就職者の離職状況と定着~厚労省、エン・ジャパン調査等より
◆就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者38.4%、新規大卒就職者34.9%
人手不足が慢性化している中、新入社員の早期離職対策は喫緊の課題となっています。厚生労働省が公表した令和3年3月に卒業した新規学卒就職者の離職状況によれば、就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が38.4%(前年度比1.4ポイント上昇)、新規大学卒就職者が34.9%(同2.6ポイント上昇)となっています。また、離職率は企業規模が小さいほど高い傾向にあり、30人未満の事業所では高卒、大卒共に5割を超える離職率となっており、離職率が高い産業としては、①宿泊業、飲食サービス業、②生活関連サービス業、娯楽業、③教育、学習支援業が挙げられています。
◆退職に繋がりやすい時期は「3か月未満」
苦労して採用したにもかかわらず、早期離職につながってしまっては、企業としても負担が大きく、積極的な対策が求められるところです。 エン・ジャパン株式会社が運営する採用支援サービス『engage』が実施した「中途入社者の定着」についてのアンケートによれば、中途入社者が退職に繋がりやすい時期の最多は「3か月未満」だそうです。 また、定着率を高めるために行っている取組みとしては、「入社前の社内見学や社員面談などギャップの対策」(47%)、「直属の上司によるフォローアップ面談の実施」(43%)、「研修やスキルアップ機会の提供」(40%)、「社員の声を聞くアンケートやヒアリングの実施」(30%)が挙げられています。
◆社員の定着・離職防止のために
社員の離職理由は会社ごとに様々だと思われます。人材不足の状況下において、自社の離職対策を考えることは、経営力を高めるためにも今後より一層無視できない課題となるでしょう。
【厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します」】
https://www.mhlw.go.jp/content/11805001/001318959.pdf
【エン・ジャパン「中途入社者の定着」実態調査】
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000955.000000725.html
厚生労働省が「化学物質管理強調月間」を初めて実施
◆化学物質管理活動の定着を図り初めての実施
厚労省では様々な月間を設けて啓発活動を行っていますが、今般「化学物質管理強調月間」を令和7年2月1日から2月28日までの1か月間、初めて実施することとし、11月29日、スローガン等も併せて決定・公表しました。
◆関連の強い労災は年間500件前後、食料品製造業で最も多く発生
これに先立ち厚労省は6月27日、スローガン募集と同時に「化学物質の性状に関連の強い労働災害の分析結果」を公表しています。同調査では、化学物質の性状に関連の強い労働災害について、直近10年の推移や業種別発生状況、災害事例等についてまとめられています。令和5年の発生件数は542件と、前年比30件増となっており、直近10年間でみると年間500件前後で推移しています。業種別にみると食料品製造業(162件)で最も多く発生しています。
◆広い業種・事業でリスク、積極的な対策が重要
職場において製造または取り扱われる化学物質は数万程度、そのうち危険性等を有するものは約2,900程度あるといわれているなか、労働安全衛生法に基づく新たな化学物質規制が導入され、本年4月から施行されています。規制は順次拡大され、令和8年4月までに、約3,000物質程度が指定される予定であり、対策が求められる事業場が大幅に拡大する見込みです。そうした背景もあり、厚労省は今般、新たに月間を設け、説明会等をはじめとした各種取組みを行っていくとしています。専門業者はもちろん、第三次産業や中小事業者等、幅広い業種・事業規模でリスクがあるので、化学物質等を扱う事業者においては、厚労省からの情報を注視したり、「化学物質アドバイザー」や各種専門家の支援を活用したりするなど、積極的な対策が重要です。
【厚生労働省「『化学物質管理強調月間』(2月)を初めて実施します」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_46325.html
【厚生労働省「第1回化学物質管理強調月間のスローガンを募集します~併せて『化学物質の性状に関連の強い労働災害の分析結果』を公表」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40963.html
価格交渉促進月間(2024年9月)のフォローアップ調査結果~中小企業庁
原材料費やエネルギー価格、労務費などが上昇する中、多くの中小企業が価格交渉・価格転嫁できる環境を整備するため、中小企業庁では2021年9月より、毎年3月と9月を「価格交渉促進月間」と設定し、受注企業が発注企業にどの程度価格交渉・価格転嫁できたかを把握するための調査を実施しています。11月29日に公表された2024年9月のフォローアップ調査の結果では、価格転嫁に関する発注側企業による説明状況や、サプライチェーンの各段階における価格転嫁の状況、官公需における価格交渉・価格転嫁の状況についても初めて調査が行われました。
◆価格交渉の状況
直近6か月間における価格交渉の状況は、「発注側企業から申し入れがあり、価格交渉が行われた」割合は、前回から約2ポイント増の28.3%、「価格交渉が行われた」割合も前回から約1ポイント増の86.4%でした。発注企業からの申し入れは浸透しつつあるものの、受注企業の意に反して「交渉が行われなかった」割合が約1.5割あり、引き続き、労務費指針の徹底等による価格交渉・転嫁への機運醸成が必要です。
◆価格転嫁の状況
コスト全体の価格転嫁率は49.7%で、今年3月より約3ポイント増加しています。「全額価格転嫁できた」割合は、前回から約3ポイント増の25.5%、「一部でも価格転嫁できた」割合も前回から約3ポイント増の79.9%と、増加しました。価格転嫁の状況は改善してはいますが、「転嫁できた企業」と「できない企業」で二極化がみられ、転嫁対策の徹底が重要です。
◆価格転嫁に関する発注側企業による説明
今回調査では、価格転嫁に関する発注側企業による説明を初めて調査しました。価格交渉が行われたものの、コスト上昇分の全額の価格転嫁には至らなかった企業(全体の37.8%)のうち、発注側企業から価格転嫁について、「納得できる説明があった」と回答した企業は約6割ありました。一方で、「発注側企業から説明はあったものの、納得できるものではなかった」または「発注側企業からの説明はなかった」とする回答が約4割となっています。
発注側企業に対し、価格交渉の場の設定のみならず、価格に関する受注側企業への十分な説明も求めていく必要があります。
【中小企業庁「価格交渉促進月間(2024年9月)フォローアップ調査結果」】
https://www.meti.go.jp/press/2024/11/20241129001/20241129001-1.pdf
ハローワークにおける求人不受理の対象が追加されます
◆ハローワークにおける求人不受理の対象とは?
ハローワークの求人は、労働関係法令の規定に違反し、企業名公表等の措置が講じられた者からの求人の申込みについては受理しないことができると、職業安定法の政令に規定されています。 例えば、労働基準法や最低賃金法の規定に、過去1年間に2回以上、同一条項違反で是正指導を受けた場合は是正後6カ月経過まで不受理となります。送検・公表された場合は、送検後概ね1年経過まで不受理となります。また、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法の規定に違反し、是正を求める勧告等に従わずに公表された場合も是正後6カ月経過まで不受理となります。
◆改正育児・介護休業法の施行にあわせて求人不受理の対象が追加
2024年の通常国会で成立した改正育児・介護休業法は、一部が2025年4月1日と2025年10月1日の2回に分けて施行されます。この改正法の施行にあわせて、求人不受理の対象が追加されます。 具体的には、労働者が家族の介護の必要性に直面した旨を事業主に対して申し出たことを理由とした不利益取扱いの禁止への違反が、2025年4月1日から追加されます。また、(1)労働者から確認された就業に関する条件に係る意向の内容を理由とした不利益取扱いの禁止、(2)柔軟な働き方を実現するための措置(3歳から小学校就学までの子を養育する労働者に対する始業時刻等の変更等の措置)の実施義務、(3)事業主が講じた柔軟な働き方を実現するための措置に係る申出をしたこと等を理由とした不利益取扱いの禁止を定めた規定への違反について、2025年10月1日から追加されます。
【厚生労働省「第376回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 資料」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45125.html