求人票と労働条件の食い違いが減少
◆4年連続の減少
厚生労働省の発表によると、求人企業がハローワークに提出する求人票の内容と実際の労働条件が食い違っている件数が、6,811件(2018年度)となり、前年度から20%も減少したそうです。2014年が1万2,252件だったそうなので、ほぼ半減となっています。
◆食い違いの内容
食い違いの内訳をみると、多い順から「賃金」「就業時間」「職種・仕事の内容」となっており、産業別では多い順から「医療・福祉」「卸・小売り」「製造業」となっています。
◆改正職業安定法 2018年1月1日施行
このように食い違いが減少している理由のひとつに、職業安定法の改正(昨年1月の施行分)があるようです。ここでその内容を改めて確認しておきましょう。
(1) 労働条件変更の際の明示義務
(2) 求人票等による募集時の明示時効の追加
① 使用期間に関する事項
② 労働者を雇用しようとする者の氏名又は名称
③ 裁量労働制を採用する場合はその旨
④ いわゆる固定残業代を採用する場合の
・固定残業代算定基礎である労働時間数(固定残業時間)および金額
・固定残業代を除外した基本給の額
・固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働分についての割増賃金を追加で支払うこと
・労働者を派遣労働者として雇用しようとする場合はその旨
(3) 罰則等の強化(虚偽の条件によりハローワーク等で求人の申込みを行った場合や、自社のホームページ等でも労働条件の明示義務等に違反している場合について、罰則・指導監督の強化)
労働条件変更等の明示義務の具体例や求人票のサンプルなどは、厚生労働省のリーフレットが参考になります。人手不足は落ち着いたところも多いようですが、業種によってはまだまだ猫の手も借りたい場合も多いでしょうから、求人にまつわるトラブルは少しでも避けたいところですね。
【厚生労働省リーフレット】
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000171017_1.pdf
監督指導による賃金不払残業の是正企業数が減少~厚生労働省調査
厚生労働省から、平成30年度に時間外労働などに対する割増賃金を支払っていない企業に対して、労働基準法違反で是正指導した結果が公表されました。
全国の労働基準監督署が、賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への監督指導を行った結果、平成30年4月から平成31年3月までの期間に不払いだった割増賃金が各労働者に支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめたものです。
◆平成30年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果のポイント
(1) 是正企業数……………………………1,768企業(前年度比102企業の減)
うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、228企業(前年度比34企業の減)
(2) 対象労働者数…………………………11万8,837人(同8万9,398人の減)
(3) 支払われた割増賃金合計額…………125億6,381万円(同320億7,814万円の減)
(4) 支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり711万円、労働者1人当たり11万円
いずれも前年度に比べ減少しています。また、監督指導の対象となった企業では、賃金不払残業の解消のために様々な取組みが行われています。
その一つとして、ある金融業の取組事例が以下のとおり紹介されています。
◆賃金不払残業の状況
○割増賃金が月10時間までしか支払われないとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。
○会社は、自己申告(労働者による労働時間管理表への手書き)により労働時間を管理していたが、自己申告の時間外労働の実績は最大月10時間となっており、自己申告の記録とパソコンのログ記録や金庫の開閉記録とのかい離が認められたことから、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。
◆企業が実施した解消策
○会社は、パソコンのログ記録や金庫の開閉記録などを基に労働時間の実態調査を行った上で、不払いとなっていた割増賃金を支払った。
○賃金不払残業の解消のために次の取組みを実施した。
① 支店長会議において、経営陣から各支店長に対し、労働時間管理に関する不適切な現状およびコンプライアンスの重要性を説明し、労働時間管理の重要性について認識を共有した。
② 労働時間の適正管理を徹底するため、自己申告による労働時間管理を見直し、ICカードの客観的な記録による管理とした。
③ ICカードにより終業時刻の記録を行った後に業務に従事していないかを確認するため、本店による抜き打ち監査を定期的に実施することとした。
厚生労働省では、引き続き、賃金不払残業の解消に向け、監督指導を徹底していくとしています。
テレワークは普及したのか?
◆テレワークを巡る動き
政府は2020年東京オリンピック・パラリンピック開催期間中の交通混雑緩和に向け、7月22日から9月6日の約1カ月間をテレワーク・デイズ2019実施期間と設定し、テレワークの一斉実施を呼びかけました。今年は2,885団体が参加し、昨年の1,682団体を大きく上回りました。多様な働き方を実現する働き方改革の切り札としても関心を集めているテレワーク制度ですが、労働者たちにテレワークという働き方は広まったのでしょうか。株式会社ワークポートは、全国の転職希望者413人を対象にアンケート調査を行いました。
◆約90%がテレワーク経験なし
対象者に、「現在の会社(直近の会社)はテレワークを導入しているか」聞いたところ、「いいえ」と回答した人が68.8%、「わからない」が13.1%、「はい」が18.2%となり、テレワーク導入率の低さが明らかになりました。また、「これまでにテレワークをしたことがあるか」という質問には、約90%が「いいえ」と回答しました。テレワークが普及したとはいえないのが実状のようです。
◆テレワークをしたいと回答した人は70%以上
一方、「テレワークをしたいと思うか」という質問では、「思う」「どちらかといえば思う」と回答した人は合わせて73.6%でした。理由としては、通勤時間をカットしてプライベートを充実させたいとの意見が多く挙げられました。また、働き方の多様化を支持する意見も散見され、さまざまなライフスタイルに合った働き方を望む声が見られました。普及状況に対し、労働者からの希望が高いことがうかがえます。
◆テレワーク制度の可能性
今後、テレワークが広く普及することになれば、多くの人が感じている朝の通勤ストレスを大幅に解消することができ、また災害発生時の企業対応としても有効な手段となるでしょう。テレワークを含めた柔軟な働き方が容認されることによって働き手の幅も広がると考えられ、今まで何らかの理由で働くことができなかった層に対し就業の機会を創出することが可能となります。人材確保の点からも検討するべき制度だといえそうです。
【ワークポート「テレワーク」についての調査】
https://www.workport.co.jp/corporate/news/detail/693.html
制度運用強化により在留資格取消件数が過去最多に~出入国在留管理庁調査
出入国在留管理庁(入管庁)は、平成30年度の在留資格取消件数を発表しました。取消件数は832件で、過去最多だった前年度の385件を更新し2倍以上の増加となりました。
◆在留資格別、国籍・地域別の内訳
在留資格別に取消件数をみると、「留学」が412件(全体の49.5%)、「技能実習」が153件(18.4%)、「日本人の配偶者等」が80件(9.6%)と続いています。「留学」と「技能実習」で約7割を占め、件数も前年より大幅に増加となりました。
国籍・地域別では、ベトナムが416件(全体の50.0%)、中国が152件(18.3%)、ネパールが62件(7.5%)と続いています。
◆大幅増加の理由
在留取消件数が倍増した理由として、平成28年に出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」という)の改正で在留資格取消制度が強化されたことが挙げられます。改正では、「在留資格に応じた活動を行っておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留していること」(入管法第22条の4第1項5号)の取消事由が新設されました。
その結果、「留学生が学校を除籍された後に、アルバイトを行って在留していた」「技能実習生が実習実施先から失踪後に、他の会社で稼働して在留していた」などの事例で在留資格の取消しができるようになり、今回の調査では216件が適用となりました。
また、最も多かった取消事由は、「在留する者が在留資格に応じた活動を3月(高度専門職は6月)以上行わないで在留していること」(入管法第22条の4第1項6号)で、384件でした。具体的な事例として、「留学生が学校を除籍された後に、3か月以上本邦に在留していた」「技能実習生が、実習先から失踪後、親戚宅に身を寄せ、在留資格に応じた活動を行うことなく、3か月以上本邦に在留していた」などが挙げられます。
◆留学生、技能実習生を受け入れる側の問題
在留資格取消件数が増加となった一方で、留学生を受け入れる悪質な教育機関の存在や、低賃金や賃金不払い、長時間労働による技能実習生の失踪の増加などが問題として挙げられています。それらに対して、教育機関の留学生の在籍管理の徹底や実習先企業への不正防止強化等も現在進められています。
【法務省「平成30年の「在留資格取消件数」について」】
http://www.moj.go.jp/content/001303052.pdf