職場での新型コロナウイルス感染予防に役立つマスクの素材と効果の知識
◆11都府県に再び緊急事態宣言
1月13日、政府は、東京、千葉、神奈川、埼玉の1都3県に続いて、大阪、京都、兵庫、愛知、岐阜、栃木、福岡にも緊急事態宣言を発令しました。
1月5日の新型コロナウイルス感染症対策分科会の提言では、イギリスの科学雑誌「ネイチャー」の掲載論文等を踏まえ飲食の場を中心とした対策が中心となっていますが、「全国的に急速に感染がまん延するおそれもある」ともされ、広く感染予防対策を徹底する必要があります。
◆マスク着用による予防効果は?
感染予防対策として、手指の消毒、マスクの着用、換気の実施が呼びかけられていますが、マスクの予防効果は、素材によって異なります。
昨年10月に国立大学法人豊橋技術科学大学が公表した実験結果では、マスク(不織布、布、ウレタン)とフェイスシールド、マウスシールドを着用した場合の変化が数値で表されています。
同実験結果によれば、吐出し飛沫の外部流出量が、着用なしを100%とした場合、不織布・布では20%程度に抑えられますが、ウレタンでは50%、マウスシールドでは90%と、効果に差があります。また、吸込み飛沫量については、不織布では30%程度に抑えられますが、ウレタンでは60~70%、フェイスシールドやマウスシールドでは小さな飛沫に対しては効果なし、という結果になっています。
◆発声と飛沫量の関係は?
さらに、カラオケや飲食による感染が問題となっていることを受け、会話、大声、歌唱、飲食時における呼気流量がどのように変化するかの実験も行われています。
実験結果によれば、カラオケや大声で話す場合、大きな飛沫の量は、通常会話と比較しておよそ10倍増加し、飛沫が飛び出す勢いは1.5倍から2倍程度になるということです。また、飛沫の到達距離は1.5倍程度増えるため、人との間隔を十分にとること、小さな飛沫の数もおよそ2倍となるため、十分な換気が必要ということです。
◆職場での感染予防のために
厚生労働省は、1月8日、労使団体や業種別事業主団体などの経済団体に対し、テレワークの積極的な活用、職場における感染予防、健康管理の強化等への協力を依頼しています。自社の事業継続のためにも、積極的に職場での感染予防に取り組みましょう。
「36協定届」が新しくなります
◆改正の内容
2021年4月1日より、36協定届の様式が新しくなります。
改正内容は、大きく2点あります。
① 36協定届における押印・署名の廃止
② 36協定の協定当事者に関するチェックボックスの新設
◆36協定届における押印・署名の廃止
労働基準法施行規則等の改正により、使用者の押印および署名が不要になりました(記名は必要)。
*36協定と36協定届を兼ねる場合の留意事項
労使で合意したうえで労使双方の合意がなされたことが明らかとなるような方法(記名押印または署名など)により36協定を締結すること
◆36協定の協定当事者に関するチェックボックスの新設
労働者代表(事業場における過半数労働組合または過半数代表者)についてチェックボックスが新設されています。
*過半数代表者の選任にあたっての留意事項
・管理監督者でないこと
・36協定を締結する者を選出することを明らかにしたうえで、投票、挙手等の方法で選出すること
・使用者の意向に基づいて選出された者でないこと
◆新旧様式の届出の適用
2021年3月31日以前であれば、4月1日以降の期間を定める協定であっても、原則、旧様式を用いることになります。しかし、新様式を使用することも可能で、その場合は、協定当事者の適格性にかかるチェックボックスにチェックする必要はありませんが、使用者の記名押印または署名が必要になります。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大の状況を踏まえ、3月31日以前であっても、使用者や労働者の押印または署名がなくても提出することができます。
また、4月1日の施行日以降であっても、当分の間旧様式を用いることもできます。その際の留意点は次のとおりです。
・旧様式の押印欄を取り消し線で削除する
・協定届・決議届については、旧様式に、協定当事者の適格性にかかるチェックボックスの記載を直接追記する、または同チェックボックスの記載を転機した紙を添付する(チェックボックスにチェックがないと、形式上の要件に適合している協定届・決議届と認められませんので、注意が必要です)
※新様式は以下のURLからダウンロードして使用できます。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/index.html
【厚生労働省リーフレット】
https://www.mhlw.go.jp/content/000708408.pdf
企業の同一労働同一賃金への対応状況は?
◆4月から全面施行「同一労働同一賃金」
パートタイム・有期雇用労働法の施行に伴って、企業には正社員と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消等が求められています。2021年4月から中小企業にも全面的に適用されるこの「同一労働同一賃金」。完全施行を前に準備を進めている企業も多いところです。企業の対応状況はどのようになっているのでしょうか。
◆「同一労働同一賃金」ルール 認知度は6割
独立行政法人 労働政策研究・研修機構が実施した調査(10 月1日現在の状況について調査。有効回答数(有効回答率) 9,027 社(45.1%))によれば、同一労働同一賃金ルールについて「内容を知っている」との回答が6割超となっています(大企業(常用雇用者 301人以上)で93.6%、中小企業(同 300人以下)で63.3%)。「内容はわからないが、同一労働同一賃金という文言は聞いたことがある」は31.4%(大企業5.2%、中小企業32.6%)となっており、適用前の中小企業ではまだ周知が不十分である状況もわかります。
◆対応完了は約15%
同調査によれば、同一労働同一賃金ルールへの対応(雇用管理の見直し)について、「既に必要な見直しを行った(対応完了)」が14.9%(大企業27.5%、中小企業14.1%)、「現在、必要な見直しを行っている(対応中)」が11.5%(大企業23.9%、中小企業10.8%)、「今後の見直しに向けて検討中(対応予定)」が19.5%(大企業 25.7%、中小企業 19.3%)となっています。約半数が「必要な見直しを行った・行っている、または検討中」である一方、「従来通りで見直しの必要なし(対応完了)」が34.1%(大企業16.5%、中小企業35.1%)、「対応方針は、未定・わからない」が19.4%(大企業6.4%、中小企業20.1%)となっており、まだ手をつけていないという企業も多いようです。
◆不合理な待遇差禁止義務への対応が4割
対応策にも様々ありますが、本調査では(複数回答)、「左記(正社員と職務・人材活用とも同じ)以外のパート・有期社員の待遇の見直し(不合理な待遇差禁止義務への対応)」が4割を超え(42.9%)、「正社員とパート・有期社員の、職務分離や人材活用の違いの明確化」(19.4%)、「正社員と職務・人材活用とも同じパート・有期社員の待遇の見直し(差別的取扱い禁止義務への対応)」(18.8%)、「就業規則や労使協定の改定」(18.6%)、「労働条件(正社員との待遇差の内容・理由を含む)の明示や説明」(17.0%)、「パート・有期社員の正社員化や正社員転換制度の導入・拡充」(12.8%)、「正社員を含めた待遇の整理や人事制度の改定」(10.7%)、「正社員の待遇の見直し(引下げ等)」(6.1%)等が続いています。
これからという企業も、自社の状況をみながら具体的な対応を検討していきたいところです。
【独立行政法人 労働政策研究・研修機構「『パートタイム・有期契約労働者の雇用状況等に関する調査』結果」PDF】
https://www.jil.go.jp/press/documents/20201225.pdf
再びの緊急事態宣言とコロナ鬱防衛策
◆再びの緊急事態宣言
新型コロナの陽性者急増を受け、1都3県について再び緊急事態宣言が出されました。これを受け、テレワーク等の強化を促す政府の姿勢に合わせる企業も多いかと思います。
ただ、こうした流れで気になるのが、コロナ鬱です。昨年に緊急事態宣言が出された後にも問題となっています。
◆最近の調査研究から
収入の減少や様々な他者との接触機会の減少などから、うつ状態や自殺念慮に関するリスクが高まることが知られています。
最近の独立行政法人経済産業研究所の調査研究では、世帯収入や預貯金額の少ない人々、世帯収入が1年前よりも減少した人々、過去1か月間に仕事以外で電話などの音声によって頻繁に連絡をとった人々、新型コロナウイルスに感染したと診断された人々、昨年同時期よりも運動量が減った人々は、うつ病や自殺念慮を有する割合が高かったそうです。
一方で、相談相手のいる人々、過去1か月間に仕事以外で知り合いと直接会った人々、過去1か月間にLINEなどの音声を伴わないリアルタイムでの連絡を頻繁に行った人々、規則正しい生活を送る人々は、うつ病や自殺念慮を有する割合が低かったということです。
◆防衛策として
コロナ禍であっても、知人との適度なコミュニケーションをとる、困ったことが起きたら1人で溜め込まずに適切な相手に相談をする、起床・就寝・食事時間などの生活リズムを一定にして過ごすことが、個人でできるコロナ禍におけるメンタルヘルス対策として有効である可能性があります。
また、日ごろの運動量を可能な範囲で維持することも重要とされ、コロナの猛威が喧伝されたとしても、防衛策のひとつとして、適度な運動は必要なようです。
によると、首都圏在住の勤労者(男性)の、出勤時の歩数は平均で1万歩程度、休日の歩数は7,000歩程度だそうです(日本産業衛生学会「産業衛生学雑誌」2006-48、https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/48/5/48_5_176/_pdf/-char/ja)ので、テレワーク中でもこれくらいの歩数またはそれに相当する程度の運動量が必要なのでしょう。
通勤がないから楽でいいや、とテレワークの恩恵に浸りすぎてしまい、心まで病まないように気を付けたいところです。体温が上がると体の免疫力も上がることが知られています。日頃、運動習慣のない人は余計に気を付けたいですね。
会社としては、そうした情報を社員に伝えること、また単純なことですが、テレワークしている社員からのメッセージにはできる限り即レスする等、コミュニケーションは「密」が良いようです。
【独立行政法人経済産業研究所「第3波直前の我が国における、コロナ禍でのうつ状態と自殺念慮に関するリスクの検討:「新型コロナウイルス流行下における心身の健康状態に関する継続調査」第一回調査結果より」】
https://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/20j044.html