2024年2月

改正施行目前! 4月以降の労働者募集に関する注意点

 

◆募集時等に明示すべき労働条件が追加されます

 令和6年4月より、労働契約の締結時や有期労働契約の更新時に明示すべき労働条件として、「就業場所」「業務の変更の範囲」が追加される等の改正が施行されます。既に、この改正に対応した労働条件通知書等のフォーマットが厚生労働省ホームページで示されています。

この明示すべき労働条件の追加は、求人の申込みの際に明示しなければならない労働条件としても追加されますので、注意が必要です。

 

◆追加される明示事項は?

 具体的には「就業場所」として、「雇入れ直後」のものと「変更の範囲」を求人広告等に記載することとなります。「業務の変更の範囲」についても同様です。

さらに、有期労働契約を締結する場合には「有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項」(通算契約期間または更新回数の上限を含む)も明示しなければなりません。

 

◆「変更の範囲」はどこまで想定して書けばよい?

特に正社員の場合、契約期間が長くなるため、営業所や部署が新設される可能性などを考慮するときりがありませんが、厚生労働省のQ&Aでは「募集等の時点で具体的に想定されていないものを含める必要はありません」とされています。

 

◆スペースに書ききれない場合はどうする?

 求人広告などの限られたスペース内に書き入れない場合は、「詳細は面談時にお伝えします」などとしておき、一部を別途のタイミングで明示することも可能です。この場合、原則、面接などで求職者と最初に接触する時点までに、すべての労働条件を明示する必要があります。

【厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」】

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/r0604anteisokukaisei1.html

 

令和4年分労働災害統計確定値が公表されました

 

◆労災の半数は第三次産業で発生

労災と聞くと製造業などが中心だと感じるでしょうか。しかし、令和4年の労災(死亡災害および休業4日以上の死傷災害)は、その半数以上が第三次産業で起こっています。

第三次産業の中でも、群を抜いて増えているのが社会福祉施設等での転倒や腰痛等(動作の反動・無理な動作)による災害です(平成29年比較で46.3ポイント増)。

また、景気の回復を反映して「接客・娯楽」業や、高齢者の就労する割合の多い「警備業」での労災も目立って増加しています。

 

◆年始は特に注意

これから1年で一番寒い時期を迎えます。また、年末年始の休みが明けて体を急に動かす時期でもありますので、労災には一番注意したい時期です。労働人口の高齢化と共に、いずれの業種でも、最近の労災で多いのは転倒によるものです。転倒の怖さは言うまでもないとは思いますが、たった一度の転倒で寝たきりになってしまうこともあります。

労災が多い、あるいは重大な災害が起きると労働基準監督署の調査が入ることになります。企業としての安全対策をきちんとしてない場合は、事故に対する事業主の責任が問われ、損害賠償訴訟等に発展してしまう可能性もあります。

 

◆労働者死傷病報告書の改正

少し先になるようですが、労災が発生した際に労働基準監督署へ提出する労働者死傷病報告書の様式が改正されます。事故の状況等について、より詳しく報告することになるとともに、提出方法も電子申請が原則となるようです。今後の情報に注意しておくとともに、労災事故のない職場にできるよう安全対策やルール作りを進めたいですね。

【厚生労働省「職場の安全サイト」~労働災害統計確定値(令和4年分)】

https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/tok/anst00.html

 

 

消費者庁が「送料無料」表示見直しを呼びかけ

 

◆物流の2024年問題

 消費者庁が通販事業者に「送料無料」表示の見直しを呼びかけています。背景には、「物流の2024年問題」があります。トラックドライバーの働き方改革を進める中で、2024年4月から自動車運転業務の時間外労働の上限規制が適用されること等により、輸送力が不足し、物流が停滞しかねなくなるという問題です。

 

◆消費者庁の呼びかけ

トラック事業者を中心に各業界で対策がなされる中で、消費者庁は、消費者にも意識や行動を変えてもらうことが必要だとしています。そのための取組みの一つが、「送料無料」表示の見直しです。というのも、「送料無料」表示は、消費者の「再配達をしてもらっても、『送料無料』だからそこまで気にしない」、「安価な商品であってもまとめ買いすることなく単品で購入し、何回配達してもらっても気にならない」といった意識につながり得るものだからです。当然、送料は本当に無料であるわけではなく、誰かが負担しているものです。それを明示することで、消費者の意識・行動を変えることをねらいとしています。

消費者庁は、「送料として商品価格以外の追加負担を求めない」旨を表示する場合には、その表示者は表示についての説明責任があるとの考えを示しつつ、事業者の自主的な取組状況を注視するとしています。また、送料負担の仕組みを表示する例として、「送料当社負担」や、価格に「○○円(送料込み)」という表記をすることを挙げています。

 

物流の仕組みなくして、現代の経済活動は成り立ちません。物流業者の負担軽減のためにできることを、社会全体で考えたいですね。

【消費者庁「物流の「2024年問題」と「送料無料」表示について」】

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/other/free_shipping

 

 

政府の少子化対策をまとめた「こども未来戦略」が決定されました

 

政府は12月22日、少子化対策をまとめた「こども未来戦略」を閣議決定しました。今後3年間の集中的な取組みである「加速化プラン」には、「共働き・共育ての推進」が盛り込まれています。具体的な内容は次の通りです。

 

◆育児休業の取得促進

・2週間以上の男性育休の取得率を2030年に85%へと引上げ。

・次世代育成支援対策推進法を改正、一般事業主行動計画に数値目標の設定、PDCAサイクルの確立を定め、育休取得から円滑な職場復帰までの支援、勤務時間や勤務地への配慮等を盛り込ませる。

・育児・介護休業法における育休取得率の開示義務について、常時雇用する労働者数が300人超の事業主に拡充し、有価証券報告書における開示を進める。

・産後8週間以内に両親が14日以上の育休を取得した場合の給付率を手取り10割相当に。

・代替要員確保等の体制整備を行う中小企業への助成措置を大幅に強化。

・「くるみん認定」の取得など、育児休業の取得状況等に応じた実施インセンティブの強化。

 

◆育児期の柔軟な働き方の推進

・フレックスタイム制の義務化、テレワークの努力義務化…こどもが3歳まで。

・「親と子のための選べる働き方制度(仮称)」を創設…こどもが3歳以降小学校就学前まで、フレックスタイム制を含む出社・退社時刻の調整、テレワーク、短時間勤務制度、保育施設の設置運営等、休暇から、事業主が複数の制度を選択して措置し、その中から労働者が選択できる制度。

・「育児時短就業給付(仮称)」を創設…こどもが2歳未満の期間に時短勤務を選択した場合、賃金の10%を支給。体制整備を行う中小企業に助成措置を実施。

・所定外労働の制限…こどもが小学校就学前までに引上げ。

・子の看護休暇…こどもが小学校3年生修了時までに引上げ。休暇取得事由の見直し。

 

◆多様な働き方と子育ての両立支援

・週所定労働時間10時間以上20時間未満の労働者も失業給付や育児休業給付等の受給対象者へ

・国民年金の第1号被保険者を対象に育児期間に係る保険料免除措置を創設。

【こども家庭庁「こども未来戦略~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」】

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/fb115de8-988b-40d4-8f67-b82321a39daf/b6cc7c9e/20231222_resources_kodomo-mirai_02.pdf