年休取得義務化で取得は進んでいるか~労働政策研究・研修機構調査から
独立法人労働政策研究・研修機構が、働き方改革関連法の施行に伴い、年次有給休暇(年休)取得に関する企業・労働者アンケートを行い、その結果を公表しました(調査期間:2020年1月27日~2月7日。企業17,000社、労働者71,796人を対象に実施し、回答は企業5,738票、労働者15,297票)。
◆計画的付与制度の導入企業は42.8%、取得目標を設定している企業は6割以上
企業調査の年休の計画的付与制度の導入状況では、「導入されている」とする企業割合は42.8%でした。年休取得率や年休取得日数などの目標設定については、「年休取得日数の目標のみを設定している」が53.6%と半数以上を占め、「年休取得率の目標のみを設定している」が4.3%、「年休取得率及び取得日数双方について目標を設定している」が4.1%、「上記以外の目標を設定している」が0.9%となっている一方で、「何らの目標も設定していない」とする企業は34.9%ありました。
◆3年前と比べ取得日数が増えた企業とする労働者は41.5%
労働者調査での年休取得日数の3年前との増減比較では、「変化しなかった」が46.4%でしたが、「増加」(「5日以上増えた」「3~4日増えた」「1~2日増えた」の合計)も41.5%となりました。一方で、「減少」(「5日以上減った」「3~4日減った」「1~2日減った」の合計)は4.4%でした。
「増加」と回答した者の増加した理由(複数回答)は、「会社の取組みにより取りやすい就業環境になったから」が37.6%ともっとも高く、次いで、「個人的理由により、有給休暇が必要になったから」(31.3%)、「上司に有給休暇を取得するよう勧められたから」(21.0%)、「法律等の影響もあり年休を取りやすい環境ができた」(20.7%)などとなっています。
◆年5日の取得義務の認知度は、企業で95.5%、労働者では84.4%
年休の年5日の取得義務化についての理解度は、企業調査では、「内容を十分に理解している」が64.4%で、「ある程度理解している」(31.1%)と合わせて95.5%を占めました。また、労働者調査でも、年5日の取得義務化について、「内容を含め知っている」が54.9%で、「聞いたことがある」(29.5%)と合わせると84.4%に上りました。
◆時間単位年休の導入企業は22%、導入を求める労働者は5割以上
企業調査での時間単位年休取得制度の導入状況では、「導入している」が22.0%でした。導入理由(複数回答)では、「日単位・半日単位に満たない時間の取得が可能で便利」(70.0%)がもっとも高く、次いで、「個人的な事情に対応した休暇取得が可能になる」(57.3%)、「年休の取得促進のため」(56.5%)、「育児、介護の支援」(49.0%)、「仕事と治療の両立支援」(42.1%)などとなっています。
一方、時間単位年休取得制度を導入していない理由(複数回答)は、「勤怠管理が煩雑になる」が50.3%ともっとも高く、次いで、「すでに半日単位の年休取得制度がある」(46.8%)、「給与計算が複雑になる」(39.3%)、「変形労働時間制等のため時間単位の代替要員確保困難」(31.4%)、「導入可能と不可能部署があり平等性から導入しづらい」(29.4%)などとなっています。一方、労働者調査で時間単位年休取得制度が適用・導入されていない者(「わからない」を含む)に聞くと、勤務先での時間単位年休取得制度を「導入・適用してほしい」とする割合は50.6%となっています。
年休の取得促進については、5日間の取得義務化という法律の後押しがあって3年前と比べると全般的に進んでいるという結果が出ましたが、やはり会社が取得しやすい環境づくりを進めることが重要のようです。とりわけ、時間単位の取得制度については会社側の事情から導入されていないケースが多い一方で、導入されていない企業の勤労者の半数以上が導入を望んでおり、有休の取得率アップや従業員の満足度向上のためにあらためて検討してみることも必要かもしれません。
【労働政策研究・研修機構「年次有給休暇の取得に関するアンケート調査」】
https://www.jil.go.jp/institute/research/2021/211.html?mm=1698
新型コロナウイルスワクチン接種証明書の申請受付 7月26日より
◆当面は海外渡航限定
欧州の主要国を中心に、新型コロナウイルスワクチンの接種証明書の提示により、いわゆる水際対策を緩和する動きがあることを受け、日本でも7月26日から市区町村において接種証明書発行の申請受付が開始されることとなりました。
7月12日の内閣官房長官記者会見によれば、接種証明書の提示により防疫措置の緩和等が認められる国や地域に渡航する場合に限って申請してほしいとされています。
◆接種証明書の内容
6月25日に内閣官房が開催した自治体向け説明会資料によれば、接種証明書には、新型コロナウイルスワクチンの接種記録(ワクチンの種類、接種年月日など)と接種者に関する事項(氏名、生年月日、旅券番号など)が記載されます。
接種を受けると接種済証が交付されますが、こちらには英語の表記がなかったり偽造防止対策といった課題があったりするということです。
◆接種証明書の交付を受けるには?
申請手続のデジタル化も検討されていますが、当面は書類申請のみとされ、窓口か郵送での受付となります。
申請時には①申請書、②パスポート、③接種券、④接種済証か接種記録書、またはその双方が必ず必要となります。
そのほか、パスポートに旧姓・別姓・別名(英字)の記載がある場合は旧姓・別姓・別名が確認できる本人確認書類、代理人による申請の場合は委任状、郵送する場合は切手を貼って返送先住所を記載した返信用封筒も必要となります。
◆国によって異なる水際対策
JETROが7月7日に公表している海外各国の水際対策は様々です。EU加盟各国では、接種証明書の提示により陰性証明書の提示や自主隔離等の義務が免除されますが、東南アジア地域では、シンガポールを除いて接種率が相対的に低く、ワクチン証明書に基づく入国制限や入国後の防疫措置の緩和は行われていないということです。
今後、ワクチン接種が進むとビジネスシーンで海外へ赴くケースも増えてくることが考えられますが、渡航前には渡航先がどのような対策をとっているかの確認も求められることとなりそうです。
健康保険法改正で傷病手当金の通算や育休中の社会保険料免除が変更に
「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」が第204回国会で可決・成立し、6月11日に公布されています。
以下で、主な改正事項をご紹介します。
◆傷病手当金の支給期間の通算化(令和4年1月1日から施行)
傷病手当金は、業務外の事由による病気やケガの療養のために休業するときで、一定の要件に該当した場合に支給されるもので、支給期間は、支給が開始された日から最長1年6カ月です。これは、1年6カ月分支給されるということではなく、1年6カ月の間に仕事に復帰した期間があり、その後再び同じ病気やケガにより仕事に就けなくなった場合でも、復帰期間も含めて1年6カ月に算入されます。支給開始後1年6カ月を超えた場合は、仕事に就くことができない場合であっても、傷病手当金は支給されません。
今回の改正は、出勤に伴い不支給となった期間がある場合、その分の期間を延長して支給を受けられるように、支給期間の通算化を行うというものです(支給を始めた日から通算して1年6カ月支給)。がん治療などで入退院を繰り返すなど、長期間にわたり療養のための休暇をとりながら働くケースなどがあることから、改正になりました。
◆任意継続被保険者制度の見直し(令和4年1月1日から施行)
任意継続被保険者制度は、健康保険の被保険者が、退職した後も選択によって引き続き最大2年間、退職前に加入していた健康保険の被保険者になることができる制度です。
保険料は全額被保険者負担(事業主負担なし)で、従前の標準報酬月額または、当該保険者の全被保険者の平均の標準報酬月額のうち、いずれか低い額に保険料率を乗じた額を負担します。任意継続被保険者となった日から2年を経過したときや、保険料を納付期日までに納付しなかったとき、就職して健康保険などの被保険者資格を取得したとき、後期高齢者医療の被保険者資格を取得したとき、被保険者が死亡したときのいずれかに該当するときは、被保険者の資格を喪失します。
今回の改正は、任意継続被保険者の保険料の算定基礎の見直しや(健康保険組合が規約に定めた場合は、当該保険者の全被保険者の平均の標準報酬月額より従前の標準報酬月額が高い任意継続被保険者については、従前の標準報酬月額を保険料の算定基礎とすることができるようになる)、被保険者からの申請による資格喪失を可能とするというものです。
◆育児休業中の保険料の免除要件の見直し(令和4年10月1日から施行)
育児休業中の社会保険の保険料免除は、現在、月の末日時点で育児休業をしている場合に、当該月の保険料(賞与保険料含む)が免除される仕組みです。そのため例えば、月中に2週間の育休を取得したとしても、休業期間に月の末日を含まなければ免除の対象にはなりません。
今回の改正は、短期の育児休業の取得に対応して、育児休業期間に月末を含まない場合でも、月内に2週間以上の育児休業を取得した場合には当該月の保険料を免除するとともに、賞与に係る保険料については1カ月を超える育児休業を取得している場合に限り免除の対象とするというものです。
職場のルールの伝え方 「それは前に言っただろ!」と腹を立てる前に
◆原因は伝え方にある?
最近では、パワハラという文字が頭をよぎり、「それは前に言っただろ!」と頭ごなしに怒るという場面は少なくなっているかもしれません。職場のルールが徹底しないのは従業員が怠慢なのでしょうか? その原因は、ルールの伝え方にあるかもしれません。
◆そもそも注意したい点
まず、そもそも次のようなことをした上でルールを伝えているか、振り返ってみる必要があります。
・矛盾するルールがないかチェックする(アクセルとブレーキを同時に踏んでいるような状態では、従業員が勝手に判断して行動してしまいます)
・ルールの目的を説明する(目的がわからなければ従おうという気にはなりません)
・ルール順守者を表彰する(みんなの前でほめることで、他の従業員がルールに気づき、ルールを守るといいことがある、と考えるようになります)
・繰り返して伝える(人は忘れる動物です。ルールを決めた本人が忘れているということもままあります)
◆伝え方の工夫
そして、伝え方も、次のような点を意識する必要があります。
・画像などを使って方法をわかりやすくする
・データを使って基準を明確にする
・わかりやすい言葉、読みやすい文章にする
・すべての従業員に確実に伝える
また、出社している従業員にもテレワーク中の社員にも確実に伝えようと、ビジネスチャットツール(Teamsなど)を使用する場合もあるでしょう。そこでの書き方でも一工夫必要です。単に文章として書いておけばよいのではなく、後から検索しやすいように、件名を付ける、キーワードとなる言葉(検索しやすい言葉)を盛り込む、読みやすい文字数に抑え、基となる資料がある場所のアドレスを貼る等をすると、使いやすいでしょう。
なお、チャットツール上に書かれているだけでは不足です。口頭での説明、繰り返し伝えること等と併せて行うことで効果が高まります。
職場のルールや規程は作っただけでは意味がありません。従業員がきちんと認識し、それに従って行動しようと思えるような伝え方が重要です。