2020年6月

コロナ禍で、事業者の健康診断の延期が認められています

 

◆対応の概要

・一般健康診断:令和2年6月末までの間、実施時期を延期することができます。

・特殊健康診断:実施することが義務づけられていますが、十分な感染防止対策を講じることが困難な場合などには、実施時期を6月末まで延期することができます。

 

◆一般健康診断

事業者は、労働安全衛生法第66条第1項の規定により、労働者の雇入れの直前または直後に健康診断を実施することや、1年以内ごとに1回定期に一般健康診断を行うことが義務づけられています。しかし、新型コロナウイルスの拡がりにより、健康診断等の実施会場においても、密閉・密集・密室といった「三密」空間での感染拡大が懸念されるところから、一般健康診断の実施時期については、令和2年6月末までの間、延期することとして差し支えないこととされました。

 

◆特殊健康診断

また、事業者は、労働安全衛生法第66条第2項および第3項、じん肺法の規定に基づき、有害な業務に従事する労働者や有害な業務に従事した後配置転換した労働者に特別の項目についての健康診断を実施することや、一定の有害な業務に従事する労働者に歯科医師による健康診断を実施すること等が義務づけられています(特殊健康診断)。

特殊健康診断については、がんその他の重度の健康障害の早期発見等を目的として行うものであるため、基本的には十分な感染防止対策を講じたうえで法令に基づく頻度で実施するのが望ましいとされていますが、十分な感染防止対策を講じた健康診断実施機関での実施が困難である場合には、一般健康診断と同様、実施時期を令和2年6月末までの間、延期することとして差し支えないこととされました。

 

これらの取扱いは、現時点では新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた令和2年6月末までに限られた対応とされています。詳細は厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」に掲載されていますが、随時更新されていますので、こまめにチェックする必要があります。

【厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」】

https://mhlw.lisaplusk.jp/jump.cgi?p=2&n=107

 

コロナ禍に伴う外国人労働者の現状と救済制度

 

◆外国人労働者の現状

外国人労働者の受入拡大に向けて、2019年に新しい在留資格制度がスタートしました。転職や単純労働も認められる特定活動の在留資格が加わり、日本で長く働ける可能性が高くなりました。現在、160万人以上の外国人が日本で働いています。しかし、その多くは、技能実習生やアルバイト、派遣やフリーランス(個人事業主)といった、非正規に置かれた立場で働く外国人がほとんどです。正規で雇われている外国人は、全体の10%にすぎません。

 

◆コロナ禍を受けて

そんな矢先、新型コロナウイルスの発生により、その感染拡大を理由にした解雇や雇い止め、派遣切りを受けている外国人労働者が急増しています。職を失い、住む場所を奪われ、減便のため帰国もままなりません。永住者や定住者以外は、現行の制度上、在留資格に職種や労働時間の制限があり、簡単に転職(職探し)ができないのが現状です。

そのような実情を受けて、法務省や出入国在留管理庁(以下、入管庁という)から猶予・支援策が発表されています。以下は、5月12日までに法務省・入管庁から出された主な内容です。

 

◆各種猶予・支援内容

―在留期間の猶予

3月1日から6月30日に在留期限の満了を迎える外国人に対し、期間の更新や資格変更の許可申請を3か月間猶予。

―在留申請手続のオンライン化の対象拡大

窓口申請の混雑緩和のため、在留申請にかかる種別(各種許可・変更手続等)や、対象となる在留資格の拡大。

―技能実習生・特定技能外国人等に対する支援

新型コロナウイルス感染症の影響により解雇等され、実習が困難となった技能実習生、特定技能外国人等の日本での雇用維持のため、特定産業分野における再就職の支援を行うとともに、一定の要件の下、「特定活動」の在留資格を許可。

 

◆最後に

「特定活動」の在留資格が一時的に許可されたとしても、すべての産業分野で受入可能とはなっていない点、そもそも日本の経済活動自体が危機的な状況に陥っていることを考えると、ただでさえ不安定な立場で働く外国人の救済は困難を極めます。外国人も対象となる特定持続化給付金については、日本語理解に不安のある外国人にも確実に申請・受給できる支援が急がれます。

 

 

新型コロナ こころのケアを

 

◆コロナ禍でのストレス増加

新型コロナウイルスの感染拡大で、生活環境に大きな変化が生じています。買い物を含む外出や娯楽・スポーツ等の自粛、要請にともなう休業やテレワークなどです。感染症への不安だけではなく、生活や仕事への不安から強いストレスを感じている方も多いでしょう。しかし、収束がいつになるか、誰にもわかりません。不安やストレスにうまく折り合いをつけ、上手に付き合っていく必要がありそうです。

◆ストレス対処 3つの「R」

ストレスの対処には、3つの「R」が有効とされています。

① レスト(Rest):休息、休養、睡眠……意識して休息を取りましょう。疲労や睡眠不足は判断力を低下させ、不安の増加につながります。

② レクリエーション(Recreation):趣味娯楽や気晴らし……外出せずにできる娯楽を探してみましょう。人と話したい方は、ビデオ会議システムやSNSアプリを使用したオンライン飲み会もよいでしょう。

③ リラックス(Relax):ストレッチ、音楽などのリラクセーション……テレワークで通勤がなくなり、運動不足になったという声があります。ストレッチで体をほぐしたり、ゆっくり入浴したり、自分がどんな環境でリラックスできるのか考えてみましょう。

活動に制限がある中でも、これら3つの「R」を組み合わせ、ストレスに対処していきましょう。

 

◆こころの相談窓口

厚生労働省では、働く人々のこころの相談窓口として、以下のサービスを案内しています。自分ひとりでは抱えきれないという場合には、専門家に相談してみましょう。詳細は、各サービス提供元の情報をご確認ください。

・新型コロナウイルス感染症関連SNS心の相談(URL: https://lifelinksns.net/)

…新型コロナウイルス感染症の影響による心の悩みについて、チャット形式で相談できます。

・新型コロナこころの健康相談電話(番号:050—3628—5672)

…新型コロナウイルスによる不安な気持ちの対処法など、日常を落ち着いて過ごすための方法について、電話で相談できます。

・こころの耳 相談窓口案内(URL: https://kokoro.mhlw.go.jp/agency/

…「働く人の「こころの耳メール相談」」をはじめ、さまざまな相談機関・相談窓口をご紹介しています。

 

 

6月から職場におけるハラスメント防止対策が強化されます

 

◆パワーハラスメント

労働施策総合推進法の改正により、6月1日から、職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。なお、中小事業主は、令和4年4月1日から義務化されます(それまでは努力義務です)。

(1) 事業主および労働者の責務

・事業主の責務……①職場におけるパワーハラスメントを行ってはならないこと等これに起因する問題に対する労働者の関心と理解を深めること、②その雇用する労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう研修を実施する等、必要な配慮を行うこと

・労働者の責務……①ハラスメント問題に関する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に注意を払うこと、②事業主の講ずる雇用管理上の措置に協力すること

(2) パワーハラスメントの防止のために事業主が講ずべき措置

① 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること

② 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること

③ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること

④ 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること

⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること

⑥ 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと

⑦ 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと

⑧ 再発防止に向けた措置を講ずること

⑨ 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること

⑩ 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

(3) 事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止

事業主は、労働者が職場におけるパワーハラスメントについての相談を行ったことや雇用管理上の措置に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いをすることが、法律上禁止されます。

◆セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント

これらについては、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法により、雇用管理上の措置を講じることが既に義務付けられていますが、6月1日から以下のとおり、事業所の規模を問わず防止対策が強化されます(①・②の内容はパワーハラスメントと同様です)。

① 事業主および労働者の責務

② 事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止

③ 自社の労働者が他社の労働者にセクシュアルハラスメントを行った場合の協力対応

自社の労働者が他社の労働者にセクハラを行い、他社が実施する雇用管理上の措置事実確認等への協力を求められた場合、これに応じるよう努めることとされました。