2015年3月号

平成27年度の健康保険料率・介護保険料率と今後の制度改革案
 ◆4月分から適用の見込み

通例3月分から見直しとなっている健康保険料率(協会けんぽ)ですが、平成27年度については、4月分(5月納付分)から変更される見込みです。これは昨年12月の衆議院解散に伴い、政府予算案の閣議決定の時期も後ろ倒しになると見込まれているためです。また、介護保険料率も、同様に4月分(5月納付分)から変更されるようです。健康保険料は、平成18年の健康保険法改正により、平成21年9月からは都道府県ごとの料率が設定されています。会社が健康保険適用事業所の届出を行っている都道府県のものが適用されます。なお、現在適用されている激変緩和率が引き上げられることにより、都道府県単位の保険料率が変更となる場合、支部により保険料率の変動パターンは異なってきますので、詳しくは協会けんぽから送られてくるチラシ・リーフレット等を参照してください。

 ◆介護保険料率が引下げ

平成27年度の健康保険の一般保険料率(被保険者全員が対象)の平均保険料率は、現行の10%が維持される見込みですが、一般保険料と合わせて、40歳以上65歳未満の被保険者から徴収される介護保険料率は下がるようです。現在(平成27年2月時点)、介護保険料率は1.72%ですが、平成27年4月(5月納付分)からは「1.58%」に引き下げられるようです。仮にこの通り変更となった場合には、被保険者の健康保険料(一般・介護)の負担額は、例えば次のようになります(労使折半前の額)。
〔年額〕70,342円 → 65,043円(5,299円の負担減)
〔月額〕5,862円 → 5,420円(442円の負担減)

 ◆今後の健康保険料関係の改革

また、現在、健康保険料については、「標準報酬月額の等級追加」や「一般保険料率の上限引上げ」が検討されています。この他にも細かい制度の変更が行われる予定ですので、常に最新の情報をチェックしておきましょう。

「有期雇用特別措置法」の特定有期雇用労働者に係る手続き
 ◆「有期雇用特別措置法」とは?

2013年4月施行の改正労働契約法により、有期雇用契約を反復更新して契約期間が5年超となった有期雇用労働者には「無期転換申込権」が発生することとなりました。有期雇用特別措置法は、特定の有期雇用労働者について、契約期間が5年超となった場合でもこの無期転換申込権が発生しないこととするものです。本法は、2014年11月21日に臨時国会で成立、同月28日に公布され、2015年4月1日より施行されます。

 ◆「特定有期雇用労働者」とは?

本法特例の対象となる労働者は、(1)一定の高度専門的知識等を有する有期雇用労働者と、(2)定年後に有期契約で継続雇用される高年齢者です。(1)は、年収1,075万円以上の一定の国家資格等を有する有期雇用労働者で、「5年を超える一定期間内(上限10年)に完了することが予定されている業務」に就く者です。また、(2)は、再雇用や継続雇用の対象として、定年を過ぎて有期契約で雇用される者です。

 ◆対象労働者と認定されるための手続き

(1)については「第一種計画認定申請書」および対象労働者の特性に応じた雇用管理に関する措置を実施することがわかる資料(労働契約書、就業規則等)を、また、(2)については、「第二種計画認定申請書」および対象労働者の特性に応じた雇用管理に関する措置を実施することがわかる資料(契約書・賃金規程・就業規則等)を、管轄の労働局長に提出します。いずれも基本指針に沿った対応がとられると認められた場合に認定されることとなります。なお、措置の実施については、労働局長に対する報告の徴取により確認がなされることとなります。

 ◆対象労働者への対応

省令により、書面の交付による労働条件の明示が定められ、明示すべき内容も列挙されますが、実務上は、モデル労働条件通知書を参考に作成し、対象労働者に内容を説明したうえ、交付することが必要です。認定申請については、事業主に代わって社会保険労務士が事務代理をすることもできますので、書類の作成や手続きについて不安があれば、ご相談ください。

経理実務が変わる!税務関係書類のスキャナ保存適用の緩和

◆スキャナ保存制度の概要

現在、税務署長の承認を受けた者は、国税関係書類について、一定の要件に従い、スキャナにより記録された電磁的記録を保存することをもって、当該国税関係書類の保存に代えることができることとされています。平成17年度に創設されたこの制度は、見積書や注文書といった一般書類をはじめ、納品書や約束手形、資金移動等直結書類、契約書・領収書といった重要書類(3万円未満)をスキャナ等で記録し電磁的に保存することが可能というものです。

しかし、平成25年までの承認件数は133件と、まだ一部でしか導入されていません。

 

◆改正で適用要件が大幅に緩和

平成27年度の税制改正により、次の見直しが行われました。

・適正な事務処理を実施することを条件に、重要書類(契約書・領収書)の金額基準の廃止(現行3万円未満)

・重要書類について、業務処理後の関係帳簿の電子保存の承認要件の廃止

・入力者等に関する情報の保存や電子署名の要件の廃止

・重要書類以外の書類について、書類の大きさに関する情報の保存の不要、グレースケール(白黒)での保存可能

また、今回の改正で、国税関係書類だけでなく、地方税関係書類の電子的保存も可能になりました。

 

◆実務における留意点

改正後の制度は、本年930日以後に行う承認申請について適用になりますが、その3カ月前に税務署(地方税については地方団体の長)に申請書を提出する必要があります。

本改正は、電子保存によるコスト削減や事務の簡略化を図る観点から見直しが行われました。適用要件が緩和されることで、今後は、電子保存が標準になるのではとも言われています。

今後、各コピー機器会社等から、新機能を掲載した商品が続々と出てくると思われますので、自社に合った機器をじっくり選定し、効率的で正しい実務ができることを期待しましょう。

 

高年齢者の雇用状況はどうなっている?~「60代の雇用・生活調査」より~
◆60代男性の就業が増加

平成25年度の改正高年齢者雇用安定法施行により、高年齢者に対する雇用確保措置が企業に求められているところですが、この度、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が「60代の雇用・生活調査」の結果を公表しました。平成21年の調査と比べると、男性高年齢者の就業について、以下のような結果がみられたそうです(55歳時に雇用者であった人の数を100として数値化)。
・65~69歳層における定年後継続雇用の割合の上昇(17.2→24.0)
・定年直後に無業であった割合の低下(60~64歳層:18.2→13.0/65~69歳層:28.4→18.4)
・65~69歳層で55歳時と同じ会社で勤務している割合の上昇(6.1→10.8)

 ◆賃金の変化と会社の説明対応

また、定年後雇用継続の前後では、8割程度は職業(大分類)に変化はなかったとしています。一方、仕事の内容については、責任の重さが「変わった」とする人が35.9%、「変わっていない」とする人が50.3%でした。雇用継続の前後で賃金が「減少した」とする人は8割程度に上り、賃金減少幅は2~5割が過半数を占めています。賃金低下に関する会社からの説明の有無等(複数回答)については、「特に説明はなかった」が27.1%、説明があった場合の内容としては「雇用確保のために再雇用するのだから賃金低下は理解してほしい」が36.6%で最も多く、「在職老齢年金や高年齢雇用継続給付が出るので収入は変わらない」(16.5%)が続いています。

◆高年齢者の就業意欲は高い

60歳を過ぎても会社勤めをする人は、今後ますます増えてくることが予想されます。上記の調査では、現在60~64歳層で仕事をしている人に65歳以降に仕事をする意向を尋ねたところ、「仕事はしたくない/仕事からは引退するつもり」と回答した人は1割程度にとどまったそうです。経済的理由等により、高齢になってからも就業意欲を持っている層は少なくないと言えそうです。高年齢社員の雇用や生活にまつわる状況を見極めながら、引き続き企業も今後の対応を考えていく必要がありそうです。