずに悩んでいる企業も多くあります。

では、若手社員の育成はどのように行えばよいのでしょうか。

◆ 「段階的な育成」を心掛ける

新入社員の段階では、仕事の知識や業務の手順を教えるだけでなく、組織人としてのマナーを身に付けさせたり、組織や職場に慣れさせたりすることで、まず、社会人としての基礎を固めることが必要とされます。

次に、入社2~3年の社員では、与えられた仕事を着実に遂行できるだけでなく、自ら気づき、自分なりの工夫をすることができるよう、経験の場を与え、結果を振り返ることでさらなる成長を促す機会を設けることが必要となります。

入社4年以降の社員については、将来マネージャーとして職場を管理する役割を担う人材に育てることも視野に、仕事をある程度任せながら必要に応じて指示を与えたりフォローしたりして、活躍の場を徐々に広げていくことが必要となります。

◆ 欠かせないフィードバック

このように、一口に「若手社員」と言っても、新入社員と数年の経験を積んだ社員とでは求められる役割が異なることから、どのようなアプローチによって育成を図るかという手段は異なります。

しかしながら、いずれの段階においても、経験から得た知識を生かしてステップアップしていく流れは変わりませんので、その都度経験を振り返ることが重要となります。

その際、より効果的なのは、若手社員1人に振り返らせたり考えさせたりする方法よりも、先輩社員や上司が成功(または失敗)の理由を問いかけ、若手社員に考えさせることでフィードバックする方法です。

先輩社員や上司にとっても、自分の仕事のやり方を見直す良いきっかけともなりますので、積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。

【社員の働きにも影響する「テクノ依存症」とは?】
◆ 今や社会問題に!

一般的に「依存症」というと、「アルコール依存症」や「ギャンブル依存症」、「買い物依存症」などが思い浮かびますが、近年、「テクノ依存症」というものが社会問題となりつつあるようです。

うつ病などのメンタルヘルスとの関連性や仕事への悪影響なども指摘されるなど、企業にとっても無視できない問題のようです。

◆ 「テクノ依存症」の特徴と症状

「テクノ依存症」は、コンピュータに過剰に適応したことによって発生する、精神的な失調症状を言うそうです。

インターネットやオンラインゲーム、スマートフォン等に没頭してしまうことが原因で発生する症状であり、「手元にコンピュータがないと不安に感じてしまう」「コンピュータに集中したいために人との会話が煩わしいと感じてしまう」など、いわば”現代病”とも言えそうです。

この症状が発生するのは、女性よりも男性のほうが多く、インターネットやオンラインゲームにのめり込みやすい若者に多いようです。

◆ 「テクノ依存症」による悪影響

この症状にかかると、「夜遅くまで起きているので朝なかなか起きられない」「友好な対人関係が築けない」など、実生活に大きな影響を及ぼすことになり、働くことに支障をきたしてしまうケースもあるようです。

◆ 企業による対策は?

企業にとっては、社員の私生活まで把握・管理することはできませんが、「日中眠そうにしている」「社内で人と接するのを避けがちである」「時間の感覚が希薄になっている」といった社員については、この「テクノ依存症」を疑ってみる必要があるかもしれません。

正しい治療方法もあるようですので、「テクノ依存症」だと判明した社員には、病院での治療を勧めることなども考えられます。