ブラック企業・ブラックバイトに関する相談事例と行政の対策
◆過去最多の相談件数
連合は、昨年12月に「全国一斉労働相談キャンペーン」を実施し、その一環として「労働相談ホットライン」を行いましたが、先日その結果が発表されました。今回の電話相談は、いわゆる“ブラック企業”や“ブラックバイト”に関することを中心に実施されましたが、2日間の集中期間を設けて行ったキャンペーンの中では過去最多の相談件数(979件)となったそうです。
◆具体的な相談事例
それでは、公表された具体的な相談事例を見ていきましょう
【正社員】
1 日の勤務時間が10~12 時間と長時間労働を強いられている。有給休暇もほとんど取れない状態。それに加え、上司からの暴言や嫌がらせもある。上司に「これ以上サービス残業はできない」と伝えたら、ますますパワハラがひどくなった。(40 代女性、医療・福祉関連)
【パート】
パートで勤務していたが、会社から「仕事がなくなったので辞めてくれ」と言われ、即日解雇。解雇理由書を求めたが応じてくれず、解雇予告手当もない。雇用契約書ももらっていない。(60代男性、運輸業)
【アルバイト】
アルバイトで塾講師をしている。授業以外の仕事もしているが、その分の賃金が支払われない。退職を申し出たが、「来年の3月までは辞めさせない」と言われている。(20代男性、教育・学習支援業)
【派遣社員】
休日に強制的に勤務指定され、時間外労働も強制。休暇もほとんど取れない。派遣元担当者に相談したが、相談したことが派遣先に知られてしまい、派遣先から「使えない」「ここで働けなくなるよ」など、暴言によるパワハラを受けるようになった。(30代男性、製造業)
◆「ブラックバイトに」関する対策
ここ最近、大きな話題となっている「ブラックバイト」ですが、厚生労働省と文部科学省は、昨年末に学生アルバイトの多い業界団体に対して、労働条件の明示・賃金の適正な支払い・休憩時間の付与などの労働基準関係法令の遵守のほか、シフト設定などの課題解決に向けた自主的な点検の実施を要請しました。厚生労働省では、今後も大学生などに対する関係法令の周知・啓発や相談への的確な対応など、学生アルバイトの労働条件確保に向けた取組みを強化していくそうです。
まだまだ使える!「雇用促進税制」の概要
◆「雇用促進税制」とは?
平成26年4月1日から平成28年3月31日までの期間内に始まる事業年度(以下、「適用年度」という。個人事業主の場合は平成27年1月1日から平成28年12月31日までの各年)において、雇用者増加数5人以上(中小企業は2人以上)、かつ、雇用増加割合10%以上等の要件を満たす企業は、雇用増加数1人当たり40万円の税額控除(当期の法人税額の10%(中小企業は20%)が限度)を受けることができます。
◆地方拠点強化税制における雇用促進税制とは?
地域再生法に基づき都道府県知事が認定する「地方活力向上地域特定業務施設整備計画」を実施する事業主においては、以下の税制優遇を受けることができます(ただし、法人全体の雇用者の純増数を上限)。
(1)地方活力向上地域で特定業務施設を整備し雇用者を増加させた場合…法人全体の雇用増加率が10%以上の場合には「当該特定業務施設における増加雇用者1人当たり50万円の税額控除」、法人全体の雇用者増加率が10%未満の場合には「当該特定業務施設における増加雇用者1人当たり20万円の税額控除」
【拡充型】適用年度に雇用保険一般被保険者の数を5人以上(中小企業の場合には2人以上)増加させることが必要。
(2)東京23区から地方活力向上地域に特定業務施設を移転して整備する場合には「拡充型の税額控除額に加え、当該特定業務施設における増加雇用者1人当たり30万円の税額控除」…(1)と併せて1人当たり最大80万円の税額控除
【移転型】雇用を維持していれば最大3年間継続。
◆対象となる事業主の要件
要件は、原則として以下の通りです
(1)青色申告書を提出する事業主であること
(2)適用年度とその前事業年度に、事業主都合による離職者がいないこと
(3)適用年度に雇用者(雇用保険一般被保険者)の数を5人以上(中小企業の場合は2人以上)、かつ、10%以上増加させていること
(4)適用年度における給与等の支給額が、比較給与等支給額以上であること
(5)風俗営業等を営む事業主ではないこと
なお、適用を受けるためには、あらかじめ「雇用促進計画」をハローワークに提出する必要があります。
実効性のある制度として再注目!
「永年勤続表彰制度」を見直してみませんか?
◆古典的でも効果は大きい「永年勤続表彰制度」
多くの企業で人材不足問題への対応が急務となっているなか、“人材の確保”や“モラールの向上”といった観点から福利厚生制度の重要性が増していますが、特に効果が大きい制度として注目を集めているのが、「永年勤続表彰制度」です。「終身雇用時代でもあるまいし、今どき古くさい」と思われるかもしれませんが、実は、特に中堅・中小企業においては、同制度を設ける企業は増加傾向にあるようです。公平感があること、会社への帰属意識・一体感を高める効果があることが、その大きな理由となっています。
◆制度の効果を高めるために
せっかく制度を設けるのであれば、より効果を高めるために、戦略的な“仕掛け”も施したいものです。かつては副賞として、名前入りの楯や時計、万年筆といった記念品を贈るのが一般的でしたが、あまり歓迎されませんでした。そこで現在は、社員のやる気向上につなげるために、カタログギフトや商品券・旅行券など、選択の自由度が高いものを贈るのが主流になっています。例えば、旅行券と休暇をセットとしてリフレッシュに役立ててもらうことをねらう企業も増えています。
◆税務上の注意点
永年勤続表彰の記念品等の支給にあたっては,(1)利益の額が勤続期間等に照らして社会通念上相当と認められ、(2)勤続年数が概ね10年以上である人を対象にしており、(3)2回以上表彰を受ける者は前の表彰から概ね5年以上の間隔が空いている場合には、給与として課税しなくてもよいことになっています。この要件を1つでも満たさない場合、支給した記念品等の時価が給与として課税されます。なお、現金や商品券等で支給する場合には、その全額(商品券等の場合は券面額)が給与として課税されます。
均等法・育介法改正で「マタハラ防止」を企業に義務付けへ
◆男女雇用機会均等法、育児・介護休業法の改正
政府は、今国会に提出する男女雇用機会均等法と育児・介護休業法の改正案の中に、女性らが妊娠や出産を理由に不利益を被るマタニティーハラスメント(マタハラ)の防止策の企業への義務付けを盛り込む方針を明らかにしました。
2017年4月からの実施を目指すとしています。
◆就業規則へ盛り込むことなどを義務付け
具体的には、マタハラ行為を禁止する規定を就業規則に盛り込むことや相談窓口の設置、社員研修の実施などを企業に求めることとします。
派遣社員も防止策の対象とし、違反した企業名について公表する方針です。
◆最高裁判決や厚労省調査を受けて判断
現行の男女雇用機会均等法でも、事業主に対して、妊娠や出産を理由にした解雇や降格は禁止していますが、職場の上司や同僚が「長く育休を取得されると迷惑」「辞めたらどうか」などと発言するのは、事業主が発言を指示した場合などを除けば違法とはなっていません。
マタハラをめぐっては、2014年10月に、妊娠による降格が男女雇用機会均等法に違反するという最高裁判決が出ています。また、昨年9~10月に厚生労働省が実施した調査では、妊娠や出産、育児をした女性のうちマタハラを受けた人の割合は、派遣社員48.7%。正社員21.8%、契約社員13.3%、パート5.8%となっており、経験したマタハラで最も多かったのが「『迷惑』『辞めたら?』など権利を主張しづらくする発言」でした。
政府は、現行法のままでは、上司や同僚の言動で休みを取りづらい雰囲気が作り出されている実態には対応しきれないと判断し、昨年11月に発表した“一億総活躍社会”実現への緊急対策で「妊娠、出産などを理由とする不利益取扱いを防止するため法制度を含め対応を検討する」と盛り込んでいました。
◆“一億総活躍社会”の実現に向けた政策の一環
マタハラ対策の強化は、安倍政権が掲げる“一億総活躍社会”実現に向けた政策の一環です。働く女性が妊娠・出産をしやすい労働環境をつくり、出生率1.8の実現につなげたい考えです。どのような言動がマタハラにあたるかは厚生労働省令で詳細を定めるようですが、上司や同僚による嫌がらせ発言が対象となる見込みです。