2019年4月

社内失業者の実態~エン・ジャパンの調査から

エン・ジャパン株式会社は、同社が運営する人事向け総合情報サイト『人事のミカタ』上でサイト利用企業を対象に「社内失業」に関する実態調査を行いました。その結果、予備軍を含め「社内失業者がいる」と回答した企業は23%にも上っています。下記、調査結果を見ていきます。

◆社内失業とは?

社内失業とは、「労働者が正社員として企業に在籍しながら、仕事を失っている状態」のことをいいます。本調査では、約7割の人がこの言葉を知らない、もしくは名称は知っているが意味は知らないと答えています。実際、社内失業者がどれほどいるのか気になるところですが、2011年の内閣府調査によれば、全国の労働者の8.5%にあたる465万人が該当しました。

◆社内失業者がいる企業は、予備軍を含めて23%!

今回の調査では、現在、社内失業状態の社員がいると答えた企業は23%(いる:6%、いる可能性がある:17%)に上っています。

業種で見ると「メーカー」(28%(いる:7%、いる可能性がある:21%))が最多で、次いで流通・小売り関連(いる:5%、いる可能性がある:20%)、「サービス関連」(いる:8%、いる可能性がある:16%)と続いています。

企業規模別では、「1,000名以上」が41%(いる:11%、いる可能性がある:30%)と顕著で、規模が大きいほど、社内失業者数も増えていく傾向にあるようです。

社内失業者の属性で見ると、年代は「50代」で57%、「40代」で41%、「30代」で26%。役職は「一般社員クラス」が80%と圧倒的でした。職種は「企画・事務職(経営企画、広報、人事、事務 他)」46%と最多で、次いで「営業職(営業、MR、人材コーディネーター他)」で31%となっています。

◆社内失業者発生の要因は「該当社員の能力不足」、企業の対策は「再教育」

社内失業者が発生する要因として、「該当社員の能力不足」(70%)が最多で、次いで、「該当社員の異動・受け入れ先がない」(51%)「職場での人間関係が悪い」(26%)が続きます。

企業としての今後の対策としては、「該当社員への教育」(35%)が最多で、次いで「特に何もせず、状況を見る」(22%)「職階の見直し」(21%)「自己啓発(学び直し等)の支援」「賃金体系(基本給)の見直し」(いずれも20%)を検討しているとしています。

“仕事をしている風のまま、定年を目指しているように感じる。やる気の無さや意識の薄さをどのように改善させていけばよいのかが課題である”“解雇したいが、モンスター社員なので、訴訟を起こされる可能性があり、解雇できない”“成果が出なくても他の人と同じ基本給がもらえるので、比べたとき周りの士気を下げてしまう可能性がある”―社内失業についての具体的な悩みや課題の声が上がっており、企業は手を施そうと検討・対応するも、社内失業者本人の改善意識が希薄で対応には苦慮しているようです。

【参考】エン・ジャパン「800社に聞いた「社内失業」実態調査」

https://corp.en-japan.com/newsrelease/2019/16439.html

 

インターンシップ 中小企業での導入判断は慎重に

 

◆ルールは当面現状維持

就活ルールをめぐっては、経団連が今の大学2年生以降(2021年春入社)についてはルールを作らないと決定し、代わりに政府の主導により、企業説明会は大学3年生の3月、面接は4年生の6月解禁としている現行ルールを、当面維持する方針となっています。

政府は、インターンシップについても、「就業に直接結び付けるインターンシップは禁止」(罰則などはありません)とすることを経済界に要請する方針です。

 

◆中小企業での導入判断は慎重に

経団連が2018年に実施したアンケートでは、広報活動の解禁前のインターンシップについては、88.2%の会員企業が実施していました。現在も解禁前の選考を兼ねていたり、会社説明会と内容が変わらなかったりするインターンシップは禁じられていますが、実際には「採用とは無関係」という建前は形骸化しているようです。インターンシップは学生の夏休みに合わせて行う企業が多く、募集・申込みは3年生の6月が最も多いため、これから山場を迎えます。

ただし、他の人がしているのでとりあえず申し込むというような学生もいるようですし、中小企業ではインターンシップをきっかけとして採用につながる件数はそれほど多くないのが実際のようです。企業としては新しい人材の発掘の場としたいところですが、学生側では「今後の就職活動に役立てたい」との気持ちが強いと思われます。継続して実施していく中で教育機関とのつながりが充実し、結果的に良い人材の獲得につながる可能性が増えると考えたほうがよいでしょう。中小企業でインターンシップを行うかどうかは慎重に判断すべきでしょう。

 

◆法的リスクも

インターンシップの内容などから インターンシップ生が労働者に該当する場合があります。労働者にあたる場合には労働関係法規(労働基準法をはじめ、男女雇用機会均等法、最低賃金法、労働安全衛生法、労災保険法など)が適用されることになります。また、インターンシップ中の事故や機密漏えい、ハラスメント等についても会社は対応を検討しておく必要があります。教育機関との覚書や学生用の誓約書など、書式も必要となるでしょう。

インターンシップを行うことが普通のことになりつつあり、メリットもある一方で、その実施に際しては事前準備が大切です。

 

「春眠暁を覚えず」の季節、『睡眠』について考えてみましょう

 

◆「睡眠」の量と質が及ぼす影響

突然ですが、皆さん、睡眠はしっかり取れていますか? 最近の陽気も手伝って、日中、ついウトウトしてしまうことはないでしょうか?

良質な睡眠が取れなかったり、必要な睡眠時間が確保できなかったりすると、心身のバランスが崩れてしまい、肥満や内臓疾患、うつ病等の精神疾患を発症するリスクが高まります。また、就業中に睡魔に襲われれば、業務効率の低下や作業ミスの増加、サービスレベルの低下といった問題が生じ、生産性にも悪影響を及ぼします。睡眠不足を原因とした経済損失は、実に15兆円にものぼるといわれています。

 

◆健康経営の重要テーマにもなっている「睡眠」

「睡眠」は、現在、健康経営を考える上での重要なテーマの1つともなっています。

健康経営とは、従業員の健康管理・健康増進を経営課題としてとらえ、その実践を図ることで企業の生産性向上を目指そうとする経営手法のことです。企業が取り組むべき様々な健康事業の中でも、「睡眠」は、多くの疾患を予防することができ、また企業の生産性の向上が期待できる重要な要素として、その量や質の向上にいかにアプローチするか、関心を集めています。

 

◆「睡眠」への企業の取組み事例

睡眠の量と質の向上を図るため、近時は、従業員向けに睡眠についての研修を実施する企業も増えてきました。睡眠のメカニズムといった基礎知識と、快眠のための体操・リラックス法を学ぶことで、睡眠の質・量を高めることがねらいです。

また、株式会社CRAZYの「睡眠報酬制度」(1週間の中で、6時間以上の睡眠を5日間確保した社員に報酬を渡す制度)は話題となりました。

関心の高まりもあって、「睡眠」についての様々な取組みが始まっています。健康経営の実現のための第1歩として、皆さんも、改めて「睡眠」について考えてみませんか。

一般化するリファラル採用と、その留意点

 

◆「リファラル採用」とは

リファラル採用(referral recruiting)をご存知でしょうか。いわゆる縁故採用の一種で、「自社従業員に、採用候補者を紹介してもらう採用(制度)」をいいます。

◆最新調査結果

株式会社リクルートキャリア「リファラル採用で声をかけられた人の実態調査」によれば、「リファラル採用の制度がありますか」という質問に対し、「制度があり、推進している」が48%、「制度があるが、推進していない」が23%と、回答企業の7割以上で社内制度化されています。

ほかにも、「知人の会社に誘われた人のうち、実際に選考を受けた人」が54.8%にのぼるなど、広く行われている結果となりました。「リファラル採用」という言葉が広まったのは最近のことですが、従業員(以下「紹介者」)の紹介による採用は、珍しいことではありません。

◆リファラル採用のメリット

企業にとっては、リファラル採用のメリットとして、「採用のミスマッチが起こりにくい」(紹介者が詳細に企業説明をするため)、「定着率が高い」(紹介者による入社後のアフターフォローのため)、「採用コストが低い」、「通常の採用活動では応募しないような人材を採用できる」、などが挙げられます。

一方、デメリットとしては、「不採用とした場合の、人間関係悪化」、「紹介者が退職した場合の、採用者の意欲低下」などが懸念されることがあります。

◆紹介者へのインセンティブの相場

採用に至った場合、紹介者にインセンティブ(成功報酬)を支払う場合もあります。

エン・ジャパン株式会社「リファラル採用(社員紹介)意識調査」によれば、リファラル採用実施企業の44%が、紹介者へインセンティブを支給しています。また、その支給額は「3万円から10万円」が最多(52%)とのことです。

◆インセンティブ支給の留意点

紹介者にインセンティブ支給の際は、「賃金として支払う必要がある」点に留意しましょう。「被用者で当該労働者の募集に従事するもの」に「賃金、給料その他(略)報酬」以外を支払うことは、職業安定法40条(報酬の供与の禁止)違反となるからです。

リファラル採用を社内制度化するにあたっては、労働局等に相談のうえで、就業規則や賃金規程に明文化するとよいでしょう。

【参考】

リクルートキャリア「リファラル採用で声をかけられた人の実態調査」

https://www.recruitcareer.co.jp/news/pressrelease/2018/181101-01/

エン・ジャパン「リファラル採用(社員紹介)意識調査」

https://corp.en-japan.com/newsrelease/2017/11266.html