有給取得率の調査結果と今後
◆平成30年の年次有給休暇の取得率は52.4%
厚生労働省は平成31年「就労条件総合調査」の結果を公表しました。調査によれば、年間の年次有給休暇の平均取得率は52.4%で、前年に比べて1.3ポイント上昇しています。取得率を企業規模別にみると、「1,000人以上」が58.6%、「300~999人」が49.8%、「100~299人」が49.4%、「30~99人」が47.2%となっており、規模により最大10ポイント近くの差がみられました。
なお、本調査は平成30年の1年間の状況について調査を行ったものですので、本年4月に施行された改正労働基準法による年次有給休暇年5日取得義務化前についての調査になります。
◆企業規模が小さいほど休みが少ない
また、公表された調査によれば、週休制の形態別適用労働者割合をみると、「完全週休2日制」が適用されている労働者割合は57.0%とありますが、その割合は企業規模が小さくなるほど低くなっています。年間休日総数についても、1企業平均は108.9日、労働者1人平均114.7日となっていますが、いずれも大企業ほど多く、小規模企業ほど少なくなるという傾向は変わりません。
◆年次有給休暇年5日取得の義務化
本年4月から、働き方改革法に伴う年次有給休暇年5日取得義務化が適用されています。
有給休暇取得率の低さについては以前から問題となっていましたが、法律の規制がかかったことで、企業でも取得率向上に向けた取組みが本格的に実施されているところでしょう。来年の調査結果には注目したいところです。
◆企業の現況を踏まえた取組みを
上記の調査結果の通り、中小企業ではもともと休みが少ないという実態があります。それにはそれなりの理由があるのでしょう。現在、働き方改革による大企業の残業時間削減のしわ寄せが中小企業に及んでいるという問題も指摘されており、厚生労働省も「しわ寄せ防止特設サイト」を設けて防止を呼び掛けています。そのため、特に中小企業にとっては、有給休暇取得義務化への対応は困難となることが予想されますが、根本的な問題への対応を検討しつつ企業としてしっかり取り組んでいきたいところです。
若手が求めるやりがいとパワハラ防止へのコミュニケーションの重要性
◆若手のやりがい、求められるコミュニケーション
マンパワーグループが行った、入社2年目までの若手正社員(22~27歳)を対象とした調査によると、仕事に「やりがいを感じている」割合は約70%だということです。やりがいの中身(複数回答可)では、上位から順に「仕事の成果を認められる」が37.6%、「仕事をやり遂げる」が34.7%、「自分の成長を感じる」が34.7%、「新しい仕事にチャレンジする」が33.2%、「お礼や感謝の言葉をもらう」が31.4%となっています。
また、若手正社員が取り入れてほしいと考える勤務制度への回答では、多いほうから順に「フレックス制」36.8%、「在宅勤務」33.3%、「モバイルワーク」30.8%が目立つ一方、「ない」との回答も37.5%ありました。
上記の結果を「コミュニケーション」という視点から見ると、認められたい・コミュニケーションをとりたいという希望がある一方、勤務制度についてはコミュニケーションがとりづらい方法の希望があるようです。
◆コミュニケーションとパワハラ
パワハラの防止対策を企業に義務付けるパワハラ防止法の施行を来年6月(中小企業は2022年4月)に控え、現在、パワハラ防止ガイドランの素案が公表されており、年内には正式に決定・公表される見込みです。
パワハラ予防のためには、職場のリーダーは部下を指揮する一方、部下から必要な情報が上がってくるようにして適切なコントロール(指揮・統制)をしなければなりません。昔のようにリーダーからの一方的な指揮・統制では仕事は回らなくなっています。
つまり、部下の話を聞いてあげて、部下のほうからのコミュニケーションを増やすよう、意思疎通を良くしなければならないのです。例えば、業務時間中に部下の話を聞く機会を増やしたり、部下が考えて意見を言えるように質問型マネジメントをしたりする等が必要です。
実際、上記調査でもコミュニケーションがとりやすい社内ツールとして、メール(55.3%)、電話(50.0%)に次いで「対面」(48.0)%も回答が多くなっています。社内SNS等も発達してきていますが、やはり人間同士、電話・対面といったアナログなコミュニケーションも重要なのだと思われます。
◆中小企業もスケジュールは考えておく
パワハラ防止のカギはコミュニケーション、といってしまえば単純なようですが、管理職・一般社員への研修一つとってもポイントなる部分を押さえる必要がありますし、法施行日までにやることは他にもたくさんあります(就業規則改訂、相談窓口設置・担当者の決定、従業員アンケート…etc)。中小企業には多少猶予期間がありますが、今からスケジュールだけでも考えておく必要はあるでしょう。
年末の風物詩「職場の大掃除」、実は義務だとご存じでしたか?
◆大掃除は会社の義務とされている
仕事納めの日には社内の大掃除をする、という会社は多いのではないでしょうか。忙しい部署からは、「ただでさえ年末はやることが多いのに、掃除に割く時間がもったいない」とか、「掃除は仕事じゃないのに……」などとボヤく声も聞こえてきそうですね。
しかし、実は、会社の大掃除を行うことは、法律にも定められた義務であり、立派な仕事の1つなのです。
具体的には、労働安全衛生規則第619条に、「事業者は、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。」として、「日常行う清掃のほか、大掃除を、6月以内ごとに1回、定期に、統一的に行うこと」が定められています(第1項)。
◆職場の清潔保持は労働者の義務でもある
一方、労働者にも、「作業場の清潔に注意し、廃棄物を定められた場所以外の場所にすてないようにしなければならない」ことが義務付けられています(同規則第620条)。職場環境を清潔に保つことは、会社にとっても労働者にとっても、必要不可欠なこととされているのです。
◆義務付けのねらいを理解して積極的に大掃除に取り組もう
このような義務付けがなされているのは、労働者を守るためです。オフィス内が整理・整頓されていなければ事故も起こりやすくなりますし、不衛生な環境は病気の原因ともなります。安心して働くことのできる職場環境を維持するためにも、定期的に大掃除を行って職場の清潔を保持することが大切です。
また、職場環境をきれいに保つことは、仕事の効率化やストレスの軽減にも効果があるとされています。「労働者が働きやすい環境をつくるため」という意義を明確にして、来たる年末、職場みんなで積極的に大掃除に取り組む機運を醸成しましょう。
厚労省から公表された「労働時間の考え方」に関するリーフレット
労働基準法が改正され、中小企業は来年の4月から「時間外労働の上限規制」が適用されることはご承知の通りです(大企業は今年の4月から施行されています)。
時間外労働の上限規制は、時間外労働の限度時間を原則月45時間、年360時間とし、臨時的な特別な事情がある場合でも、年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間以内(休日労働含む)とする規制であり、企業はこれまで以上に従業員の労働時間の適正な把握・管理が求められることになります。
そのような中、厚生労働省から、リーフレット「労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い」が公表されました(10月17日)。これは、労働基準監督署への問合せが多い「『研修・教育訓練/仮眠・待機時間/労働時間の前後の時間/直行直帰・出張に伴う移動時間が労働時間に該当するか否か」について、実際の相談事例をもとに解説したもので、労働時間の適正な管理に役立ててほしいとしています。その内容についてみていきます。
◆そもそも「労働時間」とは?
労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことです。使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は、労働時間に該当します。
◆研修・教育訓練の取扱いは?
業務上義務付けられていない自由参加のものであれば、その研修・教育訓練の時間は、労働時間に該当しません。例えば、参加の強制はしていない。また、参加しないことについて不利益な取扱いもしない勉強会などです。
◆仮眠・待機時間の取扱いは?
仮眠室などにおける仮眠の時間について、電話等に対応する必要はなく、実際に業務を行うこともないような場合には、労働時間に該当しません。例えば、週1回交代で、夜間の緊急対応当番を決めているが、当番の労働者は社用の携帯電話を持って帰宅した後は自由に過ごすことが認められている場合の当番日の待機時間などです。
◆更衣時間の取扱いは?
制服や作業着の着用が任意であったり、自宅からの着用を認めているような場合には、労働時間に該当しません。
◆早出時間の取扱いは?
交通混雑の回避や会社の専用駐車場の駐車スペースの確保等の理由で労働者が自発的に始業時刻より前に会社に到着し、始業時刻までの間、業務に従事しておらず、業務の指示も受けていないような場合には、労働時間に該当しません。
◆直行直帰・出張に伴う移動時間は?
移動中に業務の指示を受けず、業務に従事することもなく、移動手段の指示も受けず、自由な利用が保障されているような場合には、労働時間に該当しません。