2021年4月

コロナ禍における働き方の変化と求職者の企業選びへの影響
~エン・ジャパン調査より~

 

◆変化を余儀なくされた働き方の概念

新型コロナウイルス感染症の蔓延は、企業が従業員の働き方を考えるうえで、大きな影響を与えました。二度の緊急事態宣言などをきっかけに、「出社して働く」というこれまで当然のように続いていた働き方の概念も、劇的に変化しました。特に、これまでテレワークなどにまったく取り組んでこなかった中小企業にとって、ここ1年の労働環境の急変は、インパクトの大きいものだったはずです。

 

◆企業選びにも変化が

一方、このような働き方の変化がもはや日常化するなかで、労働者の意識も徐々に変化してきているようです。

エン・ジャパン株式会社が、総合転職支援サービス『エン転職』 上でユーザーを対象に実施した「コロナ禍での企業選びの軸の変化」に関するアンケートによれば(回答:11,536名、調査期間:2020年11月26日~2021年1月26日)、4割が「コロナ禍で企業選びの軸が変わった」と回答したそうです。特に重視するようになった企業選びの軸としては、上位から「希望の働き方(テレワーク・副業など)ができるか」(42%)、「企業・事業に将来性があるか」(38%)、「勤務時間・休日休暇・勤務地が希望に合うか」(35%)が挙がっており、年代別にポイント差があったものとして、「希望の働き方(テレワーク・副業など)ができるか」(20代:47%、30代:47%、40代以上:35%)、「経験・スキルが活かせるか」(同:8%、11%、18%)が挙がっています。

 

◆労働者の考え方の変化にも意識を向けることが必要

コロナ禍で促進された柔軟な働き方の導入は、多くの労働者にとって、特にワークライフバランスの面でメリットを感じるものとなっています。また、日常でオンライン授業を経験している大学生も台頭してくるこれからの採用活動においては、何ら柔軟な働き方を導入していない企業は、悪い意味で目立つ存在となってしまうかもしれません。

業種ごとに対応すべきテーマは異なりますが、今後は、コロナ禍で変化した労働者の働き方や企業選びの考え方についても意識を向けていく必要があるでしょう。

【エン・ジャパン「『コロナ禍での企業選びの軸の変化』調査」】

https://corp.en-japan.com/newsrelease/2021/25262.html

 

 

2度目の緊急事態宣言で人手不足の企業は減少~帝国データバンク調査

 

人手不足に対する企業の見解について、帝国データバンクが1月18日~31日にかけて全国の2万3,695社を対象に調査を実施し、1万1,441社(48.3%)から回答を得ました。

 

◆正社員不足は35.9%、公共工事が好調な「建設」や「情報サービス」で高い

現在の従業員の過不足状況を尋ねたところ、正社員について「不足」していると回答した企業は35.9%となりました。新型コロナウイルスの感染が拡大する直前だった2020年1月から13.6ポイント減少し、1月としては2014年(36.6%)とほぼ同水準まで低下しました。「適正」と回答した企業は46.5%で同5.6ポイント増加。「過剰」と回答した企業は17.6%で同8.0ポイント増となりました。

「不足」している企業を業種別にみると、「放送」が56.3%でトップとなりました。また、国土強靭化対策などにより公共工事が好調な「建設」(54.6%)や、IT人材の不足が続く「情報サービス」(53.3%)、「自動車・同部品小売」(51.8%)などが5割台で続いています。また、「電気通信」(44.4%)は在宅勤務などリモート需要の高まりから増加しています。

 

◆月次の人手不足割合は、2度目の緊急事態宣言が発出された2021年1月に再び減少

人手不足割合を月次の推移でみると、1度目の緊急事態宣言が5月に解除されて以降、人手不足割合は緩やかに上昇傾向にあったものの、再び同宣言が発出された2021年1月は減少となりました。

企業からは「2度目の緊急事態宣言で、荷動きは鈍くなった」といった声が多い一方で、「仕事が多く電気設備工事の現場職が少し足りていない」との意見もみられます。

 

◆非正社員の人手不足は19.1%、「電気通信」は51業種中で唯一の前年同月比増加

非正社員が「不足」していると回答した企業は19.1%となり(前年同月比10.1ポイント減)、1月としては2013年(16.4%)以来、8年ぶりに2割を下回りました。「適正」は65.3%(同3.4ポイント増)、「過剰」は15.5%(同6.6ポイント増)となりました。

 

◆「飲食店」の人手不足割合は大幅に減少、「旅館・ホテル」は過去最低に

新型コロナウイルスの影響が拡大するまで人手不足が顕著だった「飲食店」と「旅館・ホテル」について月次でみると、正社員・非正社員それぞれで大幅な減少傾向にあります。「GoToキャンペーン」の利用が広がった2020年10月・11月を山にして、2度目の緊急事態宣言の発出や「GoToキャンペーン」の一時停止も加わり、2021年1月にかけてさらに減少しました。

雇用調整助成金などの支援策はあるものの、これ以上の厳しい局面を招く前に新たな支援策の実施が求められています。

 

パート・有期社員待遇改善、どのくらい進んでいる?

 

◆パートタイム・有期雇用労働法の施行

同一企業内における正社員(無期雇用フルタイム労働者)とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間の不合理な待遇の差をなくすため、2020年4月にパートタイム・有期雇用労働法(以下、パート・有期雇用労働法という)が施行されました。中小企業への適用は、2021年4月1日からとなっています。

法の施行を前に行われた企業へのアンケートが(独)労働政策研究・研修機構から公表されましたが、今後の企業対応について参考になる点があります。

 

◆待遇差の理由等についてどの程度、説明できるか

パート・有期雇用労働法では、本人からの求めがあれば、正社員とパート・有期との待遇差の理由等を説明しなければならなりません。

「大半の待遇差を、説明できると思う」との回答は、パート・有期雇用労働法等について「内容まで知っている」企業では69.3%に上りましたが、内容がわからないなどとした企業では、45.1%にとどまっていました。

 

◆待遇差をなくすための取組み

正社員・正職員とそれ以外の労働者との間の不合理な待遇差をなくすためにこれまでに取り組んだ内容および今後取り組む予定の内容もまとめられています。

その中で、今後に行う予定とした割合のほうが多かった取組みとしては、次のものが挙がっています。

・退職金の導入や、退職金の算定方法等の見直し

・諸手当の導入や、算定方法等の見直し

・派遣労働者に係る制度や活用のあり方の見直し

基本的な賃金の算定方法や算定要素の見直し等は当然として、上記のような点も今後の取組みとして意識する必要があるでしょう。

 

この調査はパート・有期雇用労働法の施行前に実施されたものですが、自社の現状としてはどうでしょうか。調査は賃金や賞与、手当や休暇制度等についての動向がわかる内容となっていますので、今後の取組みのために参考にしてみてはいかがでしょうか。

【労働政策研究・研修機構「『パートタイム』や『有期雇用』の労働者の活用状況等に関する調査結果 企業調査編」】

https://www.jil.go.jp/institute/research/2021/207-1.html

 

 

建物の解体・改修で一般の事業者も対応が求められる!
石綿障害予防規則の改正について

 

 

◆石綿による健康被害を防ぐための規則改正

石綿(アスベスト)による健康被害を防ぐため、令和2年7月、石綿障害予防規則が改正され、石綿対策が強化されました。令和3年4月より、順次施行されます。建物の解体やリフォーム工事を行う事業者はもちろんですが、工事を発注する側に義務付けられる取組みもあり、注意を要します。

 

◆解体・改修工事の発注者に義務付けられる取組み

施工業者には、解体・改修工事を行う前に、石綿の有無の調査を行うことが義務付けられています。工事の発注者には、この事前調査が適切に行われるよう、石綿の有無についての情報がある場合は、その情報を施工業者に提供するなどの配慮をすることが求められます。

また、事前調査の結果、石綿が使用されていることがわかった場合、石綿の除去工事が必要となります。この工事を行う場合、通常より費用も工期もかかりますから、この点への配慮も義務付けられました。具体的には、石綿除去等の工事も含め、工事の費用(契約金額)、工期、作業の方法といった発注条件について、施工業者が法令を遵守して工事ができるよう配慮しなければなりません。

さらに、施工業者による事前調査や作業の実施状況の写真等による記録が適切に行われるよう、写真の撮影を許可する等の配慮を行う必要があります。

 

◆活用したい補助金制度

これらの取組みが適切になされるよう、国(国土交通省)は、石綿調査や石綿除去工事についての補助制度(住宅・建築物アスベスト改修事業)を創設しています。補助金制度のある地方公共団体において活用することができますので、建物の解体・改修を行おうとする場合には、まず詳細を地方公共団体に問い合わせてみるとよいでしょう。