令和4年度労働保険の年度更新実務の注意点
◆「年度更新」とは?
会社は、労災保険と雇用保険に加入する義務を負っており、業種や従業員数に応じた保険料を納付することとされています。
保険料の額は毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間を単位として計算され、年度ごとに概算で保険料を納付し、年度末に賃金総額が確定した後で精算するという方法がとられています。
この、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と、新年度の概算保険料を納付するための申告・納付の手続きが、「年度更新」です。
◆令和4年度は年度途中で雇用保険料率が改定
令和4年3月30日に成立した改正雇用保険法により、令和4年度の雇用保険料率は、年度前半(4月~9月)は3/1,000、年度後半(10月~令和5年3月)は5/1,000とされています(失業等給付に係る雇用保険料率(労使折半))。
そのため、概算保険料の計算を2段階で行う必要があり、例年とは手順の一部が異なります。
◆改正にあわせて様式の記載欄にも変更あり
まず、令和3年度の確定保険料を算定するための「確定保険料算定基礎賃金集計表」に設けられた概算保険料(雇用保険分)算定内訳の記載欄に、雇用保険率の適用期間ごとに賃金総額の見込額を記入する必要があります。
また、申告書の概算・増加概算保険料算定内訳の「⑬保険料率欄」には、年度途中で雇用保険率が変更されることを受け、印字がされていないため注意が必要です。
年度更新の手続きは、毎年6月1日から7月10日までの間に行わなければならず、遅れると追徴金(納付すべき保険料・拠出金の10%)を課されることもあります。不安や疑問点がある場合には、社会保険労務士にご相談ください。
【厚生労働省「労働保険とはこのような制度です」】
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/howtoroudouhoken/index.html
【厚生労働省「労働保険の年度更新とは」】
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudouhoken01/kousin.html
【厚生労働省「令和4年度労働保険の年度更新期間について」】
カスハラ対策に活用したい厚労省のマニュアル・ポスター
◆厚生労働省のカスタマーハラスメント防止対策
顧客等からの不当・悪質なクレームといった著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)は、従業員に過度に精神ストレスを感じさせるとともに、通常の業務にも支障が出るおそれがあります。厚生労働省の調査によると、企業に対する調査では、過去3年間に顧客等からの著しい迷惑行為の相談があった企業の割合は19.5%、労働者に対する調査では、過去3年間に勤務先で顧客等から著しい迷惑行為を一度以上経験したと回答した割合は15.0%に上り、カスハラに悩む企業、労働者は少なくありません。
◆カスタマーハラスメント対策企業マニュアル
企業にカスタマーハラスメント対策の必要性を理解してもらい、自主的な取組みを行ってもらうことを目的に、厚生労働省は「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を作成、公表しています。カスタマーハラスメントに関する企業責任や、具体的に取り組むべき対策、運用等について詳しく解説がなされており、参考になります。
◆カスタマーハラスメント対策ポスター
厚生労働省では、「暴力、暴言、土下座の強要……そのクレーム、やりすぎていませんか? STOP! カスタマーハラスメント―みなさまに気持ちよく過ごしていただくために―」とのキャッチコピーが目を引くポスターを作成しています。より多様な業種で活用できるよう、何種類かのデザインが用意されています。厚生労働省ホームページからダウンロードでき、活用にあたって事前申請等も不要ですので、積極的に利用してみはいかがでしょうか。
【厚生労働省「顧客等からの著しい迷惑行為(いわゆるカスタマーハラスメント)について」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
新型コロナウイルス感染症の濃厚接触者の取扱いの変更
◆コロナ対策の政府方針を変更
厚生労働省は、「B.1.1.529 系統(オミクロン株)が主流である間の当該株の特徴を踏まえた感染者の発生場所毎の濃厚接触者の特定及び行動制限並びに積極的疫学調査の実施について」(3月16日事務連絡(3月 22 日一部改正))を発出し、また、首相官邸は「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」を3月17日に改訂しました。それに伴い、事業所等で感染者が発生した場合の濃厚接触者の取扱いが変更になりました。
◆職場での濃厚接触者の特定が不要に
厚労省の事務連絡では、「オミクロン株については、感染・伝播性が高く、潜伏期間と発症間隔が短いため、感染が急拡大し、それに伴い濃厚接触者が急増することから、その全てにこれまでと同様の一律の対応を行うことは、保健所機能そして社会経済活動への影響が非常に大きい」としています。
そのため、同一世帯内以外の事業所等(高齢者や基礎疾患を有する人等、重症化リスクの高い者が多く入所・入院する高齢者・障害者施設や医療機関、保育所(地域型保育事業所および認可外保育施設を含む)、幼稚園、認定こども園、小学校、義務教育学校、特別支援学校および放課後児童クラブを除く)で感染者が発生した場合に、保健所等による積極的疫学調査や濃厚接触者の特定・行動制限は求めないことになりました。
◆待機期間短縮へ
同一世帯内で感染者が発生した場合は、同居する家族は濃厚接触者となり保健所等の指導による行動制限を行う必要があります。濃厚接触者の待機期間は、同居者が発症した日を0日として原則7日間(8日目に解除)ですが、4・5日目の抗原定性検査キットで陰性確認後、5日目から解除が可能となりました(この場合の待機解除の判断について、保健所による個別の確認は不要)。
【厚生労働省「B.1.1.529 系統(オミクロン株)が主流である間の当該株の特徴を踏まえた感染者の発生場所毎の濃厚接触者の特定及び行動制限並びに積極的疫学調査の実施について」】
https://www.mhlw.go.jp/content/000916891.pdf
【首相官邸「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処⽅針(令和4年3月17日変更)」】
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/kihon_r_040317.pdf
不正プログラム「エモテット」にご注意!
◆「エモテット(Emotet)」の脅威
2022年に入り「Emotet(エモテット)」によるサイバー犯罪被害が激増しています。エモテットとは、主にメールを介して感染を広げるマルウェア(不正プログラム)で、取引先に対してマルウェアに感染した「なりすましメール」を勝手に送りつけるほか、PC内の機密データを知らぬ間に操作・窃取されたり、ランサムウェア(社内データ等を人質に金銭を脅し取ることを目的とした不正プログラム)がダウンロードされ、社内ネットワーク内のPCに感染を拡げたりするなどの被害をもたらします。実際のメールの件名を利用するなど、なりすましの手口も巧妙化しています。
◆対応策
政府はこうした事態を受け、次のような対策を講じるよう企業に注意喚起しています。
1.リスク低減のための措置
〇パスワードが単純でないかの確認、アクセス権限の確認・多要素認証の利用・不要なアカウントの削除等により、本人認証を強化する。
〇IoT機器を含む情報資産の保有状況を把握する。特にVPN装置やゲートウェイ等、インターネットとの接続を制御する装置の脆弱性は、攻撃に悪用されることが多いことから、セキュリティパッチ(最新のファームウェアや更新プログラム等)を迅速に適用する。
〇メールの添付ファイルを不用意に開かない、URLを不用意にクリックしない、連絡・相談を迅速に行うこと等について、組織内に周知する。
2.インシデントの早期検知
〇サーバ等における各種ログを確認する。
〇通信の監視・分析やアクセスコントロールを再点検する。
3.インシデント発生時の適切な対処・回復
〇データ消失等に備えて、データのバックアップの実施および復旧手順を確認する。
〇インシデント発生時に備えて、インシデントを認知した際の対処手順を確認し、対外応答や社内連絡体制等を準備する。
被害を受けた場合、その影響は自社にとどまらず、サプライチェーン全体の事業活動に及ぶ可能性があります。積極的な対策を講じていきましょう。
【経済産業省「サイバーセキュリティ対策の強化について注意喚起を行います」】
https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220324008/20220324008.html
【警視庁「サイバーセキュリティad資料」】
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/cyber/CS_ad.html