「マイナンバー制度」対応で必要となる準備事項とは?
◆来年1月から番号利用がスタート
今年10月からマイナンバー(個人番号)の市区町村から全国民への通知が開始され、来年1月からはマイナンバーの利用が始まります。制度がスタートすると、企業は給与所得の源泉徴収票の作成や社会保険料の支払い等においてマイナンバーの取扱いが必要となりなますが、日本経団連では、3月9日に「マイナンバー制度への対応準備のお願い」という文書を発表し、主な準備事項を示しました。
◆必要となる準備事項の内容は?
上記文書では、制度開始に向けて企業は次の事項を行わなければならないとされています。
1.対象業務の洗い出し
(1)マイナンバーの記載が必要な書類の確認
・給与所得の源泉徴収票、支払調書等の税務関係書類
・健康保険・厚生年金保険、雇用保険関係書類
(2)マイナンバー収集対象者の洗い出し
・従業員等(従業員に加えて役員やパート・アルバイトを含む)とその扶養家族
・報酬(講師謝礼、出演料等)の支払先
・不動産使用料の支払先
・配当等の支払先
2.対処方針の検討
(1)組織体制の整備
(2)社内規程の見直し
(3)担当部門・担当者の明確化等
(4)身元(実在)確認・番号確認方法に係る検討、明確化等
(5)物理的安全管理措置の検討(区域管理、漏えい防止等)
(6)収集スケジュールの策定
3.マイナンバー収集対象者への周知
(1)収集までのスケジュールの提示(収集開始時期等の確定)
(2)教育・研修
(3)利用目的の確定・提示
4.関連システムの改修(自社にてシステム構築を行っている場合)
(1)人事給与システム
(2)健康保険組合システム
5.委託先・再委託先の監督等
(1)委託先の選定
(2)必要かつ適切な監督を行うための契約の締結(取扱い状況を把握する方法を含む)
中小企業の経営トップが考える2015年の経営施策とは?
◆経営活動に影響を与えそうな要因
産業能率大学が行った「2015年 中小企業の経営施策」という調査(従業員数6人以上300人以下の企業経営者635人が調査対象)によると、中小企業の経営トップは、今年の経営活動に影響を与えそうな要因として、次のことを想定しています。
(1)人材の不足(46.5%)【前年比14.5ポイント増】
(2)国の政策の変化(44.1% )
(3)消費税率の引上げ(43.6%)
(4)原材料コストの増大(29.3%)
(5)業界構造の変化(28.2%)
第1位となった「人材の不足」は、2010年の調査開始以来、過去最高となったそうです。
また、2014年の人員確保について「例年より難しかった」との回答が半数を超え、今年取り組みたい施策について尋ねた結果も、「従業員の新規採用」が前年比3.8ポイント増となっていますので、人材不足はまだまだ続きそうです。
◆強化している採用施策
今年の新卒採用については、4社に1社が実施を検討しており、年々増加傾向にはあるようですが、実際に人材が確保できたのは約半数にとどまるとの結果が出ています。こうした環境下、中小企業が強化している採用施策は次のようになっており、即戦力確保の意向が目立ちます。
(1)中途採用(33.4%)
(2)大卒採用(21.4%)
(3)高卒採用(15.1%)
(4)女性採用(13.4%)
◆2015年に取り組みたいこと
経営者として今年取り組みたいことについて尋ねた結果から、昨年と比較して増加傾向にある項目を抜き出すと次のようになっています。
・新規事業への進出
・従業員の教育・育成
・従業員の新規採用
・従業員満足度の向上
・女性の活躍推進
人事・労務面での課題に取り組みたい意向が表れているようです。労働環境や法制度の変更が今後も予定されていますので、こまめに情報を収集しながらそれぞれの課題に取り組んでいきたいものです。
施行直前!「改正パートタイム労働法」への準備は万全ですか?
◆いよいよ4月から施行
今年4月から、改正パートタイム労働法が施行されます。短時間労働者(パートタイム労働者)を雇用されている事業主の方、準備は万全でしょうか。パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)の対象であるパートタイム労働者とは、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」とされています。そして、「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」等、呼び方は異なっても上記の条件に当てはまる労働者であれば、「パートタイム労働者」となります。
◆適用される法律
パートタイム労働者は、「労働条件の明示」「就業規則の作成」「解雇予告」「母性保護等」「退職時等の証明」「健康診断」「割増賃金の支払い」「最低賃金」「年次有給休暇」等について、パートタイム労働法だけではなく、通常の労働者と同様に、労働基準法・労働契約法・労働安全衛生法・最低賃金法が適用されます。
◆改正パート労働法の概要
改正の概要は以下の通りとなっています。チェックリストなどを作成し、漏れのない対応ができるよう注意しましょう。
(1)正社員と差別的取扱いが禁止されるパートタイム労働者の対象範囲の拡大
「職務内容が正社員と同一」、「人材活用の仕組み(人事異動等の有無や範囲)が正社員と同一」に該当すれば、有期労働契約を締結しているパートタイム労働者も正社員と差別的取扱いが禁止されます。
(2)「短時間労働者の待遇の原則」の新設
パートタイム労働者の待遇と正社員の待遇を相違させる場合は、その待遇の相違は、職務の内容、人材活用の仕組み、その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならないとする、広くすべての短時間労働者を対象とした待遇の原則の規定が創設されます。
(3)パートタイム労働者を雇い入れたときの事業主による説明義務の新設パートタイム労働者を雇い入れたときは、実施する雇用管理の改善措置の内容について、説明しなければならないこととなります。
(4)パートタイム労働者からの相談に対応するための事業主による体制整備の義務の新設
パートタイム労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備しなければならないこととなります。
ついに預金口座にも!?「マイナンバー法改正案」の概要
◆今国会で成立の見込み
政府は、国民一人ひとりに番号を割り振るマイナンバー制度の適用範囲を広げる「マイナンバー法改正案」を閣議決定し、国会に提出しました。
この法案は、希望者を対象に2018年から預金口座に番号を付与し、個人の資産を把握することで、事務の効率化や税金・社会保険料の徴収等に役立てるねらいがあります。また、乳幼児の予防接種記録やメタボ検診の情報の管理など、医療情報への活用も一部で認められます。
本案は、今国会で成立する見通しです。
◆銀行口座への登録は任意
マイナンバーで預金資産を管理することで、事務の効率化や税の徴収の他、脱税や生活保護の不正受給といった疑いのある人の口座情報を得やすくなり、公正な納税につながるといった効果が期待されています。2018年時点では、銀行口座のマイナンバー登録に強制力はなく任意とされており、新規に口座を開設する際に申請用紙にマイナンバーを記入する欄が設けられたり、既存の口座には来店時に登録を促したりといった対応がなされます。
◆医療分野では予防接種とメタボ検診の情報管理のみ
一方、医療情報への活用については、自治体が扱う予防接種の記録や健康保険組合が扱うメタボ検診の情報に限り、マイナンバーの利用が認められるようになるとのことです。乳幼児の予防接種記録を管理することで転居先の市区町村に引き継げるようにしたり、メタボ検診については転職をしても情報を健康保険組合が引き継いだりすることで、過去のデータを踏まえた保健指導を行うことが可能となります。
◆今後の検討課題
マイナンバーで資産情報を管理されることに強い抵抗を持つ人は多くいます。また、銀行に膨大な事務負担がかかることで対応することができなくなるとの懸念もありますが、政府は進捗状況をみて2021年をめどに義務化するかどうかを判断する方針です。医療分野では、個人情報漏洩の懸念から、カルテの管理にマイナンバーを適用することについて今回は見送られていますが、2018年度以降はカルテに加えて診療報酬明細書(レセプト)などの管理にマイナンバーを活用し、医療費の削減につなげることが検討されています。